最初の期日の欠席と陳述擬制(158条・170条・277条・297条)さいしょのきじつのけっせきとちんじゅつぎせい
陳述擬制とは、原告又は被告が最初にすべき口頭弁論の期日に出頭せず、又は出頭しても本案の弁論をしないとき、その者が提出した訴状・答弁書その他の準備書面に記載した事項を陳述したものとみなし、出頭した相手方に弁論をさせることです(158条)。
第1回の口頭弁論期日は、裁判所が当事者の都合を聞かずに指定することが多く、被告が答弁書だけ出して欠席することはよくあります。そのたびに期日を空転させると訴訟が進まないので、民事訴訟法は、最初の期日に欠席した当事者が出していた訴状や答弁書を陳述したものとみなし、出頭した相手方に弁論をさせられるようにしました。口頭主義の例外なので、使える場面は条文で限られています。

最初の期日に欠席した当事者の訴状・答弁書は、原告側でも被告側でも、相手方が出頭していれば陳述したものとみなせます
158条は、原告又は被告が最初にすべき口頭弁論の期日に出頭せず、又は出頭したが本案の弁論をしないときは、裁判所は、その者が提出した訴状又は答弁書その他の準備書面に記載した事項を陳述したものとみなし、出頭した相手方に弁論をさせることができると定めます。条文は原告と被告を区別していないので、原告が欠席して被告が出頭したときは訴状の陳述を擬制できます。「原告が最初にすべき口頭弁論の期日に出頭しないときであっても、裁判所は、原告が提出した訴状に記載した事項を陳述したものとみなし、その期日に出頭した被告に弁論をさせることができる」という肢(R6 午後 問3 ア)は正しいです。陳述を擬制するかどうかは裁判所の裁量(できる)であり、擬制しないで期日を延期することもできます。原告が最初の期日に欠席しても、それだけで訴えの取下げがあったとみなされることはなく、取下げ擬制は当事者双方が欠席した場合の263条の効果です。「当事者双方が、連続して二回、口頭弁論又は弁論準備手続の期日に出頭しなかった場合には、訴えの取下げがあったものとみなされる」という肢(R4 午後 問4 エ)は正しいです。
当事者双方が欠席したときは、出頭した相手方がいないので陳述を擬制できません
158条は「出頭した相手方に弁論をさせる」ための制度なので、相手方の出頭が前提です。当事者双方が最初の期日に欠席したときは、訴状も答弁書も陳述したものとみなすことはできず、双方欠席の効果(263条・244条)の問題になります。控訴審でも双方欠席の効果があり、「当事者双方が、控訴審の口頭弁論又は弁論準備手続の期日に出頭しなかった場合において、法定の期間内に期日指定の申立てをしないときは、控訴の取下げがあったものとみなされる」という肢(R8 午後 問5 オ)は正しいです。

陳述擬制は弁論準備手続の最初の期日と控訴審の最初の期日にも使え、簡易裁判所では続行期日でも使えます
158条は、弁論準備手続に準用され(170条5項)、控訴審の手続にも準用されます(297条)。地方裁判所では続行期日には158条が使えませんが、簡易裁判所では口頭弁論の続行の期日にも準用されます(277条)。簡易裁判所では、被告が続行期日に欠席しても、提出した準備書面の陳述を擬制して出頭した原告に弁論をさせることができます。地方裁判所の続行期日に一方が欠席したときは、出頭した当事者は、相手方に送達された準備書面などに記載した事実なら主張できます(161条3項)。
請求の放棄・認諾の書面を出して欠席すれば放棄・認諾の陳述も擬制でき、答弁書を出さずに欠席すれば擬制自白が成立します
請求の放棄又は認諾をする旨の書面を提出した当事者が口頭弁論等の期日に出頭しないときは、裁判所は、その旨の陳述をしたものとみなすことができます(266条2項)。この場合は最初の期日に限られません。放棄や認諾は期日に口頭ですることもでき、「請求の放棄は、書面でしなければならない」という肢(R6 午後 問4 ア)は誤りです。被告が答弁書その他の準備書面を出さずに欠席したときは、原告の主張した事実を自白したものとみなされます(159条3項・1項)。被告が複数いる通常共同訴訟では、欠席した被告についてだけ弁論を分離して判決できます。答弁書で請求原因を争う旨を書いて欠席すれば、その答弁書が陳述擬制されるので擬制自白は成立しません。公示送達で呼び出された被告については擬制自白が成立しないことは公示送達の語で扱います。
民事訴訟法 第158条(訴状等の陳述の擬制)
原告又は被告が最初にすべき口頭弁論の期日に出頭せず、又は出頭したが本案の弁論をしないときは、裁判所は、その者が提出した訴状又は答弁書その他の準備書面に記載した事項を陳述したものとみなし、出頭した相手方に弁論をさせることができる。
民事訴訟法 第277条(続行期日における陳述の擬制)
第百五十八条の規定は、原告又は被告が口頭弁論の続行の期日に出頭せず、又は出頭したが本案の弁論をしない場合について準用する。
民事訴訟法 第266条第2項請求の放棄又は認諾をする旨の書面を提出した当事者が口頭弁論等の期日に出頭しないときは、裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官は、その旨の陳述をしたものとみなすことができる。
試験ではこう問われる
- 最初の期日に原告・被告のどちらが欠席しても、相手方が出頭していれば訴状・答弁書の陳述を擬制できる(158条、R6 午後 問3 ア ○)
- 当事者双方が欠席したら陳述擬制はできない。双方が連続して2回欠席すれば訴えの取下げが擬制される(263条、R4 午後 問4 エ ○)
- 控訴審で当事者双方が欠席し、期日指定の申立てをしないときは、控訴の取下げが擬制される(R8 午後 問5 オ ○)
- 弁論準備手続の最初の期日(170条5項)、控訴審の最初の期日(297条)にも準用される
- 簡易裁判所では続行期日でも陳述擬制できる(277条)
- 放棄・認諾の書面を出して欠席すれば、その陳述も擬制できる(266条2項)。請求の放棄は書面でしなければならないわけではない(R6 午後 問4 ア ×)
- 答弁書を出さずに欠席すると擬制自白が成立する(159条3項)。通常共同訴訟なら分離して欠席被告に判決できる

