特例有限会社の株式会社への移行とくれいゆうげんがいしゃのかぶしきがいしゃへのいこう
特例有限会社が商号中の有限会社の文字を株式会社に改める定款変更をして、通常の株式会社になることです。登記は株式会社の設立と特例有限会社の解散を同時に申請し、登録免許税の計算が肢で突かれます。
特例有限会社の株式会社への移行は、特例有限会社が定款を変更して商号中の有限会社という文字を株式会社に改め、通常の株式会社になる手続です。会社の同一性は変わらず、組織変更ではないので債権者保護手続は要りません。登記は商号の変更による株式会社の設立の登記と特例有限会社の解散の登記を同時に申請し、設立の登記がされた時に移行の効力が生じます。移行後は取締役会などの機関を置け、役員の任期も通常の株式会社と同じになります。肢で突かれるのは、登記の形、添付書面、登録免許税、移行を条件とする組織再編です。
会社法 第911条(株式会社の設立の登記)
株式会社の設立の登記は、その本店の所在地において、次に掲げる日のいずれか遅い日から二週間以内にしなければならない。
一 第四十六条第一項の規定による調査が終了した日(設立しようとする株式会社が指名委員会等設置会社である場合にあっては、設立時代表執行役が同条第三項の規定による通知を受けた日)
二 発起人が定めた日
前項の規定にかかわらず、第五十七条第一項の募集をする場合には、前項の登記は、次に掲げる日のいずれか遅い日から二週間以内にしなければならない。
一 創立総会の終結の日
二 第八十四条の種類創立総会の決議をしたときは、当該決議の日
三 第九十七条の創立総会の決議をしたときは、当該決議の日から二週間を経過した日
四 第百条第一項の種類創立総会の決議をしたときは、当該決議の日から二週間を経過した日
五 第百一条第一項の種類創立総会の決議をしたときは、当該決議の日
第一項の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。
一 目的
二 商号
三 本店及び支店の所在場所
四 株式会社の存続期間又は解散の事由についての定款の定めがあるときは、その定め
五 資本金の額
六 発行可能株式総数
七 発行する株式の内容(種類株式発行会社にあっては、発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容)
八 単元株式数についての定款の定めがあるときは、その単元株式数
九 発行済株式の総数並びにその種類及び種類ごとの数
十 株券発行会社であるときは、その旨
十一 株主名簿管理人を置いたときは、その氏名又は名称及び住所並びに営業所
十二 新株予約権を発行したときは、次に掲げる事項
イ 新株予約権の数
ロ 第二百三十六条第一項第一号から第四号まで(ハに規定する場合にあっては、第二号を除く。)に掲げる事項
ハ 第二百三十六条第三項各号に掲げる事項を定めたときは、その定め
ニ ロ及びハに掲げる事項のほか、新株予約権の行使の条件を定めたときは、その条件
ホ 第二百三十六条第一項第七号及び第二百三十八条第一項第二号に掲げる事項
ヘ 第二百三十八条第一項第三号に掲げる事項を定めたときは、募集新株予約権(同項に規定する募集新株予約権をいう。以下ヘにおいて同じ。)の払込金額(同号に規定する払込金額をいう。以下ヘにおいて同じ。)(同号に掲げる事項として募集新株予約権の払込金額の算定方法を定めた場合において、登記の申請の時までに募集新株予約権の払込金額が確定していないときは、当該算定方法)
十二 第三百二十五条の二の規定による電子提供措置をとる旨の定款の定めがあるときは、その定め
十三 取締役(監査等委員会設置会社の取締役を除く。)の氏名
十四 代表取締役の氏名及び住所(第二十三号に規定する場合を除く。)
十五 取締役会設置会社であるときは、その旨
十六 会計参与設置会社であるときは、その旨並びに会計参与の氏名又は名称及び第三百七十八条第一項の場所
十七 監査役設置会社(監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を含む。)であるときは、その旨及び次に掲げる事項
イ 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社であるときは、その旨
ロ 監査役の氏名
十八 監査役会設置会社であるときは、その旨及び監査役のうち社外監査役であるものについて社外監査役である旨
十九 会計監査人設置会社であるときは、その旨及び会計監査人の氏名又は名称
二十 第三百四十六条第四項の規定により選任された一時会計監査人の職務を行うべき者を置いたときは、その氏名又は名称
