設立の無効(設立無効の訴え)せつりつのむこう
設立の無効とは、株式会社の設立の手続に重大な瑕疵があるときに、会社の成立の日から2年以内に、株主・取締役・監査役・清算人などが会社を被告として提起する設立の無効の訴えによってのみ主張できる無効です(会社法828条1項1号・2項1号、834条1号)。認容判決は第三者にも効力が及びますが、遡及せず、会社は清算に入ります(838条・839条・475条2号)。
定款に書くべきことが抜けていたり、認証を受けていなかったりと、会社の作り方に重大な間違いがあったとします。それでも登記がされて会社として動き出し、取引先も従業員もできています。ここで誰でもいつでも「この会社は最初から無かった」と言えることにすると、会社と関わったすべての人の法律関係がひっくり返ります。そこで会社法は、設立の無効は裁判でしか主張できないことにし、訴えられる人と期間を絞り、無効の判決が出ても過去には遡らず、そこから会社をたたむ手続(清算)に入ることにしました。

設立の無効は、成立の日から2年以内に、株主・取締役・監査役・清算人などが訴えによってのみ主張できます
会社の設立の無効は、会社の成立の日から2年以内に、訴えをもってのみ主張することができます(828条1項1号)。訴えを提起できるのは、設立する株式会社の株主等、すなわち株主・取締役・清算人(監査役設置会社では監査役も、指名委員会等設置会社では執行役も)に限られます(同条2項1号)。会社債権者は含まれません。被告は設立した会社です(834条1号)。株主が提起するときは、裁判所は被告の申立てにより担保の提供を命じることができます(836条1項)。
- 提訴期間会社の成立の日から2年以内(828条1項1号)
- 原告株主・取締役・清算人。監査役設置会社では監査役、指名委員会等設置会社では執行役も(828条2項1号)。会社債権者は不可
- 被告設立する会社(834条1号)
- 判決の効力認容判決は第三者にも及ぶ(838条)。遡及せず将来に向かって効力を失う(839条)。会社は清算に入る(475条2号)
無効の判決が確定しても遡及せず、会社は当初から無かったことにはならず、清算に入ります
設立の無効の訴えに係る請求を認容する確定判決は、第三者に対してもその効力を有します(838条)。しかし、無効とされた設立は将来に向かって効力を失うだけで(839条)、それまでに会社がした取引や発行した株式の効力は影響を受けません。判決が確定すると、会社は清算をしなければならず(475条2号)、清算株式会社は、清算の目的の範囲内において、清算が結了するまではなお存続するものとみなされます(476条)。「株式会社の設立を無効とする判決が確定したときは,将来に向かって設立の効力が失われ,その株式会社について清算が開始される」という肢(R3 問27 オ)は正しいです。認容判決が第三者にも及ぶ以上、当事者だけの合意で結論を決めることはできないので、被告である会社は請求を認諾することができません。

定款の絶対的記載事項の欠缺や認証の欠如は無効原因であって、会社が不存在になるわけではありません
無効原因は条文に列挙されていませんが、定款の絶対的記載事項(27条)が欠けていること、定款が公証人の認証(30条1項)を受けていないこと、設立時発行株式を1株も引き受けていない発起人がいること(25条2項違反)、創立総会が開かれていないことなど、設立の手続の重大な瑕疵がこれに当たります。瑕疵が重大でも、設立の登記がされて会社が存在している以上、無効は設立の無効の訴えによってしか主張できず、会社が不存在になって誰でもいつでも主張できるわけではありません。発起人の1人が出資の履行をせずに株主となる権利を全部失った場合は、その発起人が1株も引き受けないことになるので、他の発起人の出資で定款の最低額を満たしていても無効事由になります。
会社法 第828条第1項第1号会社の設立 会社の成立の日から二年以内
会社法 第839条(無効又は取消しの判決の効力)
会社の組織に関する訴え(第八百三十四条第一号から第十二号の二まで、第十八号及び第十九号に掲げる訴えに限る。)に係る請求を認容する判決が確定したときは、当該判決において無効とされ、又は取り消された行為(当該行為によって会社が設立された場合にあっては当該設立を含み、当該行為に際して株式又は新株予約権が交付された場合にあっては当該株式又は新株予約権を含む。)は、将来に向かってその効力を失う。
試験ではこう問われる
- 設立の無効は、会社の成立の日から2年以内に、株主・取締役・監査役・清算人などの株主等だけが訴えで主張でき、会社債権者は提起できない(828条1項1号・2項1号)
- 被告は会社で、認容判決は第三者にも及ぶので、被告は請求を認諾できない(834条1号・838条)
- 設立を無効とする判決が確定すると、設立は将来に向かって効力を失い、会社について清算が開始される(839条・475条2号。R3 問27 オ ○)
- 清算株式会社は、清算の目的の範囲内で清算結了まで存続するものとみなされる(476条)
- 設立無効の判決が確定しても、発起人の会社に対する任務懈怠責任は消えない(53条1項・839条。R6 問27 オ ×)
- 定款の絶対的記載事項の欠缺や認証の欠如は無効原因であって、会社が不存在になり誰でもいつでも主張できるわけではない
- 発起人の1人が株主となる権利を全部失うと、他の発起人の出資で最低額を満たしていても無効事由になる(25条2項)

