真正な登記名義の回復しんせいなとうきめいぎのかいふく
実体と合わない所有権の登記を、抹消ではなく真の所有者への移転の登記で正す登記原因です。仮登記に使えるか、原因日付を書くか、相続人が判決で単独申請できるかが肢で突かれます。
真正な登記名義の回復は、所有権の登記名義人が実体上の所有者と食い違っているとき、無効な登記を抹消して遡る代わりに、現在の名義人から真の所有者へ所有権の移転の登記をする登記原因です。抹消だと中間に入った抵当権者などの承諾が要って動かせない場面で、移転の形なら利害関係人を巻き込まずに名義を正せます。登記原因は「真正な登記名義の回復」とだけ書き、日付は書きません。所有権の登記を直すための便法なので、仮登記の名義を直したり仮登記の原因にしたりはできず、肢はその限界を突いてきます。
不動産登記法 第60条(共同申請)
権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。

抹消の代わりに移転の形で名義を正します
AからBへの売買が無効なのにB名義の登記があり、その後にBが抵当権を設定していると、抹消にはその抵当権者の承諾が要ります。承諾が得られないとき、BからAへ所有権の移転の登記をすれば、抵当権を残したまま名義だけを戻せます。登記原因は「真正な登記名義の回復」で、物権変動の日付が観念できないので原因の日付は書きません。申請は現在の名義人を登記義務者、真の所有者を登記権利者とする共同申請で、添付情報も通常の所有権の移転と同じです。登記原因証明情報には、名義が実体と食い違うに至った経緯を当事者が報告する形式の書面を使うのが通例です。登録免許税も所有権の移転の登記として課され、抹消の定額とは違います。
仮登記の名義の誤りには使えません
真正な登記名義の回復は所有権の登記の名義を正す手段で、仮登記には使えません。「停止条件付所有権の移転の仮登記がされた土地につき,当該仮登記の登記名義人に錯誤があるときは,真正な登記名義の回復を登記原因として,当該仮登記の移転の登記を申請することができる」という肢は誤りです。仮登記は本登記の順位を保全するだけで所有権の帰属を公示しておらず、名義人の誤りは仮登記の更正や抹消で直すことになります。真正な登記名義の回復は、所有権の登記名義人と真の所有者の食い違いを本登記で正す場面に限って使える原因だと押さえておけば、仮登記に関する肢は切れます。
取消し後の請求権を保全する仮登記の原因にもなりません
売買が取り消されると所有権は売主に戻り、売主は現在の名義人に対して所有権の移転の登記を求められます。しかし「AがBとの売買契約を詐欺により取り消したときは,Aは,真正な登記名義の回復を登記原因としてAを登記名義人とする所有権移転請求権の保全の仮登記を申請することができる」という肢は誤りです。真正な登記名義の回復は、現に生じている名義の食い違いを本登記で正す原因であって、将来の請求権を保全する仮登記の原因にはなりません。取消しによる回復を保全したいなら、取消しを原因とする所有権の移転の仮登記などの形になります。
真の所有者の相続人は判決で単独申請できます
真の所有者Bが死亡した後でも、相続人Cは一般承継人としてAからBへの移転の登記を申請できます。名義人Aが協力しなければ、Cが判決を得て単独で申請します。「Bの唯一の相続人であるCが、AからBへの真正な登記名義の回復を登記原因とする所有権の移転の登記手続を命ずる旨の確定判決を得た場合には、Cは、単独で当該判決による当該所有権の移転の登記を申請することができる」という肢は正しい肢です。登記は亡B名義への移転で、Cは一般承継人として判決による登記の申請人です。亡Bが名義人になった後は、BからCへの相続による移転の登記を申請して現在の所有者までつなぎます。判決がAから亡Bへの移転を命じている以上、その判決でCへ直接の移転を申請することはできず、C自身が現在の真の所有者としてAと共同で申請するなら、Cへの回復の登記になります。
不動産登記法 第62条(一般承継人による申請)
登記権利者、登記義務者又は登記名義人が権利に関する登記の申請人となることができる場合において、当該登記権利者、登記義務者又は登記名義人について相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人は、当該権利に関する登記を申請することができる。
試験ではこう問われる
- 原因の日付を書くか(書かない。物権変動の日付が無い)
- 仮登記の名義人の誤りを真正な登記名義の回復で直せるか(直せない)
- 取消し後に真正な登記名義の回復を原因とする請求権保全の仮登記ができるか(できない)
- 真の所有者の相続人が判決を得て単独で申請できるか(できる。亡き所有者名義への移転)
この用語が問われた肢
AからBへの売買,更にBからCへの売買を登記原因とする所有権の移転の登記がされている場合において,AがBとの売買契約を詐欺により取り消したときは,Aは,真正な登記名義の回復を登記原因としてAを登記名義人とする所有権移転請求権の保全の仮登記を申請することができる。
所有権の登記名義人はAであるが、実際の所有者はBである甲土地について、Bが死亡した後、Bの唯一の相続人であるCが、AからBへの真正な登記名義の回復を登記原因とする所有権の移転の登記手続を命ずる旨の確定判決を得た場合には、Cは、単独で当該判決による当該所有権の移転の登記を申請することができる。
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