事件簿じけんぼ
事件簿とは、司法書士が日本司法書士会連合会の定める様式により調製しなければならない、受任した事件の記録簿です(規則30条1項)。試験では保存期間が問われ、現行の規定は閉鎖後7年間ですが、令和2年7月31日までは閉鎖後5年間でした。
事件簿は、司法書士法施行規則30条が定めています。司法書士は連合会の定める様式により事件簿を調製し、閉鎖後一定期間保存しなければなりません。記載する事項は施行規則には列挙されておらず、連合会の定める様式に委ねられています。この点は、協会の事件簿について施行規則49条1項が件名・嘱託人・受託年月日・事件を取り扱う司法書士という記載事項を自ら定めているのと違います。司法書士法人にも30条が準用されている(規則37条)ので、法人も事件簿を調製し、閉鎖後7年間保存します。

司法書士法施行規則30条司法書士は、連合会の定める様式により事件簿を調製しなければならない。2事件簿は、その閉鎖後七年間保存しなければならない。
保存期間は、令和2年8月1日から閉鎖後7年間です
令和2年8月1日に施行された施行規則の改正(令和2年法務省令第43号)で、30条2項の保存期間は「五年間」から「七年間」に改められました。同じ日に、懲戒の事由があったときから7年を経過すると懲戒の手続を開始できないという除斥期間(司法書士法50条の2)が新設されています。平成の出題で「閉鎖後5年間保存」とする肢が正しいとされたのは、出題当時の規定によるものです。
司法書士法 第50条の2第1項懲戒の事由があつたときから七年を経過したときは、第四十七条又は第四十八条第一項の規定による処分の手続を開始することができない。
改正前の規定は「閉鎖後五年間」で、平成の肢はこれを前提にしています
令和2年7月31日まで効力を持っていた施行規則30条2項は、「事件簿は、その閉鎖後五年間保存しなければならない。」と定めていました。平成25年と平成29年の肢は、この規定のもとで「閉鎖後5年間保存」とする記述を正しいとしています。現行法で同じ肢を読むと、5年を7年に置き換えなければ正しい記述になりません。事件簿の調製の義務と、連合会の定める様式によるという点は改正の前後で変わっていません。事件簿の保存期間(閉鎖後7年間)は、領収証の副本の保存期間(作成の日から3年間、施行規則29条1項)とも起算点と長さが違います。
司法書士法施行規則30条2項(令和2年7月31日までの規定)事件簿は、その閉鎖後五年間保存しなければならない。
事件簿は、懲戒のための調査で法務大臣や司法書士会が確かめる資料です
施行規則42条1項は、法務大臣が、懲戒処分に関し必要があると認めるときは、司法書士又は司法書士法人の保存する事件簿その他の関係資料や執務状況を調査し、又は職員にさせることができると定めています。法務大臣はこの調査を司法書士会に委嘱でき(同条2項)、司法書士と司法書士法人は正当の理由なく調査を拒めません(同条4項)。司法書士会も、60条の報告や61条の注意勧告に必要な範囲で、会員に事件簿その他の関係資料の提供を求めることができます(施行規則42条の2)。
除斥期間と保存期間はどちらも7年で、法務省は資料保管の負担の軽減を説明しています
法務省の改正の概要は、除斥期間の新設について、懲戒事由の発生から7年経過後は懲戒手続を開始しない制度とし、防御のための長期にわたる資料保管等の負担を軽減すると説明しています。この改正と同じ令和2年8月1日に、施行規則の改正で事件簿の保存期間も閉鎖後7年間に延びました。
公共嘱託登記司法書士協会の事件簿は、現在も5年間です
協会は事件簿を調製し、嘱託を受けた事件について件名・嘱託人・受託年月日・事件を取り扱う司法書士を記載しなければなりません(施行規則49条1項)。保存期間については同条2項が30条2項を準用し、「七年間」を「五年間」と読み替えています。司法書士・司法書士法人の事件簿と協会の事件簿で保存期間が違う点に注意が要ります。
試験ではこう問われる
- 事件簿は連合会の定める様式により調製し、閉鎖後5年間保存する(規則30条。H29 午後 問8 オ ○・出題当時)。現行規定では閉鎖後7年間
- 事件簿を調製し閉鎖後5年間保存する(規則30条。H25 午後 問8 オ ○・出題当時)。現行規定では閉鎖後7年間
- 法務大臣は懲戒処分に関し事件簿その他の関係資料を調査でき、司法書士は正当の理由なく拒めない(規則42条1項・4項)
- 公共嘱託登記司法書士協会の事件簿の保存期間は5年間(規則49条2項による30条2項の読替え)
- 現行法では、司法書士の事件簿の保存期間は閉鎖後7年間(規則30条2項、令和2年8月1日施行)

