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自己株式の取得(取得手続と財源規制)じこかぶしきのしゅとく

会社法・商法 第4章 株式の譲渡と管理 過去問で4肢

自己株式の取得とは、株式会社が自分の発行した株式を取得することで、会社法155条に掲げる場合に限って認められます。株主との合意による有償の取得にはあらかじめ株主総会の決議で取得する株式の数・対価の内容と総額・期間を定める必要があり(156条)、株主に交付する対価の帳簿価額の総額は分配可能額を超えてはなりません(461条1項)。

会社が自分の株式を株主から買い戻すのが自己株式の取得です。会社のお金が株主に払い戻されるので、債権者から見れば配当と同じく会社財産が減ります。また、経営者が会社のお金で都合のよい株主だけから高く買い取れば、他の株主との不公平が生じます。そこで会社法は、取得できる場合を限定し、株主との合意で買うときは株主総会の決議と株主全員への申込みの機会を求め、特定の株主から買うときは他の株主にも売主に加わる道を開き、対価は配当と同じく分配可能額の範囲に抑えています。子会社が親会社の株式を買うことも原則として禁止されています。

株主総会の会場の場面。先生が議長役(札「議長」)で演台に立ち、演台の前に札「議案 特定の株主Aから自己株式を取得する」。客席に男性株主が4人座り、先頭のA(札「特定の株主A」)と2人目のB(札「売主に自己を加えるよう請求した株主B」)の2人

株主との合意による取得は株主総会の決議で枠を定め、株主全員に申込みの機会を与えます

会社が株主との合意により有償で自己株式を取得するには、あらかじめ株主総会の普通決議で、取得する株式の数(種類株式発行会社では種類と種類ごとの数)、対価の内容と総額、取得できる期間(1年以内)を定めます(156条1項)。これは有償で取得する場合の手続で、「株式会社は、当該株式会社の株式を無償で取得するには、あらかじめ、株主総会の決議によって、取得する株式の数を定めなければならない」という肢(R8 問29 イ)は誤りです。種類ごとの数を定めるので、内容の異なる2以上の種類の株式を発行している会社は、そのうち1つの種類の株式だけを取得できます。実際に取得するときは、その都度、取得する数・1株当たりの対価・総額・申込みの期日を定め(取締役会設置会社では取締役会の決議。157条)、株主全員に通知して(公開会社では公告で代えられます。158条)、申し込んだ株主から按分で取得します(159条)。取得しても既に発行された株式を会社が持つだけなので、資本金の額も発行済株式の総数も変わりません。

特定の株主から取得する議案では、その株主も、売主に自己を加えるよう請求した株主も議決権を行使できません

会社は、156条1項の決議と併せて、特定の株主にだけ通知をして取得する旨を株主総会の特別決議で定めることができます(160条1項・309条2項2号)。会社の財産で特定の株主だけが株式を売れるのは不公平なので、会社は他の株主に、自分も特定の株主に加えた議案にするよう請求できることを通知しなければならず(同条2項)、株主はその請求ができます(同条3項。売主追加請求権)。この株主総会では、特定の株主は議決権を行使できず(同条4項)、売主に自己を加えるよう請求した株主も特定の株主に加わるので同じく議決権を行使できません。特定の株主以外の株主の全部が議決権を行使できない場合だけ例外です。市場価格のある株式を市場価格以下で取得する場合(161条)、公開会社でない会社が相続人等から議決権を行使する前に取得する場合(162条)には売主追加請求権が無く、定款で売主追加請求権を外すこともできますが、株式の発行後にその定めを設けるには株主全員の同意が要ります(164条)。子会社からの取得は取締役会設置会社では取締役会の決議で足ります(163条)。

取締役会設置会社は、市場取引による取得を取締役会の決議で決められる旨を定款で定められます

市場での取引や公開買付けによる取得は、誰でも売る機会があるので株主間の公平の問題が小さく、157条から160条までの手続は要りません(165条1項)。取締役会設置会社は、市場取引等による自己株式の取得を取締役会の決議で定めることができる旨を定款で定めることができ(同条2項)、この定めがあれば156条1項の決定を株主総会ではなく取締役会で行えます(同条3項)。機動的な取得を認めたものです。

教室の場面。先生が黒板の前に立ち、黒板に天秤の絵を描く。左の皿に札「自己株式の取得の対価」、右の皿に札「分配可能額」。天秤の下に2列の表。左の列の見出し「規制あり(461条1項)」と文字「株主との合意による取得/取得請求権付・取得条項付・全

