決議取消しの訴えの手続(原告・被告・提訴期間・取消事由の追加)けつぎとりけしのうったえのてつづき
決議取消しの訴えとは、株主等が、取消事由のある株主総会の決議の日から3か月以内に、会社を被告として、訴えをもって決議の取消しを請求する形成の訴えです(会社法831条1項・834条17号)。原告は株主・取締役・監査役・清算人などの株主等と、決議の取消しによって株主や取締役となる者で、認容判決には対世効があります(838条)。
手続に問題のある決議は、取り消されるまではいちおう有効で、会社はそれを前提に動きます。そこで会社法は、取消しは裁判でしか主張できず、決議から3か月以内に起こさなければならず、相手は会社だけ、勝てば判決の効力は世の中全部に及ぶという仕組みにしました。一つの決議の効力が人によって違っては困るからです。3か月で争いを打ち切る趣旨から、裁判の途中で新しい取消理由を後出しすることも許されません。一方で、原告の株主が亡くなれば相続人が引き継ぎ、議案に賛成した株主も、落選した取締役も訴えられます。

取消しは訴えによってのみ主張でき、提訴期間は決議の日から3か月で、被告は会社だけです
取消事由のある決議は、取り消されるまでは一応有効なものとして扱われ、株主等は決議の日から3か月以内に、訴えをもって取消しを請求します(831条1項)。判決によって初めて決議の効力が失われる形成の訴えなので、訴え以外の方法、たとえば他の訴訟の抗弁として取消しを主張することはできません。「株主総会決議に取消事由がある場合には,訴え以外の方法によって決議を取り消すことができる」という記述と、被告は会社です(834条17号)。取締役を選任した決議の取消しの訴えでも、その取締役を被告にする必要はなく、被告にすることもできません。「株主総会における取締役選任決議の取消しの訴えは,会社及び取締役を被告としなければならない」という記述と、管轄は会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所に専属し(835条1項)、会社は原告の株主の訴えが悪意によることを疎明して担保の提供を申し立てることができます(836条)。原告は株主等(株主・取締役・監査役・清算人など)で、議案に賛成した株主も提起できます。決議取消しの訴えは原告個人の救済だけでなく瑕疵のある決議を是正する制度だからです。決議の取消しによって株主又は取締役などになる者も提起できます(831条1項柱書後段)。解任された取締役や、任期満了で再任されなかった取締役は、選任決議が取り消されれば権利義務を有する者(346条1項)になるので、原告になれます。「当該決議の取消しにより取締役となる者は,…訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる」という記述は正しく、
提訴期間の経過後に新たな取消事由を追加することはできませんが、無効確認の訴えで主張した瑕疵が取消原因なら取消請求の追加は適法です
判例は、決議取消しの訴えを提起した後、提訴期間の経過後に新たな取消事由を追加主張することは許されないとしています(最判昭和51年12月24日)。取消事由のある決議も取り消されるまでは一応有効で、期間制限は決議の効力を早期に確定させるためのものなので、期間後の追加を許せば、その事由についてはいつまでも決議の効力が争われることになるからです。「決議の日から3か月を経過した後に新たな取消事由を追加主張することは,許されない」という記述は正しく、他方、決議無効確認の訴えにおいて無効原因として主張された瑕疵が取消原因に当たり、しかも取消しの訴えの原告適格・出訴期間などの要件を満たしているときは、期間経過後に取消請求を追加する訴えの変更がされても、無効確認の訴えの提起時から取消しの訴えが提起されていたものと同様に扱って適法とするのが判例です(最判昭和54年11月16日)。取消しと無効確認の区別は瑕疵の程度に応じて提訴要件を変えたものにすぎず、同じ瑕疵をすでに争っていた以上、法的安定を害さないからです。

原告の株主が死亡しても相続人が地位を承継し、選任された取締役は共同訴訟参加はできませんが補助参加はできます
