登記識別情報を提供できない場合とうきしきべつじょうほうをていきょうできないばあい
失念や不通知の申出などの正当な理由で登記義務者の登記識別情報を提供できないときは、事前通知、資格者代理人の本人確認情報、公証人の認証の三つの経路のどれかで申請の真正を担保します。どの経路なら事前通知を省けるかが肢の軸です。
登記識別情報を提供できない場合とは、登記義務者が提供すべき登記識別情報について、失念した、失効させた、もともと通知を希望しなかったなど、提供できないことに正当な理由がある場合をいいます。この場合でも申請は受け付けられ、代わりに本人であることを別の方法で確かめます。方法は三つで、登記官が登記義務者に直接確かめる事前通知、司法書士などの資格者代理人が確認を引き受ける本人確認情報の提供、公証人が申請書や委任状を認証する方法です。三つの経路は不動産登記法23条が定め、平成17年2月25日民二第457号通達が施行に伴う運用を示しました。肢では、どの経路で何が省略できるか、その他の添付情報は変わらないか、が問われます。
不動産登記法 第23条第1項登記官は、申請人が前条に規定する申請をする場合において、同条ただし書の規定により登記識別情報を提供することができないときは、法務省令で定める方法により、同条に規定する登記義務者に対し、当該申請があった旨及び当該申請の内容が真実であると思料するときは法務省令で定める期間内に法務省令で定めるところによりその旨の申出をすべき旨を通知しなければならない。この場合において、登記官は、当該期間内にあっては、当該申出がない限り、当該申請に係る登記をすることができない。

原則は登記官による事前通知です
登記識別情報を提供できないときの基本は、登記官が登記義務者に対して申請があった旨を通知し、期間内に申請内容が真実である旨の申出があったときに登記をする事前通知の手続です。申出がなければ申請は却下されます。申出の日が受付日になるわけではなく、受付日は申請のときのままです。「法令で定める期間内に当該登記義務者から本件登記の申請内容が真実である旨の申出がされた日が、本件登記の申請の受付日として記録される」という肢は誤りです。
本人確認情報か公証人認証で事前通知は省かれます
資格者代理人が本人確認情報を提供し、登記官がその内容を相当と認めたときは事前通知をしません。委任による代理人が申請する場合に、委任状に登記義務者本人であることを確認する公証人の認証があり、登記官が相当と認めたときも同じです。「その権限を証する情報を記載した書面に申請人が本件登記の登記義務者であることを確認するために必要な公証人による認証がされ、かつ、登記官がその内容を相当と認めたときは、本件登記の申請情報を記載した書面に同内容の公証人による認証がされていなかったとしても、登記官は、当該登記義務者に対して事前通知をすることを要しない」という肢は正しい肢です。代理人申請では認証の対象が委任状になるからです。
登記官が相当と認めないときは事前通知に戻ります
本人確認情報の内容を登記官が相当と認めないときは、申請を却下するのではなく、原則の事前通知の手続に移ります。「登記官が当該情報の内容を相当と認めないときは、登記官は、本件登記の登記義務者に対して事前通知をすることなく、本件登記の申請を却下しなければならない」という肢は誤りです。本人確認情報は事前通知を省くための材料であって、却下の理由ではありません。
印鑑証明書や他の添付情報は別に要ります
登記識別情報を提供できないことも、本人確認情報の提供も、それだけでは登記義務者の印鑑証明書の添付を免除しません。書面申請では印鑑証明書が原則として要り、省略できるのは申請書や委任状に公証人の認証を受けた場合など規則が定める例外に限られます。「地上権の設定の登記の抹消を申請する場合において、登記義務者が登記識別情報を提供することができないときは、申請情報を記載した書面に当該登記義務者の印鑑に関する証明書を添付することを要する」という肢は正しい肢です。登記識別情報を提供する申請と提供できない申請を、同じ売主から同じ買主へ同じ日に移転した2筆について一つの申請情報でまとめることもできます。「甲土地について登記識別情報を提供して申請する所有権の移転の登記と、乙土地について登記識別情報を提供することができないために事前通知による手続を利用して申請する所有権の移転の登記とは、一の申請情報によって申請することができる」という肢は正しい肢です。
正当な理由の典型は失念・失効・不通知です
正当な理由にあたるのは、通知書を紛失したり登記識別情報を失念した場合、失効の申出をして無効にした場合、あらかじめ通知を希望しない申出をして通知を受けていない場合、登記済証しかない登記で登記済証を紛失した場合などです。単に手元に持ってくるのを忘れた、というだけでは理由になりません。提供できない理由は不動産登記令が申請情報の内容と定めていて、申請書の専用の欄に具体的に記載し、登記官はその理由が正当かを見たうえで事前通知などに進みます。
不動産登記法 第23条第4項第一項の規定は、同項に規定する場合において、次の各号のいずれかに掲げるときは、適用しない。
一 当該申請が登記の申請の代理を業とすることができる代理人によってされた場合であって、登記官が当該代理人から法務省令で定めるところにより当該申請人が第一項の登記義務者であることを確認するために必要な情報の提供を受け、かつ、その内容を相当と認めるとき。
二 当該申請に係る申請情報(委任による代理人によって申請する場合にあっては、その権限を証する情報)を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録について、公証人(公証人法(明治四十一年法律第五十三号)第八条の規定により公証人の職務を行う法務事務官を含む。)から当該申請人が第一項の登記義務者であることを確認するために必要な認証がされ、かつ、登記官がその内容を相当と認めるとき。
試験ではこう問われる
- 登記識別情報を提供できないとき、申請は受け付けられるか(正当な理由があれば受け付けられる)
- 三つの経路は何か(事前通知・資格者代理人の本人確認情報・公証人の認証)
- 本人確認情報を登記官が相当と認めないときはどうなるか(事前通知に移る。却下ではない)
- 代理人申請で公証人の認証を受けるのは申請書か委任状か(委任状)
- 本人確認情報を出せば登記義務者の印鑑証明書は省けるか(省けない。省略は公証人認証など規則の例外だけ)
この用語が問われた肢
登記官が本件登記の登記義務者に対して事前通知をする場合には、法令で定める期間内に当該登記義務者から本件登記の申請内容が真実である旨の申出がされた日が、本件登記の申請の受付日として記録される。
委任による代理人によって本件登記の申請をする場合において、その権限を証する情報を記載した書面に申請人が本件登記の登記義務者であることを確認するために必要な公証人による認証がされ、かつ、登記官がその内容を相当と認めたときは、本件登記の申請情報を記載した書面に同内容の公証人による認証がされていなかったとしても、登記官は、当該登記義務者に対して事前通知をすることを要しない。
本件登記の申請代理人である司法書士から本人確認情報の提供がされたが、登記官が当該情報の内容を相当と認めないときは、登記官は、本件登記の登記義務者に対して事前通知をすることなく、本件登記の申請を却下しなければならない。
地上権の設定の登記の抹消を申請する場合において、登記義務者が登記識別情報を提供することができないときは、申請情報を記載した書面に当該登記義務者の印鑑に関する証明書を添付することを要する。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。
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