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一般不法行為の要件(709条・712条・713条・720条)いっぱんふほうこういのようけん

民法 第14章 事務管理・不当利得・不法行為 過去問で24肢

一般不法行為とは、故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害し、これによって損害を生じさせることで、加害者は損害を賠償する責任を負いますが、責任能力がない場合や正当防衛・緊急避難に当たる場合は責任を負いません(709条・712条・713条・720条)。

自転車でよそ見をして歩行者にぶつかれば、けがの治療費を払わなければなりません。契約がなくても、他人に損害を与えた人に償わせるのが不法行為の制度です。ただし民法は、わざと又は不注意で他人の権利や法律上守られる利益を侵害した場合に限って責任を負わせ、自分の行為の責任が分からない子どもや、身を守るためにやむを得ず反撃した人には責任を負わせません。人の行動の自由を守りつつ、落ち度のある人に損害を負担させる考え方です。

歩道の場面。自転車(札「加害者」)がよそ見をして歩行者に衝突した直後で、歩行者(札「被害者」)が足を押さえて座り込んでいる。先生が被害者の横に立ち、指を4本立てている。先生の吹き出し「故意又は過失、権利の侵害、損害、因果関係の4つを、請求す

一般不法行為は、故意又は過失、権利又は法律上保護される利益の侵害、損害の発生、因果関係がそろうと成立し、これらは被害者が主張立証します

709条は、故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負うと定めています。要件は、①故意又は過失、②権利又は法律上保護される利益の侵害、③損害の発生、④行為と損害の因果関係です。これらは損害賠償請求権を発生させる要件なので、請求する被害者が主張立証します。自転車で歩行者に衝突した事例でも、歩行者が損害賠償を請求するには、自転車の運転者の過失を主張立証しなければなりません。過失とは、結果の発生を予見できたのに、結果を回避するために必要な注意を怠ったことをいいます。過失を加害者が反証しなければならない仕組み(中間責任)は、監督義務者・使用者・工作物の占有者などの特別な不法行為で定められています。

法律上保護される利益には景観利益も含まれ、生存の相当程度の可能性の侵害は死亡との因果関係とは別に不法行為になります

709条は権利だけでなく法律上保護される利益の侵害も対象にしています。判例は、良好な景観に近接する地域内に居住し、その恵沢を日常的に享受している者が有する良好な景観の恵沢を享受する利益(景観利益)は法律上保護に値し、その違法な侵害は不法行為になり得るとしています(最判平成18年3月30日。国立マンション事件)。因果関係について、判例は、医師の過失による医療行為と患者の死亡との因果関係は、医療水準にかなった医療が行われていれば患者がその死亡の時点でなお生存していたであろうことを是認し得る高度の蓋然性が証明されて初めて肯定されるとしています(最判平成11年2月25日)。そのうえで、その高度の蓋然性は証明されなくても、患者がその死亡の時点でなお生存していた相当程度の可能性が証明されれば、その可能性を侵害したこと自体について医師は不法行為責任を負うとしました(最判平成12年9月22日)。これは可能性の侵害という別の法益の侵害を認めたもので、相当程度の可能性が証明されたからといって医療行為と死亡との因果関係が肯定されるわけではありません。また、権利の行使であっても、社会観念上被害者が認容すべき程度を超えれば違法となり不法行為が成立します。確定判決に基づく強制執行という権利行使の形をとっていても、原告が被告の権利を害する意図の下に被告の訴訟手続への関与を妨げ、本来あるべきではない内容の確定判決を取得したときは、「その強制執行により損害を被った当該被告であった者は、当該原告であった者を被告とする訴えにより、不法行為による損害賠償請求をすることができる」という肢(R8 午後 問4 ウ)は正しいです。

病院の診察室の場面。机の上にカルテ(「適切な検査をしていなかった」)。先生が裁判官役(札「裁判所」)で、遺族の男性(札「遺族」)と白衣の医師(札「医師」)の間に立っている。先生の吹き出し「適切な医療で助かったとまでは言えません。でも、亡くな

