ストックオプションと有利発行すとっくおぷしょんとゆうりはっこう
役員や従業員に報酬や報奨として新株予約権を交付する仕組みと、払込みを要しないことや払込金額が引受人に特に有利なときに株主総会の特別決議を要する規律です。公開会社でも決定機関が株主総会に戻る点と、取締役の報酬としての決議の要否が突かれます。
ストックオプションは、会社が役員や従業員に対して、職務執行の対価や将来の報奨として新株予約権を交付することの通称で、会社法上は募集新株予約権の発行の一つです。有利発行は、募集新株予約権について払込みを要しないことや払込金額が、引き受ける者に特に有利な条件または金額であることです。有利発行に当たると、公開会社でも株主総会の特別決議が要り、取締役は必要とする理由を説明しなければなりません。肢で突かれるのは、決定機関がどこに戻るかと、報酬としての決議が別に要るかです。
会社法 第238条第3項次に掲げる場合には、取締役は、前項の株主総会において、第一号の条件又は第二号の金額で募集新株予約権を引き受ける者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。
一 第一項第二号に規定する場合において、金銭の払込みを要しないこととすることが当該者に特に有利な条件であるとき。
二 第一項第三号に規定する場合において、同号の払込金額が当該者に特に有利な金額であるとき。

有利発行は払込不要が特に有利な場合と払込金額が特に有利な場合です
会社法238条3項は、金銭の払込みを要しないこととすることが引受人に特に有利な条件であるときと、払込金額が特に有利な金額であるときの2つを挙げます。どちらの場合も募集事項の決定は株主総会の特別決議によらなければならず、取締役はその株主総会で理由を説明しなければなりません。公開会社の募集事項を取締役会で定められるとする240条1項は、この2つの場合を除いています。募集事項の決定を取締役会に委任するときも、委任の決議で払込不要の旨や払込金額の下限が特に有利なら、理由の説明が要ります。
取締役の報酬として交付するときは361条の決議も要ります
取締役の報酬等として新株予約権を交付するときは、定款に定めがなければ、その数の上限などを株主総会の決議で定めるのが原則です。指名委員会等設置会社では報酬委員会が決めます。令和元年の会社法改正が令和3年3月1日に施行され、報酬等としての募集株式と募集新株予約権の数の上限などが361条1項の決議事項として明文化されました。報酬として交付する新株予約権は職務執行の対価なので、払込みを要しないこととしても、それだけで有利発行になるわけではないと考えられています。募集事項の決定は会社の型に従って株主総会または取締役会でし、報酬の決議とは別の決議です。
上場会社の報酬特則では行使価額を定めません
株式が上場されている会社が、取締役の報酬等についての定めに従って新株予約権を発行するときは、行使に際して出資される財産の価額を内容としないことができます。その場合は、報酬等として発行し行使時の払込みや給付を要しない旨と、その定めに係る取締役であった者を含む取締役以外の者は行使できない旨を内容として定めます。省けるのは行使時の出資の価額で、発行時の払込金額または払込不要の旨は通常どおり募集事項として定めます。236条3項のこの事項は、定めたときは911条3項12号ハの登記事項です。行使価額の定めがない新株予約権は、登記簿にも行使価額が載らず、報酬として発行した旨が載ります。上場されていない会社にはこの特則がなく、報酬として交付するときも行使価額を定めて登記します。
登記官は有利かどうかを審査せず、添付書面は決議の形で決まります
有利発行に当たるかどうかは市場価格や評価の問題で、登記官が申請書と添付書面だけから判断することはできません。登記実務では、公開会社が取締役会議事録を添付して募集新株予約権の発行の登記を申請したとき、払込金額が有利かどうかは審査しない扱いです。株主総会の特別決議で定めたときは、株主総会議事録と株主リストを添付します。上場会社の報酬特則を使ったときは、報酬の定めを証する定款または株主総会議事録と株主リスト、指名委員会等設置会社なら報酬委員会の決定を証する書面を添付します。登録免許税は新株予約権の発行として9万円で、払込みを要しない旨を定めたときは払込みを証する書面も要りません。
会社法 第236条第3項金融商品取引法第二条第十六項に規定する金融商品取引所に上場されている株式を発行している株式会社は、定款又は株主総会の決議による第三百六十一条第一項第四号又は第五号ロに掲げる事項についての定めに従い新株予約権を発行するときは、第一項第二号に掲げる事項を当該新株予約権の内容とすることを要しない。この場合において、当該株式会社は、次に掲げる事項を当該新株予約権の内容としなければならない。
一 取締役の報酬等として又は取締役の報酬等をもってする払込みと引換えに当該新株予約権を発行するものであり、当該新株予約権の行使に際してする金銭の払込み又は第一項第三号の財産の給付を要しない旨
二 定款又は株主総会の決議による第三百六十一条第一項第四号又は第五号ロに掲げる事項についての定めに係る取締役(取締役であった者を含む。)以外の者は、当該新株予約権を行使することができない旨
試験ではこう問われる
- 有利発行に当たるのはどんな場合か(払込不要が特に有利、払込金額が特に有利)
- 公開会社の有利発行は誰が決めるか(株主総会の特別決議。239条の委任があればその範囲で取締役会)
- 取締役の報酬として新株予約権を交付するとき何の決議が要るか(361条の株主総会決議。令和3年3月1日施行で明文化)
- 上場会社の報酬特則で定めなくてよい事項は何か(行使時の出資の価額。代わりに報酬として発行する旨と取締役以外は行使できない旨)
- 登記官は払込金額が有利かを審査するか(しない)
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