議事録の署名・記名押印ぎじろくのしょめいきめいおういん
取締役会議事録は出席した取締役と監査役が署名または記名押印し、定款は発起人が署名または記名押印するという会社法の定めと、登記でそれをどこまで審査するかの仕組みです。令和3年2月15日の押印見直しで審査の対象が印鑑証明書を要する書面に絞られたことが要点です。
議事録の署名・記名押印は、会社法が議事録や定款の作成者に求める署名または記名押印の義務です。会社法369条3項は書面の取締役会議事録に出席した取締役と監査役の署名または記名押印を、会社法26条1項は定款に発起人の署名または記名押印を求めます。株主総会議事録には会社法上の署名や押印の義務はなく、法務省令で定める事項を記載して作成します。登記の審査では、令和3年2月15日施行の商業登記規則の改正により、印鑑証明書の添付が要る書面以外の押印は審査の対象外になりました。肢で突かれるのは、誰が署名するか、定款で署名者を限定できるか、押印がないと登記できないかです。
会社法 第369条第3項取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。

取締役会議事録は出席した取締役と監査役が署名または記名押印します
会社法369条3項により、書面で作成した取締役会議事録には出席した取締役と監査役の全員が署名または記名押印します。電磁的記録で作成したときは電子署名をします。株式会社では署名する者を定款で代表取締役に限ることはできず、監査役会議事録も会社法393条2項により出席した監査役が署名または記名押印します。一般社団法人の理事会議事録は、理事の側の署名者を出席した代表理事に限る定款の定めが法律で認められており(出席した監事は署名します)、「理事会の議事録に署名し、又は記名押印しなければならない者を理事会に出席した代表理事とする旨の定款の定めがある場合において、代表理事を選定する理事会に出席した代表権を有しない理事が当該理事会の議事録に署名又は押印していないときは、代表理事の変更の登記の申請書には、当該定款を添付しなければならない」という肢は正しい肢です。
株主総会議事録には署名や押印の義務がありません
株主総会議事録は会社法318条1項により法務省令で定めるところにより作成し、議長や出席取締役の署名や押印は会社法で求められていません。出席した取締役の氏名は記載事項なので議事録に載りますが、押印がなくても議事録として有効です。商業登記規則61条6項1号により、株主総会の決議で代表取締役を定めたときは議長と出席取締役が議事録に押した印鑑の印鑑証明書が要るので、その場面では押印が意味を持ちます。変更前の代表取締役が届出印を押していれば省けます。
押印見直しで、印鑑証明書を要しない書面の押印は審査されません
令和3年2月15日施行の商業登記規則の改正で、オンライン申請では登記所への印鑑の提出が任意になりました。審査の対象は、書面の申請書と委任状に押す届出印と、印鑑証明書の添付が要る書面に押す印鑑だけです。取締役会議事録や就任承諾書の押印は、印鑑証明書が要る場面でなければ登記官の審査の対象になりません。会社法上の署名または記名押印の義務そのものがなくなったわけではありません。改正前は押印のない議事録が却下の対象だったので、改正前の取扱いを前提にした肢を今の基準で誤りと決めつけないよう注意します。外国人の代表者には署名を届け出る制度はなく、「外国会社の日本における代表者が外国人である場合には,その日本における代表者は,印鑑の提出に代えて,自己の署名を登記所に届け出なければならない」という肢は誤りです。
定款の署名は発起人がし、成年後見人が代理できます
会社法26条1項により定款は発起人が作成し、その全員が署名または記名押印します。「発起人が成年被後見人である場合において,成年後見人が当該成年被後見人を代理して定款を作成し,これに署名し,又は記名押印したときは,当該定款を添付して,設立の登記を申請することができる」という肢は正しい肢です。発起設立で認証後に商号を変える場合も、発起人全員が変更を明らかにした書面に記名押印して改めて認証を受ければ、変更後の定款で設立の登記ができます。外国人が署名した就任承諾書は、本国官憲の署名証明書を印鑑証明書に代えて添付できる扱いです。
会社法 第26条第1項株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。
試験ではこう問われる
- 取締役会議事録・監査役会議事録・株主総会議事録のそれぞれで誰の署名や押印が要るかを問う肢
- 株式会社や一般社団法人で議事録の署名者を定款で限定できるかを問う肢
- 令和3年2月15日の押印見直しの後で、押印のない議事録や承諾書で登記できるかを問う肢
- 定款の署名を成年後見人が代理できるか、外国人の署名証明書で印鑑証明書に代えられるかを問う肢
この用語が問われた肢
理事会の議事録に署名し、又は記名押印しなければならない者を理事会に出席した代表理事とする旨の定款の定めがある場合において、代表理事を選定する理事会に出席した代表権を有しない理事が当該理事会の議事録に署名又は押印していないときは、代表理事の変更の登記の申請書には、当該定款を添付しなければならない。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。
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