新株予約権の行使と自己新株予約権しんかぶよやくけんのこうしとじこしんかぶよやくけん
新株予約権の行使とは、新株予約権者が行使する新株予約権の内容と数・行使する日を明らかにして権利を行使し、その日に行使に際して出資される財産の価額の全額を払い込み又は給付して、その日に目的である株式の株主となることです(会社法280条1項・281条・282条1項)。自己新株予約権とは、会社が有する自己の新株予約権のことで、会社はこれを取得し消却することはできますが、行使することはできません(255条1項・276条・280条6項)。
新株予約権を持つ人が「この権利を使って株式をもらいます」と会社に告げ、決められた金額を払い込むのが新株予約権の行使です。ここで初めて会社に出資が入り、行使した日に株主になります。株式の対価になるので、この払込みは募集株式と同じ厳しさで、相殺はできず、現物なら検査役の調査が要ります。一方で、会社が自分の新株予約権を持つことは禁じられていませんが、自分で行使すると会社の資金で自分の株式を発行することになるので、行使だけはできません。使われないまま行使期間が過ぎた新株予約権は、手続なしに消えます。

行使に際しての出資は金銭以外の財産でもよく、行使した日に株主になります
新株予約権の行使は、行使に係る新株予約権の内容と数、行使する日を明らかにしてします(280条1項)。金銭を出資の目的とするときは、新株予約権者は行使する日に、会社が定めた銀行等の払込みの取扱いの場所で、行使に際して出資される財産の価額(236条1項2号)の全額を払い込みます(281条1項)。新株予約権の内容として金銭以外の財産を出資の目的とする旨とその内容・価額を定めることもでき(236条1項3号)、このときは行使する日にその財産を給付し、価額が足りなければ差額を金銭で払い込みます(281条2項)。この払込み又は給付の債務は会社に対する債権と相殺できません(281条3項)。新株予約権を行使した新株予約権者は、行使した日に、目的である株式の株主になります(282条1項)。交付する株式の数に1株に満たない端数があるときは、切り捨てる旨の定めがなければ、会社はその端数に応じた金銭を交付します(283条)。行使に伴って会社が新たに株式を発行すれば、払い込まれた財産の額を元に資本金の額が増え(445条1項)、発行済株式の総数も増えるので、資本金の額と発行済株式の総数のいずれにも変化があり、行使に際して金銭が払い込まれるので資金調達の方法にもなります。
現物出資財産の価額が著しく不足するときは不足額を支払いますが、善意無重過失なら行使の意思表示を取り消せます
金銭以外の財産を出資の目的とする新株予約権が行使されたときは、会社は給付の後遅滞なく、現物出資財産の価額を調査させるため裁判所に検査役の選任を申し立てなければなりません(284条1項)。募集株式と同じく、交付する株式の総数が発行済株式の総数の10分の1を超えない場合、価額の総額が500万円を超えない場合、市場価格のある有価証券、弁護士等の証明(不動産は鑑定評価も)、弁済期の到来した会社に対する金銭債権の場合は調査が要りません(284条9項)。株主となった時における現物出資財産の価額が定められた価額に著しく不足するときは、新株予約権を行使した者は会社に不足額を支払う義務を負います(285条1項3号)。ただし、著しく不足することについて善意でかつ重大な過失がないときは、新株予約権の行使に係る意思表示を取り消すことができます(285条2項)。募集に関する職務を行った業務執行取締役や議案を提案した取締役、証明者も不足額の支払義務を負いますが、検査役の調査を経た場合や注意を怠らなかったことを証明した場合は免れます(286条)。株主総会の委任を受けて取締役会が定めた行使条件を取締役会が後から変更することは、細目的な変更を除いて許されず、変更後の条件による行使に基づく株式の発行は、公開会社でない会社では無効原因になります(最判平成24年4月24日)。
会社は自己の新株予約権を取得できますが、行使することはできません
自己株式の取得は155条に列挙された場合に限られ財源規制もありますが、会社が自己の新株予約権を取得することには、このような制限がありません。新株予約権の内容として取得条項を定めれば(236条1項7号)、会社は一定の事由が生じた日に取得条項付新株予約権を取得し(275条1項)、取得する日を会社が別に定める場合は株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の決議でその日を定めて2週間前までに通知又は公告します(273条)。このほか、新株予約権者との合意による取得や、組織再編に伴う取得もできます。取得条項付新株予約権の取得の対価として新株予約権者に金銭を交付するときも、取得条項付株式の取得(170条5項・461条1項4号)と違って分配可能額による制限はありません。新株予約権の取得は株主への会社財産の分配ではないからです。取得した自己新株予約権を会社が行使することはできません(280条6項)。行使を認めると、会社の資金で自分の株式を発行する仮装の出資になるからです。会社が取得した新株予約権は自己新株予約権として残り、取得によって消滅するわけではないので、「株式会社がその発行する新株予約権を取得したときは、当該新株予約権は、消滅する」という肢(R7 問29 ウ)は誤りです。会社は自己新株予約権を消却でき、取締役会設置会社ではその内容と数を取締役会の決議で定めます(276条)。

行使期間が経過した新株予約権は消却の手続なしに消滅し、併合・分割の制度はなく、貸借対照表では純資産の部に計上します
新株予約権者がその新株予約権を行使することができなくなったときは、その新株予約権は消滅します(287条)。行使期間(236条1項4号)が経過した新株予約権はもう行使できないので、消却の手続を経ることなく消滅します。消却(276条)は会社が自己新株予約権についてするもので、期間の経過による消滅とは別です。株式には併合(180条)と分割(183条)の制度がありますが、新株予約権にはこれに当たる制度を定めた規定がありません。会社が発行した新株予約権は、返済義務のある負債ではなく、貸借対照表の純資産の部に、株主資本とは別の区分として計上します(会社計算規則76条1項1号)。
会社法 第282条第1項新株予約権を行使した新株予約権者は、当該新株予約権を行使した日に、当該新株予約権の目的である株式の株主となる。
会社法 第280条第6項株式会社は、自己新株予約権を行使することができない。
会社法 第287条第二百七十六条第一項の場合のほか、新株予約権者がその有する新株予約権を行使することができなくなったときは、当該新株予約権は、消滅する。
試験ではこう問われる
- 行使に際しての出資は金銭以外の財産でもよく、払込み又は給付の債務と会社に対する債権は相殺できない(236条1項3号・281条)
- 新株予約権を行使した日に株主になる(282条1項)
- 現物出資財産の価額が著しく不足するときは不足額を支払うが、善意無重過失なら行使の意思表示を取り消せる(285条)
- 会社は自己の新株予約権を取得でき、取得しても消滅せず自己新株予約権として残るが、行使はできない(280条6項。R7 問29 ウ ×)
- 新株予約権者も新株予約権の発行の無効の訴えを提起できる(828条2項4号。R7 問29 オ ×)
- 行使による変更の登記は毎月末日現在で足り、資本金として計上しない額を株主総会で定めた公開会社でない会社ではその議事録を添付する(915条3項1号。R5 午後 問30 オ ○)
- 取締役会設置会社でない会社が自己新株予約権を消却したときの変更の登記に、株主総会の議事録は要らない(276条。R7 午後 問31 イ ×)

