更正と抹消の使い分け(同一性)こうせいとまっしょうのつかいわけ
登記に誤りがあるとき、更正登記で直せるのは更正の前後で登記の同一性が保たれる場合に限られ、同一性がなければ抹消して登記し直すという線引きです。全部が誤っている登記や当事者が違う登記を更正で直す肢が作られます。
更正と抹消の使い分けは、登記に当初からの誤りがあるときに、更正登記で一部を直すのか、抹消登記で登記を消してやり直すのかを決める基準です。更正の前後で登記の同一性が保たれるかどうかで判断します。所有者をAからBに入れ替えるように登記の全部が別のものに変わる更正は認められず、A単有をA・B共有に直すように元の登記の一部が残る更正は認められます。登記原因が無効や不存在で登記そのものが成り立たないときは抹消で、登記原因は有効だが内容の一部を誤ったときは更正です。不動産登記法66条が権利の更正登記を、68条が抹消を定めますが、どちらを使うかの線引きは登記実務の積み重ねで決まっており、肢では両方向の言い切りが作られます。
不動産登記法 第66条(権利の変更の登記又は更正の登記)
権利の変更の登記又は更正の登記は、登記上の利害関係を有する第三者(権利の変更の登記又は更正の登記につき利害関係を有する抵当証券の所持人又は裏書人を含む。以下この条において同じ。)の承諾がある場合及び当該第三者がない場合に限り、付記登記によってすることができる。

登記の全部が入れ替わる更正は認められません
所有権の登記名義人をAからBに入れ替える更正や、抵当権者を別人に入れ替える更正は、更正の前と後で登記に共通する部分がなく、同一性がないので認められません。贈与が無効だったときは、AからBへの移転そのものがなかったことになるので、Bの登記をAに戻す形は更正ではなく移転の登記の抹消です。「A及びBは、Aを所有権の登記名義人とする所有権の更正の登記を申請することができる」という肢は誤りです。仮登記の名義人を誤ったときも同じで、真正な登記名義の回復を原因に仮登記を移転する形は取れず、「真正な登記名義の回復を登記原因として,当該仮登記の移転の登記を申請することができる」という肢は誤りです。
一部が残る更正は認められます
B単有の登記をB・C共有に直す更正や、A・Bの持分の割合を直す更正は、更正の後もBやA・Bの登記が残るので同一性があり、更正で処理します。地上権の地代や抵当権の債務者、利息の定めのような登記事項の一部の誤りも更正で直します。「錯誤を登記原因として当該抵当権の債務者をAとする抵当権の更正の登記を申請することができる」という肢は正しい肢です。持分の割合の更正では、所有権全部を目的とする抵当権者は担保の範囲が変わらないので利害関係人に当たらず、「Cの承諾を証する情報の提供を要しない」という肢は正しい肢です。
登記原因の更正は元の当事者だけが申請できます
登記原因を売買から贈与に改める更正は、登記名義人は変わらず原因の記載だけを直すので同一性があり更正で処理できますが、申請人は元の登記の当事者AとBです。Bから更に買い受けたCは登記名義人ですが、AB間の登記の当事者ではないので、原因の更正を申請する立場にありません。「B及びCは、AからBへの所有権の移転の登記の登記原因を贈与とする所有権の更正の登記を申請することができる」という肢は誤りです。更正の登記権利者と登記義務者は、更正によって利益と不利益を受ける元の登記の当事者から決めます。
権利能力なき社団の登記は同一性があれば直接移転できます
権利能力なき社団が不動産を買い受けて登記未了のまま地縁による団体の認可を受けることがあります。社団と認可後の団体に同一性が認められれば、売主から団体への売買を原因とする移転の登記を直接申請できます。「A社団と当該地縁による団体の同一性が認められるときは,売買を登記原因としてBから当該地縁による団体への所有権の移転の登記を申請することができる」という肢は正しい肢です。同一性という言葉は登記の同一性だけでなく主体の同一性にも使われ、どちらも「別物かどうか」で登記の形が決まる点は共通しています。もっとも、社団の代表者の個人名義で登記されている不動産を認可後の団体の名義にするときは、表示の変更ではなく委任の終了を原因とする所有権の移転の登記によるのが登記実務の扱いです。同一性があるかどうかで登記の形が変わる点を、更正と抹消の線引きと並べて覚えると混同しません。
不動産登記法 第68条(登記の抹消)
権利に関する登記の抹消は、登記上の利害関係を有する第三者(当該登記の抹消につき利害関係を有する抵当証券の所持人又は裏書人を含む。以下この条において同じ。)がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる。
試験ではこう問われる
- 更正できる基準(更正の前後で登記の同一性があるか)
- 全部が入れ替わる場合(名義人の入替え、無効な移転は抹消)
- 一部が残る場合(単有から共有、持分の割合、登記事項の誤りは更正)
- 登記原因の更正の申請人(元の登記の当事者。後の買主は申請できない)
この用語が問われた肢
Aを所有権の登記名義人とする甲土地について、贈与を原因とするAからBへの所有権の移転の登記がされた後、当該贈与が無効であったことが判明した場合には、A及びBは、Aを所有権の登記名義人とする所有権の更正の登記を申請することができる。
Aを債務者と表記すべきところ,誤ってBを債務者と表記した抵当権設定契約書に基づき,Bを債務者とする抵当権の設定の登記がされた場合は,錯誤を登記原因として当該抵当権の債務者をAとする抵当権の更正の登記を申請することができる。
甲土地について、Aの持分を 3 分の 2 とし、Bの持分を 3 分の 1 とする所有権の移転の登記がされた後、甲土地を目的としてCを抵当権者とする抵当権の設定の登記がされた場合において、Aの持分を 4 分の 1 とし、Bの持分を 4 分の 3 とする所有権の更正の登記の申請をするときは、Cの承諾を証する情報の提供を要しない。
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