第三者からの情報取得手続だいさんしゃからのじょうほうしゅとくてつづき
第三者からの情報取得手続とは、執行裁判所が、債権者の申立てにより、登記所、市町村・日本年金機構等、銀行等・振替機関等に対し、債務者の不動産、給与債権、預貯金債権・振替社債等に関する情報の提供を命ずる手続です(204条〜207条)。令和元年改正(令和2年4月1日施行)で設けられました。
第三者からの情報取得手続は、債務者以外の第三者から債務者の財産の情報を得る手続です。財産開示手続が債務者本人に陳述させるのに対し、こちらは登記所や金融機関などに情報を提供させます。管轄は、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所です(204条)。

民事執行法 第207条第1項執行裁判所は、第百九十七条第一項各号のいずれかに該当するときは、執行力のある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者の申立てにより、次の各号に掲げる者であつて最高裁判所規則で定めるところにより当該債権者が選択したものに対し、それぞれ当該各号に定める事項について情報の提供をすべき旨を命じなければならない。ただし、当該執行力のある債務名義の正本に基づく強制執行を開始することができないときは、この限りでない。
一 銀行等(銀行、信用金庫、信用金庫連合会、労働金庫、労働金庫連合会、信用協同組合、信用協同組合連合会、農業協同組合、農業協同組合連合会、漁業協同組合、漁業協同組合連合会、水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会、農林中央金庫、株式会社商工組合中央金庫又は独立行政法人郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構をいう。以下この号において同じ。) 債務者の当該銀行等に対する預貯金債権(民法第四百六十六条の五第一項に規定する預貯金債権をいう。)に対する強制執行又は担保権の実行の申立てをするのに必要となる事項として最高裁判所規則で定めるもの
二 振替機関等(社債、株式等の振替に関する法律第二条第五項に規定する振替機関等をいう。以下この号において同じ。) 債務者の有する振替社債等(同法第二百七十九条に規定する振替社債等であつて、当該振替機関等の備える振替口座簿における債務者の口座に記載され、又は記録されたものに限る。)に関する強制執行又は担保権の実行の申立てをするのに必要となる事項として最高裁判所規則で定めるもの
取得できる情報は不動産・給与債権・預貯金債権等で、給与債権の情報を求められる債権者は限られます
不動産に係る情報(205条)と預貯金債権・振替社債等に係る情報(207条)は、執行力のある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者と、一般の先取特権を有することを証する文書を提出した債権者が申し立てられます。給与債権に係る情報(206条)は、市町村や日本年金機構等から債務者の勤務先などの情報を得る手続で、申し立てられるのは、扶養義務等(151条の2第1項各号)に係る請求権又は人の生命若しくは身体の侵害による損害賠償請求権について執行力のある債務名義の正本を有する債権者と、子の監護の費用の一般の先取特権(民法306条3号)を有することを証する文書を提出した債権者に限られます(206条1項・2項)。2項の先取特権者による申立ては、令和6年の民法等の改正(令和6年法律第33号)で2026年4月1日から認められたもので、令和6年の出題当時は1項の債権者だけが申し立てられました。「貸金返還請求権について執行力のある債務名義の正本を有する債権者は、第三者からの情報取得手続において、債務者の給与債権に係る情報の提供を求めることができる」という肢(R6 午後 問7 ウ)は誤りです。
民事執行法 第206条第1項執行裁判所は、第百九十七条第一項各号のいずれかに該当するときは、第百五十一条の二第一項各号に掲げる義務に係る請求権又は人の生命若しくは身体の侵害による損害賠償請求権について執行力のある債務名義の正本を有する債権者の申立てにより、次の各号に掲げる者であつて最高裁判所規則で定めるところにより当該債権者が選択したものに対し、それぞれ当該各号に定める事項について情報の提供をすべき旨を命じなければならない。ただし、当該執行力のある債務名義の正本に基づく強制執行を開始することができないときは、この限りでない。
一 市町村 債務者が支払を受ける地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第三百十七条の二第一項ただし書に規定する給与に係る債権に対する強制執行又は担保権の実行の申立てをするのに必要となる事項として最高裁判所規則で定めるもの(当該市町村が債務者の市町村民税(特別区民税を含む。)に係る事務に関して知り得たものに限る。)
