信託の登記しんたくのとうき
不動産が信託財産に属することを公示するために、受託者への権利の移転などの登記と同時にする登記です。誰が申請するか、権利の登記と一つの申請情報でするか、登記事項に何を書き何を省けるかが肢で突かれます。
信託の登記は、信託によって受託者に移った不動産が受託者の固有財産ではなく信託財産に属することを、登記記録の上で明らかにするための登記です。信託法14条は、登記しなければ信託財産であることを第三者に対抗できないと定めています。不動産登記法98条1項により、信託の登記は権利の保存・設定・移転・変更の登記と同時に申請し、信託の登記そのものは受託者が単独で申請できます。登記事項は97条が列挙し、登記官が信託目録に記録します。肢で突かれるのは、権利の登記と信託の登記で申請人と申請の形がどう違うか、登記事項と添付情報に何が要らないかです。
不動産登記法 第98条第1項信託の登記の申請は、当該信託に係る権利の保存、設定、移転又は変更の登記の申請と同時にしなければならない。

権利の登記と同時に申請し、信託の登記は受託者の単独申請です
信託による所有権の移転の登記は委託者を登記義務者、受託者を登記権利者とする共同申請ですが、信託の登記は受託者が単独で申請できます。二つの登記は同時に申請しなければならず、一つの申請情報で申請します。表題部所有者が区分建物を信託したときは、受託者が74条2項の保存の登記と信託の登記を一つの申請情報で申請でき、「Bは,一の申請情報で,直接自らを所有者とする所有権の保存及び信託の登記を申請することができる」という肢は正しい肢です。同じ場面で「Bは、一の申請情報により、自らを所有者とする所有権の保存の登記及び信託の登記を申請することができる」という肢も正しい肢として出ています。受託者が信託の登記を申請しないときは、99条により受益者または委託者が受託者に代わって申請できます。
受託者が複数でも持分は書かず、受益者の住所証明情報も要りません
受託者が二人以上いるとき、信託財産は受託者の合有に属するので、所有権の移転の登記の申請情報に受託者ごとの持分は書きません。「甲土地についてA及びBを受託者とする所有権の移転の登記及び信託の登記を申請する場合には,A及びBの持分を申請情報の内容とすることを要しない」という肢は正しい肢です。受益者は登記名義人にならないため住所を証する情報も要らず、「信託による所有権の移転の登記を申請するときは,受益者となる者の住所を証する情報の提供を要する」という肢は誤りです。住所証明情報が要るのは、登記名義人になる受託者の分だけということになります。
受益者代理人等を登記すれば受益者の氏名・住所は不要です
登記事項は97条1項の11項目で、委託者・受託者・受益者の氏名と住所、信託の目的、信託財産の管理方法、信託の終了の事由などです。97条2項により、受益者の指定の条件や受益者を定める方法、信託管理人、受益者代理人、受益証券発行信託である旨、受益者の定めのない旨のいずれかを登記したときは別です。受益者の氏名と住所を登記しなくてよくなります。受益者代理人を登記した場合に省略できるのは、その代理人が代理する受益者の分だけです。「Bの氏名又は名称及び住所を登記したときは,Aの氏名又は名称及び住所を登記することを要しない」という信託管理人についての肢は正しい肢です。受益者代理人を申請情報に書いたときにその代理する受益者の氏名と住所を書かなければならないとする肢は誤りです。
信託財産で買った不動産は処分による信託の登記をします
受託者が信託財産である金銭で不動産を買ったときは、売主から受託者への所有権の移転の登記と同時に、信託財産の処分による信託の登記を申請します。受益者が受託者に代位してこれらの登記を申請することもでき、「受益者Cが,Aに代わって,BからAへの甲土地の所有権の移転の登記及び信託財産の処分による信託の登記を申請したときは,Cに対して登記識別情報は通知されない」という肢は正しい肢です。共有者の一人が持分を放棄して、信託財産である他の共有者の持分に帰属したときも同じで、「信託の登記の申請と同時に,BからCへのBの持分の移転の登記を申請することができる」という肢は正しい肢です。
抵当権も信託でき、権利能力のない社団は受益者になれません
担保権を受託者に設定し、債権者を受益者とする担保権の信託も信託法3条1号で認められています。「Aを委託者,Cを受託者かつ抵当権者,Bを受益者とする抵当権の設定の登記及び信託の登記を申請することができる」という肢は正しい肢です。受益者は権利能力を持つ者でなければならず、権利能力のない社団を受益者とする信託の登記はできません。「自治会Aを受益者として信託の登記を申請することができる」という肢は誤りです。登記実務では、受託者を権利能力のない社団とすることもできないという扱いです。
不動産登記法 第97条第1項信託の登記の登記事項は、第五十九条各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。
一 委託者、受託者及び受益者の氏名又は名称及び住所
二 受益者の指定に関する条件又は受益者を定める方法の定めがあるときは、その定め
三 信託管理人があるときは、その氏名又は名称及び住所
四 受益者代理人があるときは、その氏名又は名称及び住所
五 信託法(平成十八年法律第百八号)第百八十五条第三項に規定する受益証券発行信託であるときは、その旨
六 信託法第二百五十八条第一項に規定する受益者の定めのない信託であるときは、その旨
七 公益信託に関する法律(令和六年法律第三十号)第二条第一項第一号に規定する公益信託であるときは、その旨
八 信託の目的
九 信託財産の管理方法
十 信託の終了の事由
十一 その他の信託の条項
試験ではこう問われる
- 信託の登記は誰が申請するか(受託者の単独申請。権利の移転の登記は共同申請で、同時に一つの申請情報で)
- 受託者が複数のとき持分を申請情報に書くか(書かない。合有だから)
- 受益者の住所証明情報は要るか(要らない。登記名義人は受託者)
- 受益者代理人や信託管理人を登記したとき受益者の氏名・住所は要るか(要らない。受益者代理人のときは代理する受益者の分だけ)
- 権利能力のない社団を受益者とする信託の登記はできるか(できない)
この用語が問われた肢
Aが表題部所有者として記録されている所有権の登記がない敷地権付き区分建物について、当該区分建物及びその敷地権を目的として、Aを委託者とし、Bを受託者とする信託契約が締結された場合には、Bは、一の申請情報により、自らを所有者とする所有権の保存の登記及び信託の登記を申請することができる。
信託の登記と当該信託に係る所有権の移転の登記を同時に申請する場合には、受託者が複数名いるときであっても、受託者ごとの持分を当該所有権の移転の登記の申請情報の内容とすることを要しない。
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