未成年者も責任能力があれば自ら責任を負い、責任能力がないことは加害者が主張立証します

712条は、未成年者が他人に損害を加えた場合に、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能(責任能力)を備えていなかったときは賠償の責任を負わないと定めています。未成年者であること自体で免責されるのではなく、責任能力のある未成年者は自ら709条の責任を負います。責任能力はおおむね12歳前後の知能が目安とされています。親権者が監督義務者として責任を負う場面があっても、責任能力のある未成年者自身が責任を免れるわけではありません。また、712条・713条は責任を免れる例外を定めた規定なので、責任能力がなかったことは賠償を免れようとする加害者が主張立証します。未成年者に損害賠償を請求する原告が、行為の当時その者に責任能力があったことを主張立証する必要はありません。

精神上の障害で責任を弁識する能力を欠く間の加害は免責されますが、故意又は過失で一時的にその状態を招いた者は責任を負います

713条本文は、精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は賠償の責任を負わないと定め、同条ただし書は、故意又は過失によって一時的にその状態を招いたときはこの限りでないとしています。飲酒や薬物で自ら責任を弁識できない状態を招いた者は、その原因をつくった時点で責任を問えるからです。故意によって一時的に責任を弁識する能力を欠く状態を招いた者も、過失によってその状態を招いた者も、その間の加害について賠償責任を負います。責任無能力者が責任を負わないときは、監督義務者が714条の責任を負います。

他人の不法行為に対し自己又は第三者の権利を守るためやむを得ずした加害は、正当防衛として責任を負いません

720条1項本文は、他人の不法行為に対し、自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は損害賠償の責任を負わないと定めています。守る対象には第三者の権利も含まれるので、Aの不法行為に対しBが第三者Cの権利を防衛するためやむを得ずAに加害行為をしたときも、BはAに損害賠償責任を負いません。同項ただし書は、防衛のために関係のない第三者に損害を与えた場合に、その第三者が元の不法行為者に賠償を請求することを妨げないとしています。同条2項は、他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合(緊急避難)に1項を準用します。

一般不法行為の要件と責任を免れる事由

  • 成立要件(被害者が主張立証): 故意又は過失、権利又は法律上保護される利益の侵害、損害の発生、因果関係(709条)
  • 責任能力の欠如(加害者が主張立証): 未成年者で責任を弁識する知能がない(712条)、精神上の障害で責任を弁識する能力を欠く状態(713条本文)
  • 713条ただし書: 故意又は過失で一時的に責任無能力の状態を招いた者は責任を負う
  • 正当防衛: 他人の不法行為に対し自己又は第三者の権利・利益を防衛するためやむを得ずした加害(720条1項)
  • 緊急避難: 他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合(720条2項)
民法 第709条

(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

民法 第712条

(責任能力)
未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。

民法 第713条

精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わない。ただし、故意又は過失によって一時的にその状態を招いたときは、この限りでない。

民法 第720条第1項

他人の不法行為に対し、自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、損害賠償の責任を負わない。ただし、被害者から不法行為をした者に対する損害賠償の請求を妨げない。

試験ではこう問われる

  1. 故意又は過失・権利利益の侵害・損害・因果関係は、損害賠償を請求する被害者が主張立証する(709条)
  2. 権利の行使でも社会観念上被害者が認容すべき程度を超えれば不法行為になり、被告の訴訟関与を妨げて不当な確定判決を取得し強制執行した原告は損害賠償責任を負う(R8 午後 問4 ウ ○)
  3. 景観利益は法律上保護に値し、生存の相当程度の可能性の侵害も不法行為になる(最判平成18年3月30日・最判平成12年9月22日)
  4. 未成年者でも責任能力があれば自ら賠償責任を負い、責任能力がなかったことは加害者が主張立証する(712条)
  5. 故意又は過失で一時的に責任を弁識する能力を欠く状態を招いた者は責任を負う(713条ただし書)
  6. 第三者の権利を防衛するためやむを得ずした加害も正当防衛として責任を負わない(720条1項)

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