取得の対価は分配可能額を超えられませんが、単元未満株式の買取りや反対株主の買取請求などには財源規制がかかりません

自己株式の取得は株主への会社財産の払戻しなので、株主との合意による取得、取得請求権付株式・取得条項付株式・全部取得条項付種類株式の取得、譲渡等承認請求に伴う買取り、相続人等に対する売渡請求による買取りなどで株主に交付する金銭等の帳簿価額の総額は、効力発生日の分配可能額を超えてはなりません(461条1項各号)。会社債権者の保護を目的とする規制です。これに対し、単元未満株式の買取りの請求(192条1項)に応じる買取り、他の会社の事業の全部を譲り受けることによる取得、株式交換の反対株主の買取請求に応じる買取りで交付する金銭は、分配可能額の規制を受けません。単元未満株主や反対株主の買取請求は株主を守るために会社が応じなければならないものだからです。事業の全部の譲渡に反対する株主の買取請求(469条1項)も同じです。他の会社の事業の全部を譲り受ける場合には、譲り受ける資産に自社の株式が含まれていれば、取締役はその株式に関する事項を株主総会で説明しなければなりません(467条2項)。「株式会社が他の法人の事業の全部の譲受けをする場合において,譲り受ける資産に当該株式会社の株式が含まれるときは,当該株式会社の取締役は,当該事業の全部の譲受けに係る契約の承認を受ける株主総会において,当該株式に関する事項を説明しなければならない」という肢(R3 問32 オ)は正しいです。ただし、定款変更などに反対する株主の買取請求(116条1項)や株式の併合の端数の買取請求(182条の4)に応じて支払った金銭が分配可能額を超えたときは、業務執行者が超過額を支払う義務を負います(464条)。財源規制に違反して取得したときは、交付を受けた株主と業務執行者が連帯して帳簿価額に相当する金銭を支払う義務を負い(462条)、取得した事業年度に欠損が生じたときは業務執行者が欠損填補責任を負います(465条1項)。

自己株式の取得と分配可能額の規制

  • 規制あり(461条1項): 株主との合意による取得、取得請求権付株式・取得条項付株式・全部取得条項付種類株式の取得、譲渡等承認請求に伴う買取り、相続人等への売渡請求による買取り、所在不明株主の株式の買取り、端数の買取り、剰余金の配当
  • 規制なし: 単元未満株式の買取りの請求(192条)、反対株主の株式買取請求(116条・469条・785条など)、他の会社の事業の全部の譲受けによる取得、合併・会社分割による承継
  • 違反の責任: 交付を受けた株主と業務執行者の支払義務(462条)、買取請求に応じた超過額の支払義務(464条)、欠損填補責任(465条1項)

子会社は親会社の株式を原則として取得できず、合併や会社分割で承継する場合などが例外です

子会社が親会社株式を取得することは、実質的に親会社が自己株式を取得するのと同じ弊害(出資の払戻し、支配の空洞化)を生むので、原則として禁止されています(135条1項)。例外は、他の会社の事業の全部を譲り受ける場合にその会社の有する親会社株式を譲り受けるとき、合併後消滅する会社から承継するとき、吸収分割・新設分割により他の会社から承継するときなどに限られ(同条2項)、取得した親会社株式は相当の時期に処分しなければなりません(同条3項)。法定の例外に無い場合に、株主総会の決議で親会社株式を取得できる旨を定款で定めることもできません。例外として適法に保有している親会社株式は、親会社から見れば別の法人である株主の株式なので、子会社は剰余金の配当を受けることができます。

会社法 第156条第1項

株式会社が株主との合意により当該株式会社の株式を有償で取得するには、あらかじめ、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。ただし、第三号の期間は、一年を超えることができない。
一 取得する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)
二 株式を取得するのと引換えに交付する金銭等(当該株式会社の株式等を除く。以下この款において同じ。)の内容及びその総額
三 株式を取得することができる期間

会社法 第160条第4項

第一項の特定の株主は、第百五十六条第一項の株主総会において議決権を行使することができない。ただし、第一項の特定の株主以外の株主の全部が当該株主総会において議決権を行使することができない場合は、この限りでない。

会社法 第135条第1項

子会社は、その親会社である株式会社の株式(以下この条において「親会社株式」という。)を取得してはならない。

試験ではこう問われる

  1. 株主との合意による有償の取得は株主総会の決議で数・対価の総額・1年以内の期間を定めるが、無償で取得するにはこの決議は要らない(156条1項。R8 問29 イ ×)
  2. 特定の株主から取得する議案では、特定の株主も、自己を加えるよう請求した株主も議決権を行使できない(160条4項)
  3. 取締役会設置会社は、市場取引等による取得を取締役会の決議で定められる旨を定款で定められる(165条2項)
  4. 取得の対価は分配可能額を超えられないが、単元未満株式の買取り、反対株主の買取請求、事業の全部の譲受けによる取得には規制が無い(461条1項)
  5. 事業の全部の譲受けで譲り受ける資産に自社の株式が含まれるときは、取締役は株主総会でその株式に関する事項を説明する(467条2項。R3 問32 オ ○)
  6. 子会社は親会社株式を取得できないが、合併・会社分割・事業の全部の譲受けによる承継は例外で、相当の時期に処分する(135条)
  7. 自己株式を取得しても、資本金の額も発行済株式の総数も変わらない

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