不同意わいせつ等致死傷ふどういわいせつとうちししょう
不同意わいせつ等致死傷とは、不同意わいせつ罪・不同意性交等罪・監護者わいせつ罪・監護者性交等罪又はこれらの未遂罪を犯し、よって人を死傷させる罪です(181条)。
性犯罪の現場では、被害者が抵抗したり、犯人が逃げようとして揉み合ったりして、けがや死亡という重い結果が生じやすくなります。刑法は、性犯罪を犯して人を死傷させた場合を、通常の性犯罪よりずっと重く処罰しています。そこで、どの行為から生じたけがまでが重く処罰される範囲に入るかが問題になります。

死傷の結果は、わいせつな行為に随伴する行為から生じた場合も含みます
181条の「よって人を死傷させた」は、わいせつな行為や性交等そのものから死傷の結果が生じた場合と、手段である暴行又は脅迫から生じた場合に限られません。判例は、熟睡している被害者にわいせつな行為をした者が、覚醒した被害者につかまれて、わいせつな行為を行う意思を喪失した後に、その場から逃走するために被害者に暴行を加えて傷害を負わせた事案で、この暴行は準強制わいせつ行為に随伴するものといえるとして、強制わいせつ致傷罪の成立を認めました(最決平成20年1月22日)。わいせつの罪と傷害罪の二罪にとどまるのではありません。当時の強制わいせつ致傷罪は、現在の不同意わいせつ等致傷罪に当たります。

時間的・場所的に離れた第三者への暴行から生じた傷害は含みません
随伴する行為といえるのは、わいせつな行為と時間的・場所的に接着し、わいせつな行為に通常伴うといえる行為に限られます。A方に侵入して熟睡中のAにわいせつな行為をし、Aに気付かれないままA方を出た後、約100メートル離れた路上で職務質問をしてきた警察官Bを、逮捕を免れる目的で殴打して傷害を負わせた場合には、わいせつの罪の致傷罪は成立しません。わいせつな行為はすでに終わっており、暴行は現場から離れた場所で、被害者ではない第三者に向けられているからです。この事例では、Bに対する傷害罪と公務執行妨害罪が別に成立します。
基本となる罪が未遂でも、死傷の結果が生じれば致死傷罪が成立します
181条は「これらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者」も対象にしています。性交等をする目的で暴行を加えたが、被害者に逃げられて性交等に至らなかった場合でも、その暴行で傷害を負わせれば不同意性交等致傷罪が成立します。姦淫しようとして顔面を殴ったが逃げられ、殴打により鼻骨骨折の傷害を負わせた場合も、未遂罪と傷害罪の観念的競合にはなりません。改正前は強姦致傷罪が成立し、現在は不同意性交等致傷罪が成立します。性交等の目的で加えた暴行で被害者が死亡し、性交等に至らなかった場合も、不同意性交等致死罪が成立します。致死傷罪が成立したときは、基本となる罪が未遂であっても、181条の罪そのものは既遂として扱われます。
殺意をもって死亡させた場合は、致死罪と殺人罪の観念的競合になります
181条は結果的加重犯の規定です。「いわゆる結果的加重犯である強制わいせつ致死傷罪の成立には,基本犯(強制わいせつ)と結果(致死傷)との間に因果関係が認められれば足り,結果の発生について予見可能性がない場合であっても,強制わいせつ致死傷罪は成立する」という肢(R2 問24 オ)は正しいです。結果的加重犯なので、死亡の結果について故意がある場合は予定していません。判例は、殺意をもって暴行を加えて姦淫し、その暴行により死亡させた場合について、強姦致死罪と殺人罪が成立し、両罪は観念的競合になるとしています(最判昭和31年10月25日)。現在の罪名でいえば、不同意性交等致死罪と殺人罪の観念的競合になります。致死罪だけでは殺意があったことを評価し尽くせず、殺人罪だけでは性犯罪の点を評価できないからです。
- 不同意わいせつ等致死傷(181条1項)176条・179条1項の罪又はこれらの未遂罪を犯し、よって人を死傷させた場合です。無期又は3年以上の拘禁刑(拘禁刑は令和7年6月から。それ以前は懲役・禁錮)です
- 不同意性交等致死傷(181条2項)177条・179条2項の罪又はこれらの未遂罪を犯し、よって人を死傷させた場合です。無期又は6年以上の拘禁刑です

刑法 第181条第1項第百七十六条若しくは第百七十九条第一項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は三年以上の拘禁刑に処する。
刑法 第181条第2項第百七十七条若しくは第百七十九条第二項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は六年以上の拘禁刑に処する。
試験ではこう問われる
- 死傷の結果は、わいせつな行為や手段の暴行・脅迫からに限らず、随伴する行為から生じた場合を含む
- わいせつな行為を行う意思を喪失した後、逃走するために被害者に加えた暴行は随伴する行為に当たる(最決平成20年1月22日)
- 現場から約100メートル離れた路上で警察官に加えた暴行は随伴する行為に当たらず、致傷罪は成立しない
- 結果的加重犯なので、基本犯と死傷の結果との間に因果関係があれば足り、結果の予見可能性がなくても成立する(R2 問24 オ ○)
- 基本となる罪が未遂でも、死傷の結果が生じれば致死傷罪が成立する
- 殺意をもって死亡させた場合は、致死罪と殺人罪の観念的競合になる(最判昭和31年10月25日)

