内閣総理大臣の指名と国務大臣の任免(67条・68条)そうりしめいとにんめん
内閣総理大臣の指名と国務大臣の任免とは、内閣総理大臣を国会議員の中から国会の議決で指名して天皇が任命し(67条・6条1項)、国務大臣を内閣総理大臣が任命し罷免する(68条)という内閣の組織の仕組みです。国務大臣の過半数は国会議員でなければならず、内閣総理大臣その他の国務大臣は文民でなければなりません(66条2項)。
学校の生徒会長は生徒の投票で選ばれますが、会長を支える役員は会長が自分で選び、必要なら交代させることができます。ただし、役員の大半は生徒会の中から選ぶという決まりがあれば、役員会は生徒の代表とのつながりを保てます。内閣も同じで、国会が国会議員の中から内閣総理大臣を指名し、内閣総理大臣が国務大臣を任命し罷免します。国務大臣の過半数を国会議員とし、天皇の任命や認証を形式的なものにとどめることで、内閣が国会の信任に依拠する仕組みになっています。

内閣総理大臣は、国会議員の中から国会が指名します
国会議員であることは就任の要件であるだけでなく、在任中も維持しなければならない要件です。国務大臣の過半数は、衆議院議員ではなく国会議員の中から選べば足り(68条1項ただし書)、参議院議員も算入されます。指名の議決は他のすべての案件に先だって行われ(67条1項後段)、両議院の議決が異なるときは両院協議会を開き、それでも一致しないときや参議院が10日以内に議決しないときは衆議院の議決が国会の議決になります(67条2項)。再議決は要らないので、「衆議院と参議院とが異なった指名の議決をした場合に,衆議院で出席議員の 3 分の 2以上の多数で再び指名の議決がされたときは,衆議院の議決が国会の議決となります」という肢(R3 問3 ウ)は誤りです。内閣が存在しない状態を長く続けられないことが、この強い優越の理由です。
- 内閣総理大臣国会議員であることが在任中も要件。国会が指名し天皇が任命する。指名は他のすべての案件に先だって行う(67条1項後段)
- 国務大臣国会議員でなくてもよいが、過半数は国会議員であることを要する。任免は内閣総理大臣の専権で、任免に天皇の認証を要する
- 文民要件内閣総理大臣とその他の国務大臣は、文民でなければならない(66条2項)
国務大臣の過半数は、国会議員でなければなりません
民間からの起用を可能にしつつ、内閣が国会の信任に依拠する仕組みを保つための要件です。「内閣総理大臣が国務大臣を任命しますが,国務大臣の過半数は,国会議員の中から選ばれなければなりません」という肢(R3 問3 エ)は正しいです。過半数という数え方は任命の時点だけでなく在任中も維持される必要があり、国会議員である大臣が議員の地位を失って過半数を割ったときは、補充が求められます。国会議員でない大臣も、議院に出席して発言する権利と義務をもちます(63条)。国会に対する説明責任は、議員であるかどうかにかかわらず負うという建て付けです。答弁または説明のため出席を求められたときは、出席しなければなりません。

任免には天皇の認証が行われますが、認証は効力要件ではありません
7条5号は、国務大臣の任免を認証することを天皇の国事行為とします。もっとも、認証は効力要件ではありません。国務大臣の任命には天皇の認証が行われますが、内閣はこの認証に対する助言と承認を拒むことができません。内閣が助言と承認を拒めるとすれば、既存の閣僚の意向で内閣総理大臣の任免権が制約され、首長たる地位と内閣の一体性が損なわれることになってしまいます。罷免の効力も、天皇の認証によって生じるのではありません。認証とはある行為が権限のある機関によって適法に行われたことを公に証明する行為にとどまり、効力発生要件ではありません。任命の時点で合議体としての内閣が成立し、認証はその後の形式的行為にとどまります。憲法が天皇に与えた国事行為がすべて形式的・儀礼的なものであることの、具体的な現れです。

国会議員の地位を失っても、当然には大臣の地位を失いません
国務大臣は国会議員でなくてもなれるのですから、議員でなくなったことが当然に大臣の地位を失わせるわけではありません。国会議員の中から選ばれた国務大臣が在任中に議員の身分を失っても、自動的に国務大臣の身分を失うわけではありません。過半数の要件を満たさなくなる場合に補充が必要になるにとどまります。内閣総理大臣の場合とは扱いが違います。内閣総理大臣は国会議員であることが在任中の要件ですから、議員の地位を失えば70条の「欠けたとき」に当たり、内閣は総辞職します。内閣総理大臣にとって国会議員であることは就任の要件であるだけでなく在任の要件でもあるからです。
指名が行われるまでの間は、前の内閣が職務を行います
総選挙の後に国会が召集されると内閣は総辞職しますが(70条後段)、そこで行政が止まるわけではありません。71条により、前の内閣は新たに内閣総理大臣が任命されるまで引き続き職務を行います。この間の内閣がどこまでの権限を行使できるかについては、日常的な事務の処理にとどめるべきだという見解が有力ですが、憲法上の制限はありません。指名の議決を他のすべての案件に先だって行うとされているのは、この空白の時期を短くするためです。総選挙後の召集による総辞職(70条)、他のすべての案件に先立つ指名(67条1項)、任命までの職務の継続(71条)という順で条文がつながっています。
内閣総理大臣と国務大臣は、文民でなければなりません
66条2項は、内閣総理大臣その他の国務大臣は文民でなければならないと定めます。軍への統制を確保するための規定です。現職の自衛官は文民に当たらないので、内閣総理大臣や国務大臣に任命することはできません。文民要件は、内閣総理大臣だけでなく「その他の国務大臣」にも及びます。文民の意味については、職業軍人の経歴をもたない者とする説、現に自衛官でない者とする説などがありますが、少なくとも現職の自衛官が該当しないことは争いがありません。文民統制は、軍事力を政治の統制下に置くための原則であり、9条のもとで自衛隊が置かれている現状では、この要件が実質的な意味をもちます。制定当初は職業軍人の経歴をもつ者を念頭に置いた規定と理解されていました。

日本国憲法 第67条第1項内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。
試験ではこう問われる
- 内閣総理大臣は国会議員の中から国会の議決で指名され(67条1項)、国会議員であることは在任中も要件である
- 指名で両院の議決が異なり両院協議会でも一致しないときや、参議院が10日以内に議決しないときは、再議決なしに衆議院の議決が国会の議決となる(67条2項。R3 問3 ウ ×)
- 内閣総理大臣が国務大臣を任命し、その過半数は国会議員の中から選ばなければならない(68条1項。R3 問3 エ ○)
- 国務大臣の任免には天皇の認証が行われるが(7条5号)、認証は効力要件ではない
- 国会議員から選ばれた国務大臣が議員の地位を失っても、当然には大臣の地位を失わない
- 内閣総理大臣その他の国務大臣は文民でなければならず(66条2項)、現職の自衛官は文民に当たらない

