業務を行い得ない事件ぎょうむをおこないえないじけん
業務を行い得ない事件とは、司法書士が業務を行ってはならないとされる事件で、公務員として職務上取り扱った事件と仲裁人として取り扱った事件では一切の業務が(22条1項)、相手方の依頼で裁判書類を作成した事件などでは裁判書類等作成関係業務が禁じられます(同条2項)。試験では、公務員として扱った事件の禁止に例外がないこと、法人を脱退した後も在籍中に自ら関与した相手方の事件は扱えないことが問われています。
業務を行い得ない事件は、22条が段階を分けて定めています。1項はすべての業務を禁じ、2項は裁判書類等作成関係業務(3条1項4号の書類作成とそれに関する相談)を禁じ、3項・4項は認定司法書士について簡裁訴訟代理等関係業務に関わる事件での制限を定めます。

司法書士法 第22条第1項司法書士は、公務員として職務上取り扱つた事件及び仲裁手続により仲裁人として取り扱つた事件については、その業務を行つてはならない。
公務員として職務上取り扱った事件と仲裁人として取り扱った事件では、どの業務も行えません
22条1項の禁止は、業務の種類を問わず、依頼者の同意による例外もありません。「司法書士は,公務員として職務上取り扱った事件について,その業務を行うことができない」という肢(R3 午後 問8 ア)は正しい記述です。たとえば、法務局の職員として扱った登記事件について、退職後に司法書士として登記の代理をすることはできません。
相手方の依頼で裁判書類を作成した事件では、裁判書類等作成関係業務を行えません
22条2項1号は、相手方の依頼を受けて3条1項4号の業務を行った事件を挙げています。2号は、司法書士法人の社員又は使用人として業務に従事していた期間内に、その法人が相手方の依頼を受けて同じ業務を行った事件で、自らこれに関与したものを挙げています。法人を脱退した後もこの制限は続くので、在籍中に原告側の訴状作成に関与した司法書士は、脱退後に被告から答弁書の作成を依頼されても受けられません。

司法書士法 第22条第2項司法書士は、次に掲げる事件については、第三条第一項第四号及び第五号(同項第四号に関する部分に限る。)に規定する業務(以下「裁判書類等作成関係業務」という。)を行つてはならない。
一 相手方の依頼を受けて第三条第一項第四号に規定する業務を行つた事件
二 司法書士法人(第三条第一項第一号から第五号までに規定する業務を行うことを目的として、次章の定めるところにより、司法書士が設立した法人をいう。以下同じ。)の社員又は使用人である司法書士としてその業務に従事していた期間内に、当該司法書士法人が相手方の依頼を受けて前号に規定する業務を行つた事件であつて、自らこれに関与したもの
三 司法書士法人の使用人である場合に、当該司法書士法人が相手方から簡裁訴訟代理等関係業務に関するものとして受任している事件
法人の使用人である間は、法人が相手方から簡裁代理で受けている事件も扱えません
22条2項3号は、司法書士法人の使用人である場合に、その法人が相手方から簡裁訴訟代理等関係業務に関するものとして受任している事件を挙げています。2号が法人に在籍していた期間内に「自らこれに関与したもの」に限っているのに対し、3号は自ら関与したかを問いません。使用人である間は、勤務先の法人が相手方側で代理している事件について、裁判書類の作成をすることができません。
司法書士法 第22条第2項第3号司法書士法人の使用人である場合に、当該司法書士法人が相手方から簡裁訴訟代理等関係業務に関するものとして受任している事件
認定司法書士は、簡裁代理で相手方の協議を受けた事件などでも裁判書類を作成できません
22条3項は、3条2項の認定司法書士について、裁判書類等作成関係業務を行ってはならない事件を6つ追加しています。簡裁訴訟代理等関係業務に関して相手方の協議を受けて賛助し又は依頼を承諾した事件(1号)、相手方の協議を受けた事件で協議の程度と方法が信頼関係に基づくと認められるもの(2号)、受任している事件の相手方からの依頼による他の事件(3号)です。4号と5号は、法人の社員又は使用人として在籍していた期間内に法人が受けた事件で自ら関与したものについて、6号は、法人の使用人である間に、法人が受任している事件(自ら関与しているもの)の相手方からの依頼による他の事件について、同じ趣旨を定めています。このうち3号と6号は、受任している事件の依頼者が同意すれば制限が外れます(3項ただし書)。