決議取消しの訴えの原告である株主が訴訟の係属中に死亡した場合、判例は、取消請求権などの共益権は自益権と不可分に株主の地位に含まれるとして、相続により株式を取得した相続人が原告の地位を承継するとしています(最大判昭和45年7月15日)。訴訟は終了しません。「訴訟の係属中に原告である株主が死亡した場合には,訴訟は,これにより終了する」という記述と、「相続により株式を取得した相続人はその訴訟の原告たる地位を承継せず,その訴訟は当然に終了する」という記述は誤りで、取締役選任決議の取消しの訴えで、その決議により選任された取締役は被告適格を持たないので、会社側の共同訴訟人として共同訴訟参加(民事訴訟法52条)をすることはできません(最判昭和36年11月24日)。もっとも、判決の効力を受ける立場にあるので、会社を補助するための補助参加はできます。「その決議により選任された取締役は,会社の共同訴訟人としてその訴訟に参加することができる」という記述は誤りで、同一の請求を目的とする訴えが複数係属するときは弁論と裁判を併合しなければなりませんが(837条)、同じ総会でも取締役選任決議と計算書類承認決議の取消しの訴えは同一の請求ではないので、併合の必要はありません。訴えの取下げに総株主の同意を要する規定はありません。
議案を否決する決議の取消しを請求する訴えは不適法です
判例は、会社法が決議取消しの訴えについて3か月の提訴期間、被告、認容判決の対世効などの規定を置いているのは、株主総会の決議によって新たな法律関係が生ずることを前提とするものであるところ、一般に、ある議案を否決する決議によって新たな法律関係が生ずることはなく、その決議を取り消すことによって新たな法律関係が生ずるものでもないから、議案を否決する決議の取消しを請求する訴えは不適法であるとし、議案が役員の解任であっても異ならないとしました(最判平成28年3月4日)。この判決の論拠としてふさわしいのは、3か月の提訴期間で法律関係の早期安定を図っていることと、認容判決の対世効が決議による新たな法律関係を前提としていることです。決議が成立していないから特段の事情がない限り訴えの利益を欠くという理由付けは、判決の論拠ではありません。株主提案の再提出制限(304条ただし書)や役員解任の訴え(854条1項)の規定も、この判決の論拠には当たりません。解任議案が否決された株主は、要件を満たせば役員解任の訴え(854条1項)によります。
会社法 第831条第1項次の各号に掲げる場合には、株主等(当該各号の株主総会等が創立総会又は種類創立総会である場合にあっては、株主等、設立時株主、設立時取締役又は設立時監査役)は、株主総会等の決議の日から三箇月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる。当該決議の取消しにより株主(当該決議が創立総会の決議である場合にあっては、設立時株主)又は取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役。以下この項において同じ。)、監査役若しくは清算人(当該決議が株主総会又は種類株主総会の決議である場合にあっては第三百四十六条第一項(第四百七十九条第四項において準用する場合を含む。)の規定により取締役、監査役又は清算人としての権利義務を有する者を含み、当該決議が創立総会又は種類創立総会の決議である場合にあっては設立時取締役(設立しようとする株式会社が監査等委員会設置会社である場合にあっては、設立時監査等委員である設立時取締役又はそれ以外の設立時取締役)又は設立時監査役を含む。)となる者も、同様とする。
一 株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき。
二 株主総会等の決議の内容が定款に違反するとき。
三 株主総会等の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき。
会社法 第834条第1項第17号株主総会等の決議の取消しの訴え 当該株式会社
会社法 第838条(認容判決の効力が及ぶ者の範囲)
会社の組織に関する訴えに係る請求を認容する確定判決は、第三者に対してもその効力を有する。
試験ではこう問われる
- 取消しは訴えによってのみ主張できる。提訴期間は決議の日から3か月(831条1項)
- 被告は会社だけ(834条17号)。選任された取締役を被告にしない
- 原告は株主等と、取消しにより株主・取締役などになる者。議案に賛成した株主も再任されなかった取締役も提起できる
- 期間経過後の新たな取消事由の追加は許されない(最判昭和51年12月24日)
- 無効確認の訴えで主張した瑕疵が取消原因で取消しの訴えの要件を満たしていれば、期間後の取消請求の追加も適法(最判昭和54年11月16日)
- 原告の株主が死亡しても訴訟は終了せず、相続人が原告の地位を承継する(最大判昭和45年7月15日)
- 選任された取締役は共同訴訟参加できない(最判昭和36年11月24日)が補助参加はできる
- 別々の決議の訴えを併合する必要はない(837条は同一の請求に限る)。取下げに総株主の同意は要らない
- 議案を否決する決議の取消しの訴えは不適法(最判平成28年3月4日)。論拠は3か月の提訴期間と認容判決の対世効

