条件関係(択一的競合・仮定的因果経過)じょうけんかんけい
条件関係とは、その行為がなければその結果は発生しなかったであろうという、行為と結果との間の事実的なつながりです。刑法上の因果関係を認めるための前提となり、複数の行為がそれぞれ単独でも同じ結果を発生させることができた択一的競合や、行為者の行為がなくても別の原因で同じ結果が生じたであろう仮定的因果経過の場面で、その判断の仕方が問題になります。
ドミノを一枚倒したら最後の一枚まで倒れたとき、最初の一枚を倒さなければ最後の一枚は倒れなかったはずです。刑法で「この行為のせいでこの結果が起きた」というための出発点も同じで、その行為を頭の中で取り除いてみて、結果がなくなるかを確かめます。行為と無関係に起きた結果についてまで責任を負わせるわけにはいかないからです。もっとも、取り除いても結果が残るように見える場面があり、そこで何をどう取り除くのかが問われます。

条件関係は、その行為がなければその結果は発生しなかったといえる場合に認められ、因果関係の前提になります
条件関係は「あれなければこれなし」の公式で判断します。実行行為を仮定的に取り除き、それでも結果が発生したかを問うもので、行為と結果の事実的なつながりを確かめる作業です。ここでいう行為は、結果発生の現実的危険性のある実行行為でなければなりません。条件関係は因果関係の前提であって、それだけで因果関係が肯定されるわけではありません。搬送中の救急車が竜巻に巻き上げられて被害者が死亡した事例で、「AがBに負わせた傷害ではBは死亡しなかったと認められた一方で、BはAに傷害を負わせられなければ救急車で搬送されることも、竜巻が発生した場所に赴くこともなかったであろうと認められた。この場合、Aの暴行とBの死亡との間には因果関係が認められる」という肢(R4 問24 エ)は誤りです。暴行と死亡との間に条件関係はあっても、それだけで因果関係は認められないからです。夜間潜水の講習中に受講生が死亡した事案の判例も、条件関係が認められることだけで因果関係を肯定したものではありません。判旨は、被告人の行為の危険性と、介在した指導補助者や受講生の行動が被告人の行為から誘発されたものであることを検討しており、条件関係だけで結論を出していないからです。
結果は日時と原因まで具体的に捉えるので、死期を早めた行為にも条件関係が認められます
公式でいう「結果」は、ある日時における、ある原因による死亡というように、個別具体的に捉えます。そう捉えないと、放っておいても近く死亡する人を殺害した行為について、その行為がなくても死亡したのだから条件関係がないということになってしまいます。甲に頭部を殴打されて意識不明のまま路上に放置されたVを乙が自動車でひき、Vが内臓破裂で即死した事例では、ひかれなくても翌日には脳挫傷で死亡していたとしても、乙の行為がなければその時点での内臓破裂による死亡はなかったので、乙の行為とVの死亡との間に条件関係が認められます。暴行によって1日後には死亡する傷害を負った被害者が、搬送中の救急車の事故により1時間後に内臓破裂で死亡した事例でも、暴行がなければ救急車で搬送されることも事故に遭うこともなかったので、暴行と死亡との間に条件関係があります。この事例について、予測不可能な介在事情によって死期が早められたとしても条件関係があれば因果関係を認めるという見解からは、因果関係が認められるという結論になります。死期が早められなかったときに限って因果関係を認める見解からは、死期が早められているので否定されます。死因が同一であるときに因果関係を認める見解からも、脳内出血ではなく内臓破裂で死亡しているので否定されます。