二十一 第三百七十三条第一項の規定による特別取締役による議決の定めがあるときは、次に掲げる事項
イ 第三百七十三条第一項の規定による特別取締役による議決の定めがある旨
ロ 特別取締役の氏名
ハ 取締役のうち社外取締役であるものについて、社外取締役である旨
二十二 監査等委員会設置会社であるときは、その旨及び次に掲げる事項
イ 監査等委員である取締役及びそれ以外の取締役の氏名
ロ 取締役のうち社外取締役であるものについて、社外取締役である旨
ハ 第三百九十九条の十三第六項の規定による重要な業務執行の決定の取締役への委任についての定款の定めがあるときは、その旨
二十三 指名委員会等設置会社であるときは、その旨及び次に掲げる事項
イ 取締役のうち社外取締役であるものについて、社外取締役である旨
ロ 各委員会の委員及び執行役の氏名
ハ 代表執行役の氏名及び住所
二十四 第四百二十六条第一項の規定による取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人の責任の免除についての定款の定めがあるときは、その定め
二十五 第四百二十七条第一項の規定による非業務執行取締役等が負う責任の限度に関する契約の締結についての定款の定めがあるときは、その定め
二十六 第四百四十条第三項の規定による措置をとることとするときは、同条第一項に規定する貸借対照表の内容である情報について不特定多数の者がその提供を受けるために必要な事項であって法務省令で定めるもの
二十七 第九百三十九条第一項の規定による公告方法についての定款の定めがあるときは、その定め
二十八 前号の定款の定めが電子公告を公告方法とする旨のものであるときは、次に掲げる事項
イ 電子公告により公告すべき内容である情報について不特定多数の者がその提供を受けるために必要な事項であって法務省令で定めるもの
ロ 第九百三十九条第三項後段の規定による定款の定めがあるときは、その定め
二十九 第二十七号の定款の定めがないときは、第九百三十九条第四項の規定により官報に掲載する方法を公告方法とする旨

商号変更の定款変更をし、設立と解散の登記を同時に申請します
移行には商号を変更する定款の変更が要り、特例有限会社の特別決議として総株主の半数以上かつ議決権の4分の3以上の多数で決めます。登記は本店の所在地で株式会社についての設立の登記と特例有限会社についての解散の登記を同時に申請します。設立の登記には会社成立の年月日、変更前の商号、商号変更により移行した旨とその年月日も登記します。設立の登記がされると特例有限会社の登記記録は閉鎖され、設立の登記が効力要件です。解散の登記の申請書には添付書面が要らず、設立の登記の申請書に定款、株主総会議事録、株主リストなどをまとめて添付します。
登録免許税は設立が1000分の1.5、解散が3万円です
移行による設立の登記の登録免許税は、資本金の額の1000分の1.5を乗じた額で、3万円に満たないときは3万円です。通常の設立の1000分の7や15万円の下限とは違う区分です。解散の登記は3万円です。移行と同時に資本金の額以外の登記事項を変えるときは、設立の登記の中で新しい登記事項として登記されるので、変更の登記の登録免許税を加算しません。「はい、当該変更に係る登録免許税を加算する必要があります」という回答は誤りです。資本金の額を増やしたときは増加分について別の課税標準で計算が加わる仕組みです。
移行と同時に取締役会などの機関を置けます
移行後の株式会社は通常の株式会社なので、移行の定款変更と併せて取締役会や監査役会、会計監査人を置く定めをし、設立の登記にその旨と役員を登記できます。取締役や監査役の任期は移行の時から通常の規定が適用される扱いです。移行と同時に取締役会設置会社になるときは、移行前に取締役会がないので、代表取締役は株主総会の定款変更で定款に氏名を記載して定める方法などによります。新たに就任する役員には就任承諾書と印鑑証明書や本人確認証明書を添付しますが、留任する役員には就任承諾書が要らず、再任なら印鑑証明書と本人確認証明書も要りません。移行後も商号以外の登記事項を引き継ぐので、登記すべき事項には変更のない事項も含めて株式会社としての全部を記載する形です。
移行を停止条件とする合併や会社分割の登記は併せて申請できます
特例有限会社は存続会社や承継会社になれませんが、登記実務では、株式会社への移行を停止条件として存続会社や承継会社になる合併や会社分割を定めることが認められています。条件を付けたときは移行の設立の登記と合併や会社分割の登記を併せて申請します。移行を停止条件として吸収分割承継会社となる登記の申請を「いいえ、できません」とする回答は誤りです。移行の効力は設立の登記で生じるので、合併や分割の効力発生日は移行の登記の日以後に設定します。移行と合併の双方について株主総会の特別決議が要り、合併の分は債権者保護手続も通常どおり行います。
