請求異議の訴えせいきゅういぎのうったえ
請求異議の訴えとは、債務名義に係る請求権の存在又は内容について異議のある債務者が、その債務名義による強制執行の不許を求める訴えです(35条1項)。確定前の仮執行宣言付判決や仮執行宣言付支払督促などは対象から除かれ、確定判決についての異議の事由は口頭弁論の終結後に生じたものに限られます(同条2項)。
請求異議の訴えは、債務名義はあるものの、その中身である請求権が弁済などで消滅している、あるいは初めから存在しないといった実体上の事情を理由に、強制執行を止めるための訴えです。

民事執行法 第35条第1項債務名義(第二十二条第二号又は第三号の二から第四号までに掲げる債務名義で確定前のものを除く。以下この項において同じ。)に係る請求権の存在又は内容について異議のある債務者は、その債務名義による強制執行の不許を求めるために、請求異議の訴えを提起することができる。裁判以外の債務名義の成立について異議のある債務者も、同様とする。
確定前の仮執行宣言付判決には、請求異議の訴えを提起できません
35条1項の括弧書は、22条2号又は3号の2から4号までに掲げる債務名義で確定前のものを対象から除いています。仮執行の宣言を付した判決(22条2号)は、確定前であれば上訴の中で請求権の存否を争うことができるので、別に請求異議の訴えを認める必要がないからです。判決が確定すれば、確定判決として請求異議の訴えの対象になります。「仮執行の宣言を付した判決に係る請求権の存在又は内容について異議のある債務者は,その判決が確定する前後を問わず,その判決による強制執行の不許を求めるために,請求異議の訴えを提起することができる」という肢(R3 午後 問7 オ)は誤りです。仮執行の宣言を付した支払督促(22条4号)も、確定前のものは対象から除かれています。
確定判決への異議は口頭弁論終結後の事由に限られ、裁判以外の債務名義は成立の瑕疵も争えます
確定判決についての異議の事由は、口頭弁論の終結後に生じたものに限られます(35条2項)。それより前に生じた事由は、判決の既判力で遮断されるからです。執行証書のような裁判以外の債務名義については、35条1項後段が、債務名義の成立について異議のある債務者も請求異議の訴えを提起できると定めています。執行証書の作成を委任された代理人に代理権がなかったといった成立の瑕疵も、この訴えで主張できます。
民事執行法 第35条第2項確定判決についての異議の事由は、口頭弁論の終結後に生じたものに限る。
請求異議は債務者が請求権を争う訴え、第三者異議は第三者が目的物の権利を主張する訴えです
請求異議の訴え(35条)は債務者が提起し、債務名義に表示された請求権そのものを争います。第三者異議の訴え(38条)は債務者以外の第三者が提起し、強制執行の目的物について所有権その他目的物の譲渡又は引渡しを妨げる権利を有することを理由とします。請求異議の訴えの管轄は、執行文付与の訴えの管轄の規定(33条2項)を準用して債務名義の種類ごとに定まり(35条3項)、第三者異議の訴えは執行裁判所が管轄します(38条3項)。どちらの訴えも、提起しただけでは強制執行は止まらず、執行停止の裁判(36条1項)の正本を提出して停止させます(39条1項7号)。

民事執行法 第36条第1項執行文付与に対する異議の訴え又は請求異議の訴えの提起があつた場合において、異議のため主張した事情が法律上理由があるとみえ、かつ、事実上の点について疎明があつたときは、受訴裁判所は、申立てにより、終局判決において次条第一項の裁判をするまでの間、担保を立てさせ、若しくは立てさせないで強制執行の停止を命じ、又はこれとともに、担保を立てさせて強制執行の続行を命じ、若しくは担保を立てさせて既にした執行処分の取消しを命ずることができる。急迫の事情があるときは、裁判長も、これらの処分を命ずることができる。
異議の事由が数個あるときは、同時に主張しなければなりません
35条3項は、執行文付与に対する異議の訴えの34条2項を準用しています。債務者は、異議の事由が数個あるときは同時にこれを主張しなければなりません。弁済と相殺のように複数の事由があるのに一つずつ訴えを繰り返すと、そのたびに執行が止まるおそれがあるからです。受訴裁判所は、終局判決で執行停止の処分を命じ、又は既にした執行停止の裁判を取り消し、変更し、若しくは認可することができ、この裁判には仮執行の宣言をしなければなりません(37条1項)。
民事執行法 第34条第2項異議の事由が数個あるときは、債務者は、同時に、これを主張しなければならない。
試験ではこう問われる
- 確定前の仮執行宣言付判決は、請求異議の訴えの対象にならない(35条1項括弧書。R3 午後 問7 オ ×)
- 確定判決についての異議の事由は、口頭弁論の終結後に生じたものに限る(35条2項)
- 裁判以外の債務名義は、その成立について異議がある場合も請求異議の訴えで争える(35条1項後段)
- 請求異議の訴えを提起しても、執行停止の裁判がなければ強制執行は停止しない(36条1項・39条1項7号)
- 異議の事由が数個あるときは、同時に主張しなければならない(35条3項・34条2項)
この用語が問われた肢
仮執行の宣言を付した判決に係る請求権の存在又は内容について異議のある債務者は,その判決が確定する前後を問わず,その判決による強制執行の不許を求めるために,請求異議の訴えを提起することができる。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。