司法書士法 第22条第3項第三条第二項に規定する司法書士は、次に掲げる事件については、裁判書類等作成関係業務を行つてはならない。ただし、第三号及び第六号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合は、この限りでない。
一 簡裁訴訟代理等関係業務に関するものとして、相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件
二 簡裁訴訟代理等関係業務に関するものとして相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの
三 簡裁訴訟代理等関係業務に関するものとして受任している事件の相手方からの依頼による他の事件
四 司法書士法人の社員又は使用人である司法書士としてその業務に従事していた期間内に、当該司法書士法人が、簡裁訴訟代理等関係業務に関するものとして、相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件であつて、自らこれに関与したもの
五 司法書士法人の社員又は使用人である司法書士としてその業務に従事していた期間内に、当該司法書士法人が簡裁訴訟代理等関係業務に関するものとして相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるものであつて、自らこれに関与したもの
六 司法書士法人の使用人である場合に、当該司法書士法人が簡裁訴訟代理等関係業務に関するものとして受任している事件(当該司法書士が自ら関与しているものに限る。)の相手方からの依頼による他の事件
認定司法書士は、2項・3項の事件では簡裁訴訟代理等関係業務も行えません
22条4項は、認定司法書士が2項各号と3項各号の事件について、簡裁訴訟代理等関係業務を行ってはならないと定め、3項ただし書を準用しています。2項・3項が裁判書類の作成を禁じるのに対し、4項は同じ事件での訴訟代理なども禁じます。まとめると、1項は事件の性質による全面禁止、2項はすべての司法書士についての裁判書類作成の禁止、3項は認定司法書士についての裁判書類作成の禁止の追加、4項は認定司法書士の簡裁代理の禁止です。
司法書士法 第22条第4項第三条第二項に規定する司法書士は、第二項各号及び前項各号に掲げる事件については、簡裁訴訟代理等関係業務を行つてはならない。この場合においては、同項ただし書の規定を準用する。
法人の事件では、個人の制限とは別に41条が法人そのものの業務を制限します
22条は個人の司法書士の業務の制限で、司法書士法人そのものの業務は41条が制限します。41条1項は、法人が相手方の依頼を受けて3条1項4号の業務を行った事件(1号)、使用人が相手方から簡裁訴訟代理等関係業務として受任している事件(2号)、22条1項・2項1号2号・3項1号から5号までの事件として社員の半数以上が裁判書類等作成関係業務を行えない事件(3号)で、法人による裁判書類等作成関係業務を禁じています。社員の一部だけが22条の制限を受ける事件では、法人そのものは業務を行えることがありますが、制限を受ける社員はその事件に関与できません。22条に違反した司法書士は、47条の懲戒の対象になります。
司法書士法 第41条第1項第3号第二十二条第一項、第二項第一号若しくは第二号又は第三項第一号から第五号までに掲げる事件として社員の半数以上の者が裁判書類等作成関係業務を行つてはならないこととされる事件
試験ではこう問われる
- 公務員として職務上取り扱った事件については、司法書士はその業務を行えない(22条1項。R3 午後 問8 ア ○)
- 公務員として取り扱った事件と仲裁人として取り扱った事件は、どちらも業務を行えない(22条1項。H27 午後 問8 ウ ○・出題当時)
- 法人の社員として相手方側の訴状作成に自ら関与した司法書士は、脱退後も同じ事件で答弁書を作成できない(22条2項2号。H30 午後 問8 イ ○・出題当時)
- 法人の使用人である間は、法人が相手方から簡裁訴訟代理等関係業務として受任している事件の裁判書類を作成できない(22条2項3号)
- 認定司法書士が受任している事件の相手方からの他の事件は、依頼者が同意すれば受けられる(22条3項3号・ただし書)
- 22条2項の制限は裁判書類等作成関係業務に関するもので、登記の代理などは対象外である(22条2項柱書)
この用語が問われた肢
司法書士は,公務員として職務上取り扱った事件について,その業務を行うことができない。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。