商業登記法 第47条(設立の登記)
設立の登記は、会社を代表すべき者の申請によつてする。
設立の登記の申請書には、法令に別段の定めがある場合を除き、次の書面を添付しなければならない。
一 定款
二 会社法第五十七条第一項の募集をしたときは、同法第五十八条第一項に規定する設立時募集株式の引受けの申込み又は同法第六十一条の契約を証する書面
三 定款に会社法第二十八条各号に掲げる事項についての記載又は記録があるときは、次に掲げる書面
イ 検査役又は設立時取締役(設立しようとする株式会社が監査役設置会社である場合にあつては、設立時取締役及び設立時監査役)の調査報告を記載した書面及びその附属書類
ロ 会社法第三十三条第十項第二号に掲げる場合には、有価証券(同号に規定する有価証券をいう。以下同じ。)の市場価格を証する書面
ハ 会社法第三十三条第十項第三号に掲げる場合には、同号に規定する証明を記載した書面及びその附属書類
四 検査役の報告に関する裁判があつたときは、その謄本
五 会社法第三十四条第一項の規定による払込みがあつたことを証する書面(同法第五十七条第一項の募集をした場合にあつては、同法第六十四条第一項の金銭の保管に関する証明書)
六 株主名簿管理人を置いたときは、その者との契約を証する書面
七 設立時取締役が設立時代表取締役を選定したときは、これに関する書面
八 設立しようとする株式会社が指名委員会等設置会社であるときは、設立時執行役の選任並びに設立時委員及び設立時代表執行役の選定に関する書面
九 創立総会及び種類創立総会の議事録
十 会社法の規定により選任され又は選定された設立時取締役、設立時監査役及び設立時代表取締役(設立しようとする株式会社が監査等委員会設置会社である場合にあつては設立時監査等委員である設立時取締役及びそれ以外の設立時取締役並びに設立時代表取締役、設立しようとする株式会社が指名委員会等設置会社である場合にあつては設立時取締役、設立時委員、設立時執行役及び設立時代表執行役)が就任を承諾したことを証する書面
十一 設立時会計参与又は設立時会計監査人を選任したときは、次に掲げる書面
イ 就任を承諾したことを証する書面
ロ これらの者が法人であるときは、当該法人の登記事項証明書。ただし、当該登記所の管轄区域内に当該法人の主たる事務所がある場合を除く。
ハ これらの者が法人でないときは、設立時会計参与にあつては会社法第三百三十三条第一項に規定する者であること、設立時会計監査人にあつては同法第三百三十七条第一項に規定する者であることを証する書面
十二 会社法第三百七十三条第一項の規定による特別取締役(同項に規定する特別取締役をいう。以下同じ。)による議決の定めがあるときは、特別取締役の選定及びその選定された者が就任を承諾したことを証する書面
登記すべき事項につき発起人全員の同意又はある発起人の一致を要するときは、前項の登記の申請書にその同意又は一致があつたことを証する書面を添付しなければならない。
会社法第八十二条第一項(同法第八十六条において準用する場合を含む。)の規定により創立総会又は種類創立総会の決議があつたものとみなされる場合には、第二項の登記の申請書に、同項第九号の議事録に代えて、当該場合に該当することを証する書面を添付しなければならない。
試験ではこう問われる
- 特例有限会社の移行はどんな登記をするか(株式会社の設立の登記と特例有限会社の解散の登記を同時に申請)
- 移行の設立の登記の登録免許税はいくらか(資本金の額の1000分の1.5、最低3万円)
- 移行と同時に他の登記事項を変更したとき登録免許税を加算するか(しない)
- 移行を停止条件とする吸収分割承継会社の登記を申請できるか(できる)
この用語が問われた肢
【問】最後に、商号の変更による通常の株式会社への移行の登記において、同時に資本金以外の登記事項を変更する場合には、当該登記事項の変更に係る登録免許税を加算する必要はありますか。 はい、当該変更に係る登録免許税を加算する必要があります。
【問】特例有限会社が商号の変更により通常の株式会社に移行することを停止条件として、当該特例有限会社が吸収分割承継会社となる会社分割の登記を申請することができますか。 いいえ、できません。
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