登記の抹消と回復(信託)しんたくのとうきのまっしょうとかいふく
不動産が信託財産に属しなくなったときにする信託の登記の抹消と、信託の併合・分割や固有財産との間の出入りで信託の登記を付け替える手続です。抹消の同時性と申請人、権利の変更の登記で誰が権利者・義務者になるか、誤って抹消された登記の回復が肢で突かれます。
信託の登記の抹消は、信託財産に属する不動産の権利が移転・変更・消滅によって信託財産に属しなくなったときに、信託の登記を消す登記です。不動産登記法104条1項により、権利の移転の登記・変更の登記または権利の登記の抹消の申請と同時にしなければならず、104条2項により受託者が単独で申請できます。信託の併合や分割で不動産が別の信託の信託財産になるときや、信託財産と受託者の固有財産の間を行き来するときは104条の2の出番です。権利の変更の登記と、信託の登記の抹消・新たな信託の登記を組み合わせます。信託の登記が誤って抹消されたときの回復は、抹消回復の登記の一般の手続によります。
不動産登記法 第104条第1項信託財産に属する不動産に関する権利が移転、変更又は消滅により信託財産に属しないこととなった場合における信託の登記の抹消の申請は、当該権利の移転の登記若しくは変更の登記又は当該権利の登記の抹消の申請と同時にしなければならない。

抹消は権利の移転・変更・抹消の登記と同時に申請します
信託の登記は、権利が信託財産に属することを公示する登記なので、権利が信託財産でなくなる登記と切り離して単独で抹消することはできません。受託者が不動産を売ったときは買主への移転の登記と、信託が終了して帰属権利者に引き継いだときはその移転の登記と同時に申請します。受託者の固有財産にしたときは権利の変更の登記と同時です。抵当権の信託で被担保債権が弁済されたときは、抵当権の登記の抹消と信託の登記の抹消を同時に申請します。信託の登記をするときに権利の登記と同時だったのと、鏡のような関係です。
抹消の申請人は受託者だけです
不動産登記法104条2項により、信託の登記の抹消は受託者が単独で申請できます。同時に申請する権利の移転の登記は受託者を登記義務者とする共同申請ですが、抹消の部分に委託者や受益者が申請人として加わることはありません。信託の登記の抹消を委託者と受託者の共同申請とする肢は誤りです。信託の変更の登記と違って、受益者や委託者が受託者に代わって申請できる旨の準用規定は抹消にはありません。
固有財産にする変更の登記は一つの申請情報で、受益者が義務者です
信託財産である不動産を受託者の固有財産にするときは、所有者は変わらないので権利の変更の登記をし、信託の登記の抹消と一つの申請情報で申請します。「信託の登記の抹消と当該信託財産に属する不動産に関する権利の変更の登記とは、一の申請情報によって申請しなければならない」という肢は正しい肢です。不動産登記法104条の2第2項の表により、この変更の登記は受託者が登記権利者、受益者が登記義務者で、受益者には登記識別情報の提供を求める22条本文が適用されません。「申請人は、所有権の登記名義人である受託者に通知された登記識別情報を提供しなければならない」という肢は誤りです。固有財産を信託財産にする逆向きの変更の登記では、自己信託の場合を除き、受益者が登記権利者、受託者が登記義務者になります。自己信託によるものは98条3項により受託者の単独申請です。
併合や分割では抹消と新たな信託の登記を変更と同時にします
信託の併合や分割によって不動産が一つの信託の信託財産から他の信託の信託財産になることがあります。104条の2第1項により、もとの信託の登記の抹消と他の信託についての信託の登記を、併合や分割による権利の変更の登記と同時に申請します。受託者が同じ別の信託に移すときも同じ形です。併合や分割による変更の登記では、他の信託の受益者と受託者が登記権利者、もとの信託の受益者と受託者が登記義務者になり、登記官は変更の登記と抹消・信託の登記を一つの順位番号で記録します。
誤って抹消された信託の登記は抹消回復の登記で戻します
信託の登記が錯誤などで不当に抹消されたときは、不動産登記法72条の抹消された登記の回復の一般の手続で回復します。回復の登記には、登記上の利害関係を有する第三者がいればその承諾を証する情報が要ります。信託の登記の回復は信託財産であることの公示を取り戻す登記なので、申請人は信託の登記をするときと同じく受託者です。回復された信託の登記は、もとの順位で効力を持ちます。
不動産登記法 第104条第1項信託の併合又は分割により不動産に関する権利が一の信託の信託財産に属する財産から他の信託の信託財産に属する財産となった場合における当該権利に係る当該一の信託についての信託の登記の抹消及び当該他の信託についての信託の登記の申請は、信託の併合又は分割による権利の変更の登記の申請と同時にしなければならない。信託の併合又は分割以外の事由により不動産に関する権利が一の信託の信託財産に属する財産から受託者を同一とする他の信託の信託財産に属する財産となった場合も、同様とする。
試験ではこう問われる
- 信託の登記の抹消は誰がどう申請するか(受託者が単独で申請できるが、権利の移転・変更・抹消の登記と同時にする)
- 信託の登記の抹消の申請人は誰か(受託者。変更の登記と違って代位の準用規定はない)
- 固有財産となった旨の変更の登記で誰が権利者・義務者か、登記識別情報は要るか(受託者が権利者、受益者が義務者。識別情報は不要)
- 信託の併合で不動産が他の信託に移るとき何を同時に申請するか(もとの信託の登記の抹消・他の信託の登記・権利の変更の登記)
- 誤って抹消された信託の登記はどう戻すか(抹消回復の登記。利害関係人の承諾が要る)
この用語が問われた肢
信託財産に属する不動産に関する権利が受託者の固有財産となった場合には、信託の登記の抹消と当該信託財産に属する不動産に関する権利の変更の登記とは、一の申請情報によって申請しなければならない。
信託財産に属する甲土地を受託者の固有財産に属する財産とした場合において、受託者の固有財産となった旨の登記及び信託の登記の抹消を申請するときは、申請人は、所有権の登記名義人である受託者に通知された登記識別情報を提供しなければならない。
Aを委託者兼受益者、Bを受託者とする信託を登記原因とする所有権の移転の登記及び信託の登記がされている甲土地について、Bが当該信託の目的に基づいて甲土地をCに売却し、甲土地が信託財産に属しないこととなった場合には、当該信託の登記の抹消の申請は、A及びBが共同してしなければならない。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。
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