遺言執行者いごんしっこうしゃ
遺言の内容を実現するために、遺言で指定され、または家庭裁判所が選任した人です。誰と共同して登記を申請するか、権限を証する情報に何を出すかが肢で突かれます。
遺言執行者は、遺言者の死後に遺言の内容を実現する権限を持つ人で、相続人の代理人として行為するのではなく、自分の名で遺言の執行に必要な一切の行為をします。遺言で指定されるか、利害関係人の請求で家庭裁判所が選任します。登記の場面では、遺贈の登記の登記義務者側に立って受遺者と共同で申請し、特定財産承継遺言では相続の登記を単独で申請できます。肢で突かれるのは、執行者があるときの申請人の組合せ、権限を証する情報、執行者の権限の範囲、執行者や受遺者が先に死亡した場合の処理です。
民法 第1012条第1項遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。

遺贈の登記は受遺者と遺言執行者の共同申請です
遺贈による所有権移転登記は、登記権利者である受遺者と登記義務者との共同申請が原則です。遺言執行者があるときは、相続人ではなく執行者が登記義務者の側に立ちます。「不動産の遺贈がされた場合において、遺言執行者があるときは、遺贈を受けた者は、遺言執行者と共同して、遺贈を原因とする当該不動産の所有権の移転の登記を申請することができる」という肢は正しい肢です。包括遺贈でも同じで、「BとCが共同して所有権の移転の登記の申請をすることはできない」という肢は誤りです。相続人に対する遺贈は、令和5年4月1日から受遺者が単独で申請できます。
権限を証する情報は、指定なら遺言書、選任なら審判書です
遺言で指定された執行者は、遺言書と遺言者の死亡を証する情報で権限を証します。自筆証書遺言なら家庭裁判所の検認調書の謄本を提供することもでき、「家庭裁判所が作成した遺言書の検認調書の謄本を遺言執行者の権限を証する情報として提供することができる」という肢は正しい肢です。家庭裁判所が選任した執行者は、選任の審判書で足ります。「遺言執行者選任の審判書、遺言書及び遺言者の死亡を証する情報を代理権限証明情報として提供しなければなりません」という肢は誤りで、審判書が権限を証する情報になります。審判書を提供すれば「Aの死亡を証する情報を提供することを要しない」という肢も正しい肢です。遺言書に執行者の氏名だけが書かれていても、遺言による指定として扱われ、「家庭裁判所により遺言執行者として選任されたことを証する情報を提供することを要する」という肢は誤りです。
執行者の権限は遺言の内容に縛られます
執行者は遺言の内容を実現する範囲でしか動けません。不動産を売って代金を遺贈する清算型の遺言では、執行者が買主と売買の登記を直接申請することはできず、相続人への相続の登記を経てから執行者が買主へ移転の登記を申請します。「Cは、売買を登記原因としてAからDへの所有権の移転の登記を申請することができる」という肢は誤りです。受遺者やその配分を執行者の協議に委ねる遺言は、遺言者自身が受遺者を決めていないので効力がなく、「Cは、甲土地についてXに遺贈する旨を決定した上で、甲土地につきAからXへの所有権の移転の登記を申請することができる」という肢も誤りです。
執行者が死亡すれば、遺贈の登記は相続人全員と共同で申請します
遺贈の登記がされないまま執行者が先に死亡すると、登記義務者の側に立つのは遺言者の相続人全員に戻ります。「Eは、Aの相続人全員と共同してAからBへの所有権の移転の登記を申請することができる」という肢は正しい肢です。逆に、受遺者が登記を受けないまま死亡して、その受遺者がさらに別の人へ遺贈していた場合、受遺者側の執行者は遺言者から直接その人への登記を申請することはできません。「Dは、Aの相続人全員と共同であっても、遺贈を登記原因とするAからCへの所有権の移転の登記を申請することができない」という肢は正しい肢で、いったん受遺者への登記を経る必要があります。
遺言後に処分されても、抹消で戻れば遺贈の登記ができます
遺言者が遺言の後に不動産を売却すると、遺贈は撤回されたものとみなされます。しかし、その売買の登記が錯誤で抹消され、遺言者の死亡時に不動産が遺言者の名義に戻っていれば、遺贈の対象として残ります。「Cは、当該遺言書を添付情報として提供したときであっても、Bと共同して遺贈を原因とする所有権の移転の登記を申請することができない」という肢は誤りで、執行者と受遺者は共同して申請できます。
民法 第1015条(遺言執行者の行為の効果)
遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生ずる。
試験ではこう問われる
- 遺言執行者があるとき、遺贈の登記は誰と誰の共同申請か(受遺者と執行者)
- 家庭裁判所が選任した執行者の権限を証する情報は何か(審判書で足りる)
- 検認調書の謄本を執行者の権限を証する情報にできるか(できる)
- 清算型遺贈で執行者が買主へ直接売買の登記を申請できるか(できない)
- 執行者が先に死亡したとき、遺贈の登記は誰と申請するか(遺言者の相続人全員)
この用語が問われた肢
不動産の遺贈がされた場合において、遺言執行者があるときは、遺贈を受けた者は、遺言執行者と共同して、遺贈を原因とする当該不動産の所有権の移転の登記を申請することができる。
自筆証書による遺言において指定された遺言執行者が,当該遺言に基づいて登記の申請をするときは,家庭裁判所が作成した遺言書の検認調書の謄本を遺言執行者の権限を証する情報として提供することができる。
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