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有利発行ゆうりはっこう

商業登記 第7章 株式と資本金 過去問で4肢

募集株式の払込金額が引受人に特に有利な金額である発行で、公開会社でも株主総会の特別決議と取締役の理由説明が要ります。登記では有利かどうかを登記官が審査しないので、添付書面が増えない点が突かれます。

有利発行は、募集株式の払込金額が、募集株式を引き受ける者に特に有利な金額である場合の発行です。既存株主の持分が薄まるので、公開会社でも取締役会だけでは決められず、株主総会の特別決議によって募集事項を定め、取締役はその総会で有利な金額で募集する理由を説明します。会社法199条3項と201条1項がその仕組みで、委任の決議で定める払込金額の下限が有利なときも同じく理由の説明が要ります。肢で突かれるのは、会社法上の手続と、登記の添付書面とが一致しない点です。

会社法 第199条第3項

第一項第二号の払込金額が募集株式を引き受ける者に特に有利な金額である場合には、取締役は、前項の株主総会において、当該払込金額でその者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。

天秤の片側に株券、もう片側に硬貨一枚で大きく傾き、株主が眉をひそめ取締役が壇上で説明している
有利発行は公開会社でも株主総会の特別決議と理由説明が要りますが、登記官は有利かどうかを審査しません
公開会社でも特別決議に戻る取締役の理由説明登記には取締役会議事録で足りる扱い株主割当てには適用なし

公開会社でも有利発行は株主総会の特別決議に戻ります

公開会社では募集事項を取締役会で定めるのが原則ですが、払込金額が特に有利な金額のときはその例外から外れ、株主総会の特別決議が要ります。取締役はその株主総会で、有利な金額で募集することを必要とする理由を説明しなければなりません。特に有利かどうかは公正な価額を基準に判断し、市場価格のある株式なら市場価格を、ない株式なら会社の財産や収益力から算出した価額を目安にします。公開会社でない会社ではもともと株主総会の特別決議で募集事項を定めるので、有利発行でも決定機関は変わらず、理由の説明だけが加わります。株主総会が決定を委任する場合も、定めた払込金額の下限が特に有利なら、同じ理由の説明が要ります。

登記官は払込金額が有利かどうかを審査しません

払込金額が特に有利かどうかは会社の財産状態や株式の価値から判断する事柄で、登記官が申請書と添付書面から判断できるものではありません。登記実務では、公開会社の募集株式の発行の申請には取締役会議事録を添付すれば足り、払込金額を理由に株主総会議事録の添付を求めない扱いです。自己株式の処分による募集でも同じで、処分の対価が有利かどうかを登記官は見ません。「募集事項として定めた払込金額が募集株式を引き受ける者に特に有利な金額であるときは,募集株式の発行による変更の登記の申請書には,株主総会の特別決議に係る議事録を添付しなければならない」という肢は誤りです。会社法上の決議の要否と、登記の添付書面の要否とが食い違う珍しい論点で、公開会社の有利発行は添付書面が増えないと覚えておくと迷いません。

株主割当てでは有利発行の問題が起きません

株主に割当てを受ける権利を与える募集では、全株主が持株数に応じて同じ条件で割当てを受けるので、払込金額が低くても既存株主の持分は薄まりません。会社法202条5項は、株主割当ての場合に199条2項から4項までと200条・201条を適用しないと定めており、有利発行としての理由の説明は要りません。公開会社の株主割当てなら取締役会の決議で募集事項を定め、申請書には取締役会議事録を添付します。公開会社でない会社の株主割当てでも、定款に定めがなければ株主総会の決議によりますが、有利発行としての理由の説明は要りません。

不公正な発行や法令違反の発行は差止めの対象になります

株主は、募集株式の発行が法令や定款に違反する場合や、著しく不公正な方法による場合に、不利益を受けるおそれがあるときは会社に発行の差止めを請求できます。公開会社が取締役会だけで有利発行をしたときは、株主総会の特別決議を欠く法令違反として差止めの対象です。有利発行の特別決議を欠いた発行は法令違反に当たるので、株主総会の決議を欠いたまま発行すれば差止めや取締役の責任の問題になります。登記の段階で止められないからこそ、会社法の側に差止めと責任追及の仕組みが置かれていると理解すると筋が通るはずです。

会社法 第201条第1項

第百九十九条第三項に規定する場合を除き、公開会社における同条第二項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。この場合においては、前条の規定は、適用しない。

試験ではこう問われる

  1. 公開会社の有利発行は取締役会だけで決められるか(決められない。株主総会の特別決議と理由の説明が要る)
  2. 公開会社の有利発行の登記に株主総会議事録の添付は要るか(登記官は有利かを審査しないので求められない)
  3. 株主割当てで払込金額が低いとき有利発行の手続は要るか(要らない)
  4. 委任の決議で定めた払込金額の下限が有利なとき理由の説明は要るか(要る)

この用語が問われた肢

R3 問30 オ誤り

会社法上の公開会社が株主に株式の割当てを受ける権利を与えないでする募集株式の発行の場合において,募集事項として定めた払込金額が募集株式を引き受ける者に特に有利な金額であるときは,募集株式の発行による変更の登記の申請書には,株主総会の特別決議に係る議事録を添付しなければならない。

解説と関連先例は肢別演習で読めます。

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