抵当権の債務者の相続ていとうけんのさいむしゃのそうぞく
抵当権の債務者が死亡したとき、相続人を新しい債務者として登記する抵当権の変更の登記です。相続人全員を債務者にする原則と、一人に集めるときの二つの道、登記原因証明情報の種類が肢の軸です。
抵当権の債務者の相続は、抵当権の債務者が死亡した場合に、相続人を債務者とする抵当権の変更の登記を指します。債務者は登記事項なので、相続によって債務者が変われば変更の登記が要りますが、抵当権そのものは移転しません。金銭債務は相続開始と同時に相続人が法定相続分に応じて分割承継するので、原則として相続人全員を債務者として登記します。遺産分割で一人が引き受けると決めても債権者に対抗できないので、一人にまとめるには債権者の承諾が要ります。肢では、登記原因証明情報の種類と、二段階の登記、添付情報の要否が問われます。
民法 第896条(相続の一般的効力)
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

相続人全員が法定相続分で債務を承継します
債務者が死亡すると、被担保債権である金銭債務は相続人が法定相続分に応じて当然に分割して承継します。登記は「年月日相続」を原因とする抵当権の変更の登記で、変更後の事項として相続人全員を債務者として並べます。抵当権者が登記権利者、所有権の登記名義人である設定者が登記義務者となる共同申請です。設定者が債務者本人であった場合は、その相続人への所有権の移転の登記が変更の登記の前提になります。
登記原因証明情報は公務員が作成した書面に限られません
相続による所有権の移転の登記では、相続を証する市町村長や登記官などの公務員が職務上作成した情報が登記原因証明情報として要求されます。ところが債務者の相続を原因とする抵当権の変更の登記はこの定めの対象ではなく、相続の事実と相続人を明らかにする報告形式の登記原因証明情報でも足ります。「相続を登記原因とする抵当権の債務者の変更の登記を申請する場合は、登記原因証明情報として変更前の債務者の相続を証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した書面を提供しなければならない」という肢は誤りです。実務では戸籍を添える例が多いですが、それが要件ではありません。
債務を一人に集めるには債権者の承諾が要ります
遺産分割協議で相続人の一人が債務を全部引き受けると定めても、相続人の間の合意にすぎず、債権者である抵当権者に対抗できません。ただし、債権者の承諾を得た遺産分割協議で一人が債務を承継したときは、相続を原因として、その一人を直接債務者とする変更の登記を申請できます。「遺産分割協議によりXがDの承認を得てCの債務を単独で引き受けた場合には,相続を登記原因として,Xを債務者とする乙区1番の抵当権の変更の登記を申請することができる」という肢は正しい肢です。相続人全員を債務者とする変更の登記をした後に一人へ集めるときは、引受人以外の相続人の債務を引き受けた旨の債務引受を原因とする変更の登記を続けて申請します。この二つの登記は原因が異なるので、一の申請情報ではできません。
抵当権の債務者の変更では印鑑証明書が要りません
所有権の登記名義人が登記義務者になる登記では、書面申請のとき印鑑証明書を添付するのが原則です。ただし根抵当権と根質権を除く担保権の債務者に関する変更の登記は例外で、設定者の登記識別情報を提供すれば印鑑証明書は要りません。「CがAの債務を免責的に引き受けたことにより当該質権の債務者の変更の登記を申請するときは、Aの印鑑に関する証明書を添付することを要しない」という肢は正しい肢です。相続による債務者の変更も同じ扱いです。根抵当権の債務者の変更では印鑑証明書が要る点と対比して覚えます。
不動産登記法 第66条(権利の変更の登記又は更正の登記)
権利の変更の登記又は更正の登記は、登記上の利害関係を有する第三者(権利の変更の登記又は更正の登記につき利害関係を有する抵当証券の所持人又は裏書人を含む。以下この条において同じ。)の承諾がある場合及び当該第三者がない場合に限り、付記登記によってすることができる。
試験ではこう問われる
- 債務者が死亡したら誰を債務者として登記するか(相続人全員を法定相続分で)
- 債務者の相続を原因とする変更登記の登記原因証明情報は戸籍に限られるか(限られない)
- 相続人の一人だけを債務者にするには何が要るか(債権者の承諾を得た遺産分割なら相続で直接。全員を登記した後なら債務引受の変更登記)
- 抵当権の債務者の変更登記に設定者の印鑑証明書は要るか(要らない。根抵当権は要る)
この用語が問われた肢
相続を登記原因とする抵当権の債務者の変更の登記を申請する場合は,登記原因証明情報として変更前の債務者の相続を証する市町村長,登記官その他の公務員が職務上作成した書面を提供しなければならない。
Aが所有権の登記名義人である甲土地について、Bを質権者とし、Aを債務者とする質権の設定の登記がされている場合において、CがAの債務を免責的に引き受けたことにより当該質権の債務者の変更の登記を申請するときは、Aの印鑑に関する証明書を添付することを要しない。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。
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