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登記の推定力・公信力とうきのすいていりょく・こうしんりょく

不動産登記 第1章 登記の仕組みと申請の骨格 過去問で135肢

登記名義人は実体上も権利者だと推定される力が推定力、登記を信じて取引した者を登記どおりに保護する力が公信力で、不動産登記には推定力はあっても公信力がありません。登記を信じた買主が守られるかどうかが、民法94条2項の類推と合わせて問われます。

登記の推定力は、登記名義人がその登記どおりの権利を持つと一応推定される力で、判例が認める事実上の推定です。登記の公信力は、登記を信じて取引した者を登記が真実であったものとして保護する力ですが、民法は不動産登記にこの力を与えていません。動産では占有に民法188条の推定と192条の即時取得が結びつきますが、不動産の登記は推定にとどまり、無権利者から買った者は登記があっても所有権を取得できません。判例は民法94条2項を類推して、虚偽の登記を作出したり放置したりした真の権利者が善意の第三者に対抗できない場面を広げ、公信力の不在を部分的に補っています。肢で突かれるのは、推定力と公信力の違いと、94条2項の類推が及ぶ範囲です。

民法 第177条

(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

台帳の名義欄を見て家の模型を買おうとする男性と、本当の持ち主だと手を挙げる女性。職員は首をかしげる
登記名義人は権利者と推定されますが、不動産登記に公信力はなく、無権利者からは取得できません
推定は覆せる事実上のもの公信力なし、即時取得は動産だけ94条2項の類推で善意の第三者を保護

登記名義人は権利者だと一応推定されます

所有権の移転の登記があれば、登記名義人が所有権を取得していると推定され、争う側がその推定を覆す立証をします。推定は法律上の推定ではなく事実上の推定なので、反対の証拠が出れば覆ります。動産について占有者が行使する権利を適法と推定する民法188条と同じ働きを、不動産では登記が担うという整理が可能です。登記名義人の権利そのものを争う訴訟では、原告の側がこの推定を覆す立証を負う形になります。

登記には公信力がなく、無権利者からは取得できません

登記名義人が実は無権利者だったとき、その登記を信じて買った人は所有権を取得できません。民法177条は登記を対抗要件とするだけで、登記を真実とみなす効力は与えていないからです。動産の即時取得のように、取引の相手が権利者だと信じれば守られる仕組みが不動産にはなく、登記簿を見たことは保護の理由になりません。買主が守られるのは、民法94条2項の類推や取得時効のように登記とは別の根拠があるときに限られます。偽造の委任状で勝手にされた移転の登記や、無効な売買に基づく登記からの転得者は、原則として真の所有者からの抹消請求を拒めないというのが帰結です。

民法94条2項の類推で善意の第三者が守られます

通謀虚偽表示の無効は善意の第三者に対抗できないという民法94条2項を、判例は真の権利者が自ら虚偽の登記を作出した場合や、他人が作った虚偽の登記を知りながら放置した場合に類推します。真の所有者が不実の登記の出現に関与し、第三者がそれを信じて取引したときは、所有者は登記が無効だと主張できません。本人の関与の程度が小さい事案では、第三者に善意だけでなく無過失が求められ、民法110条の趣旨も合わせて使われます。公信力を正面から認めない代わりに、帰責性のある真の権利者を負けさせる形で登記への信頼を支えているわけです。

登記官は実体を審査せず、添付情報で権利の変動を判断します

登記官は登記原因証明情報や相続を証する情報などの書面で申請を審査し、登記記録に推定力はあっても登記官が真実を保証するわけではありません。相続の登記では戸籍の記載で相続人の範囲を示し、遺言で廃除の意思表示がされたときは、「Cが推定相続人から廃除された旨の記載のある戸籍の全部事項証明書を提供して,甲土地をB,D及びEの共有とする相続による所有権の移転の登記を申請することができる」という肢のとおりです。権利に関する登記の審査は提供された情報に基づく形式的なもので、申請の権限を疑う理由があれば24条の本人確認をしますが、実体と違う登記は後から抹消や更正で正す仕組みです。登記の信頼は登記官の審査と添付情報の真正さで支えられ、公信力という形では保障されていません。

民法 第94条

(虚偽表示)
相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

試験ではこう問われる

  1. 推定力と公信力はどう違うか(推定は覆せる事実上のもの、公信力は登記を真実として保護する力で不動産にはない)
  2. 無権利者の登記を信じて買った者は所有権を取得するか(取得しない。即時取得は動産だけ)
  3. 民法94条2項の類推が使われるのはどんなときか(真の権利者が虚偽の登記を作出・放置し、善意の第三者が取引したとき)
  4. 登記官は実体を審査するか(しない。添付情報で判断し、実体と違えば後から抹消や更正で正す)
不動産登記を肢別で解く

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