行為を取り除くだけで、現実に存在しなかった事実を付け加えて判断することはできません
条件関係の判断では、問題の行為を取り除いて考えるだけで、現実には起きなかった事実を付け加えてはなりません。死刑の執行の直前に、執行官を押しのけて別人が執行のボタンを押したという例では、その人が押さなくても執行官が押したであろうという事実を付け加えると、条件関係が否定されてしまいます。しかし、執行官が押したという事実は現実には存在しないので、これを付け加えずに判断し、ボタンを押した行為と死亡との間に条件関係を認めます。このように、行為者の行為がなくても別の原因で同じ結果が生じたであろうという場合を、仮定的因果経過といいます。付け加えが許されるのは不作為犯の場合です。不作為は期待された作為をしないことですから、期待された作為をしていれば結果が発生しなかったかという形で判断します。最決平成元年12月15日は、直ちに救急医療を要請していれば十中八九救命が可能であったとして、放置と死亡の間の因果関係を認めました。
別の原因が先に結果を発生させたときは、条件関係そのものが否定されます
致死量の毒薬を飲ませたが、その毒薬が効く前に、事情を知らない第三者が被害者を出刃包丁で刺して失血死させたという事例では、毒薬を飲ませた行為を取り除いても、刺されたことによる失血死という結果はなくなりません。したがって、毒薬を飲ませた行為と死亡との間に因果関係は認められません。このように、行為者の行為と無関係な事情によって結果が発生し、条件関係が否定される場合を、因果関係の断絶といいます。毒薬を飲ませた者には殺人未遂罪が成立するにとどまります。これと区別されるのが因果関係の中断で、条件関係は存在するのに、途中に一定の事情が介在したことを理由に因果関係を否定しようとする考え方です。条件関係があれば因果関係を認める条件説の中で、結論の不都合を避けるために主張されましたが、存在する因果関係が途中でなくなるという説明には無理があると批判されています。
択一的競合では公式どおりだと条件関係が否定されるので、公式を修正して条件関係を認めます
択一的競合とは、複数の独立した行為が競合して結果を発生させたが、それぞれが単独でも同じ結果を発生させることができた場合をいいます。意思の連絡のない二人が、同じ人のグラスにそれぞれ致死量の毒を入れ、被害者が死亡した例がこれに当たります。毒の量が増えても死亡の時期が変わらなかったとすると、一方の行為を取り除いても他方の毒で同じ結果が発生するので、公式どおりに当てはめるとどちらの行為にも条件関係がないことになります。他方で、二人がそれぞれ致死量の半分の毒を入れ、合わさって初めて致死量になった場合を重畳的因果関係といい、一方を取り除けば結果が発生しないので条件関係が認められます。少ない量を入れた方に条件関係があり、致死量を入れた方にないのは不均衡です。そこで従来の通説は、いくつかの行為を択一的に取り除くと結果が発生するが、全部を取り除くと結果が発生しない場合には、そのいずれの行為にも条件関係を認めるという形に公式を修正します。重畳的因果関係の場面では、他人Bが致死量に満たない毒を入れたのを知って、それと併せて致死量となる量の毒をAが殺意をもって入れ、被害者Vがそれを飲んで死亡した場合、Aには殺人既遂罪の単独正犯が成立します。Aの行為がなければVは死亡せず、AとBの間に意思の連絡がないので共同正犯にもなりません。
- 重畳的因果関係二人が致死量の半分ずつを入れた。一方を取り除けば結果は発生しないので、公式どおり条件関係あり
- 択一的競合二人がそれぞれ致死量を入れた。一方を取り除いても結果が発生するが、公式を修正していずれにも条件関係を認める
- 仮定的因果経過行為者がしなくても別の者が同じ結果を生じさせたであろう場合。現実に存在しなかった事実は付け加えず、条件関係あり
- 因果関係の断絶毒薬が効く前に第三者が刺して失血死させた。毒薬を飲ませた行為を取り除いても結果は残り、条件関係なし

試験ではこう問われる
- 条件関係は、その行為がなければその結果は発生しなかったといえる場合に認められる
- 条件関係があるだけでは因果関係は認められず、傷害を負った被害者が搬送中の救急車ごと竜巻に巻き上げられて死亡した場合、因果関係は否定される(R4 問24 エ ×)
- 結果は具体的に捉えるので、放置しても翌日には死亡していた被害者をひいて即死させた行為にも条件関係がある
- 他人が入れた致死量に満たない毒を知って、併せて致死量となる毒を殺意をもって入れた者には、意思の連絡がなくても殺人既遂罪の単独正犯が成立する
- 致死量の毒薬が効く前に第三者が刺して失血死させた場合、毒薬を飲ませた行為と死亡との間の因果関係は認められない(因果関係の断絶)

