形式的形成訴訟と共有物分割の訴えけいしきてきけいせいそしょうときょうゆうぶつぶんかつのうったえ
形式的形成訴訟とは、判決の確定によって法律関係を変動させる形成の訴えのうち、どういう要件でどういう内容の判決をするかが法律に定められておらず、裁判所が裁量で合目的的に内容を決めるものをいいます。共有物分割の訴えと父を定めることを目的とする訴えが代表例で、判例は筆界確定の訴えもこれに当たるとしています。
兄弟3人で相続した土地を分けたいのに話がまとまらないとき、裁判所に分けてもらうのが共有物分割の訴えです。ただ、どう分けるのが公平かは、土地の形や使い方、各人の事情によって変わり、条文の要件に当てはめれば答えが出るものではありません。そこで裁判所は、当事者の言い分に縛られずに、一番合理的な分け方を自分で選びます。訴訟の形をとりながら中身は裁判所の裁量的な処分であるこうした訴えを、形式的形成訴訟と呼びます。

形式的形成訴訟は、判決で法律関係を変える訴えのうち、形成の要件が法律に定められていないものです
離婚の訴えでは、不貞行為などの離婚原因(民法770条1項)があれば離婚という効果が生じるという要件と効果の関係が条文に書かれています。これに対し、共有物分割の訴えでは、民法は「協議が調わないとき」に裁判所に分割を請求できると定めるだけで(民法258条1項)、どんな事情があればどう分けるかを決めていません。父を定めることを目的とする訴え(民法773条)も同じです。こうした訴えは、判決の確定によって法律関係が変わるので形成の訴えですが、実質は裁判所が合目的的に判断する非訟事件に近く、利害の対立が大きいことから伝統的に判決手続で審理されています。原告が共有者である限り、請求を棄却して分割しないという判決も考えにくいとされます。
- 通常の訴訟事件公開・対審で審理し、要件を定めた規定を当てはめて判決します
- 非訟事件非公開で対審の構造をとらず、裁判所の裁量で決定します
- 形式的形成訴訟公開・対審で審理しますが、裁判所の裁量で内容を決め、判決で示します
共有物分割の訴えでは、裁判所は当事者が申し立てた分割の方法に拘束されません
判例は、共有物分割の訴えでは当事者は単に共有物の分割を求める旨を申し立てれば足り、分割の方法を具体的に指定する必要はなく、現物で分割することが不可能であるか、現物分割によって著しく価格を損なうおそれがあるときは、裁判所は当事者が申し立てた分割の方法にかかわらず、共有物を競売に付して売得金を持分割合で分割するよう命じることができるとしました(最判昭和57年3月9日)。分け方の要件が法定されていない以上、申立てに縛られる理由がないからです。現行の民法258条は、現物分割と、共有者に債務を負担させて他の共有者の持分を取得させる方法(賠償分割)を2項で定め、これらで分割できないか、分割で価格を著しく減少させるおそれがあるときに競売を命じられると3項で定めています。賠償分割は、全面的価格賠償による分割を認めた判例(最判平成8年10月31日)を条文にしたものです。

共有物分割の訴えでも、当事者は訴訟上の和解で分割の内容を決めることができます
形式的形成訴訟でも、当事者がその対象を自由に処分できるかどうかで、和解ができるかが分かれます。共有物は、共有者全員の協議がまとまれば裁判外でも自由に分割でき(民法258条1項の反対解釈)、分け方に公益がかかわるわけでもありません。そのため共有物分割の訴えでは訴訟上の和解をすることができます。これに対し、筆界(境界)確定の訴えでは、筆界は公法上のものであり当事者が合意で動かすことはできないので、和解で筆界を定めることはできません。同じ形式的形成訴訟でも結論が分かれる点は「筆界(境界)確定の訴え」で比べて扱います。
共有物分割の訴えは、共有者全員が原告か被告になる固有必要的共同訴訟です
共有物の分割は、共有者全員を拘束する形で一度に決めなければ意味がありません。判例は、共有物の分割は共有者の一部だけではできず、共有者全員が分割手続に参加する必要があるとして、共有物分割の訴えを固有必要的共同訴訟としています(大判明治41年9月25日)。分割を求める共有者は、ほかの共有者全員を被告にしなければなりません。固有必要的共同訴訟の判断の枠組みと審判の規律は「固有必要的共同訴訟の成否」で扱います。
民法258条1項共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
民法258条3項前項に規定する方法により共有物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。
試験ではこう問われる
- 共有物分割の訴えは、分割の要件が法定されていない形式的形成訴訟である
- 当事者全員が現物分割を主張していても、裁判所は競売による代金分割を命じることができる(最判昭和57年3月9日)
- 共有物分割の訴えでは訴訟上の和解をすることができる。筆界確定の訴えとは違う
- 共有物分割の訴えは共有者全員が当事者となる固有必要的共同訴訟で、一人だけを被告にして起こすことはできない(大判明治41年9月25日)
- 現行の民法258条は、現物分割と賠償分割を原則とし、それができないときに競売を命じられると定めている
- 共同相続人間で遺産の分割をすべき共有物は、遺産分割の審判を申し立てずに共有物分割の訴えで分割することはできない(民法258条の2第1項、R6 問9 エ ×)