二 日本年金機構、国家公務員共済組合、国家公務員共済組合連合会、地方公務員共済組合、全国市町村職員共済組合連合会又は日本私立学校振興・共済事業団 債務者(厚生年金保険の被保険者であるものに限る。以下この号において同じ。)が支払を受ける厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第三条第一項第三号に規定する報酬又は同項第四号に規定する賞与に係る債権に対する強制執行又は担保権の実行の申立てをするのに必要となる事項として最高裁判所規則で定めるもの(情報の提供を命じられた者が債務者の厚生年金保険に係る事務に関して知り得たものに限る。)
不動産と給与債権の情報は財産開示手続の前置が要り、預貯金債権の情報は要りません
205条2項は、不動産に係る情報の取得の申立ては、財産開示期日における手続が実施された場合において、当該財産開示期日から3年以内に限りすることができると定め、206条3項がこれを給与債権に係る情報に準用しています。207条にはこの定めがないので、預貯金債権・振替社債等に係る情報は、財産開示手続を経ずに申し立てられます。207条には、205条3項のような認容決定を債務者に送達する定めもなく、執行抗告も申立てを却下する裁判に対してだけ認められています(207条3項)。預貯金は引き出されやすいので、債務者に知られる前に情報を得られるようにしています。「債務者の預貯金債権に関する金融機関からの情報取得手続は、先に財産開示期日における手続が実施されていなければ、申し立てることができない」という肢(R6 午後 問7 エ)は誤りです。どの情報についても、申立てには197条1項各号又は2項各号の要件(配当等の手続での不満足、又は知れている財産で完全な弁済を得られないことの疎明)が必要です。

民事執行法 第205条第2項前項の申立ては、財産開示期日における手続が実施された場合(当該財産開示期日に係る財産開示手続において第二百条第一項の許可がされたときを除く。)において、当該財産開示期日から三年以内に限り、することができる。
得た情報は債権の行使以外の目的に使えず、違反には過料があります
申立人は、第三者からの情報取得手続において得られた債務者の財産に関する情報を、当該債務者に対する債権をその本旨に従って行使する目的以外の目的のために利用し、又は提供してはなりません(210条1項)。「第三者からの情報取得手続の申立人は、当該手続において得られた債務者の財産に関する情報を、当該債務者に対する債権をその本旨に従って行使する目的以外の目的のために利用し、又は提供してはならない」という肢(R6 午後 問7 オ)は正しい記述です。記録を閲覧して情報を得た他の債権者も同じ制限を受け(同条2項)、違反した者は30万円以下の過料に処せられます(214条2項)。情報の提供は執行裁判所に書面でされ、執行裁判所は申立人に書面の写しを送付し、債務者に情報の提供がされた旨を通知します(208条)。
民事執行法 第210条第1項申立人は、第三者からの情報取得手続において得られた債務者の財産に関する情報を、当該債務者に対する債権をその本旨に従つて行使する目的以外の目的のために利用し、又は提供してはならない。
試験ではこう問われる
- 貸金返還請求権の債権者は、給与債権に係る情報の提供を求められない(206条1項。R6 午後 問7 ウ ×)
- 預貯金債権に係る情報の取得は、財産開示手続を前置しなくても申し立てられる(207条。R6 午後 問7 エ ×)
- 申立人は、得た情報を債権の本旨に従った行使以外の目的で利用・提供してはならない(210条1項。R6 午後 問7 オ ○)
- 不動産と給与債権に係る情報の取得は、財産開示期日から3年以内に限り申し立てられる(205条2項・206条3項)
- 第三者からの情報取得手続は、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する(204条)
この用語が問われた肢
貸金返還請求権について執行力のある債務名義の正本を有する債権者は、第三者からの情報取得手続において、債務者の給与債権に係る情報の提供を求めることができる。
債務者の預貯金債権に関する金融機関からの情報取得手続は、先に財産開示期日における手続が実施されていなければ、申し立てることができない。
第三者からの情報取得手続の申立人は、当該手続において得られた債務者の財産に関する情報を、当該債務者に対する債権をその本旨に従って行使する目的以外の目的のために利用し、又は提供してはならない。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。

