取締役会決議の省略(書面決議)とりしまりやくかいけつぎのしょうりゃく
定款の定めがある会社で、取締役の提案に議決に加わることができる取締役の全員が書面で同意し、監査役が異議を述べなければ取締役会の決議があったものとみなす仕組みです。定款の定めと添付、同意書と議事録のどちらを添付するか、代表取締役を選定したときの印鑑証明書が要点です。
取締役会決議の省略は、会社法370条により、取締役会を開かずに決議があったものとみなす仕組みです。取締役が決議の目的である事項を提案し、議決に加わることができる取締役の全員が書面または電磁的記録で同意したときに成立します。監査役設置会社では監査役が異議を述べないことも要件です。株主総会の決議の省略と違って定款の定めが要るので、登記では商業登記法46条3項の議事録に代わる書面のほかに、商業登記規則61条1項により定款も添付します。肢で突かれるのは、定款の要否、添付書面の形、そして代表取締役を選定した場合の印鑑証明書です。
会社法 第370条(取締役会の決議の省略)
取締役会設置会社は、取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき取締役(当該事項について議決に加わることができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたとき(監査役設置会社にあっては、監査役が当該提案について異議を述べたときを除く。)は、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができる。

定款の定めが要り、登記には定款を添付します
会社法370条は取締役会の決議の省略を定款で定めることができるとしており、定款の定めがなければ全員が同意しても決議があったものとみなされません。登記すべき事項をみなし決議で決めたときは、定款の定めがなければ無効の原因が生じるので、商業登記規則61条1項により定款を添付します。株主総会の決議の省略は会社法319条が直接認めるので定款が要らず、両者の違いが肢で突かれます。提案できるのは取締役で、監査役や株主は提案できません。定款の定めがある会社でも、実際に取締役会を開いて決議することはもちろんできます。
同意するのは議決に加わることができる取締役の全員です
同意が要るのは、その事項について議決に加わることができる取締役の全員です。会社法369条2項により特別の利害関係を持つ取締役は議決に加われないので、その取締役の同意は要りません。監査役設置会社では、監査役が提案について異議を述べたときは決議があったものとみなされません。監査の範囲を会計に限定された監査役を置く会社は会社法2条9号の監査役設置会社ではないので、その監査役の異議は要件になりません。決議があったものとみなされた日は最後の取締役の同意が会社に届いた日で、会社法371条1項により同意の書面と議事録を10年間本店に備え置きます。
添付するのは同意書か、みなし決議を記載した議事録です
商業登記法46条3項により、議事録に代えて決議があったものとみなされる場合に該当することを証する書面を添付します。取締役全員の同意書と提案書が典型ですが、会社法施行規則によりみなし決議の内容を記載した取締役会議事録も作成するので、その議事録を添付して申請できます。定款の定めにより代表取締役を選定する取締役会の決議があったものとみなされたとき、就任の登記に取締役全員の同意書を添付しなければならないとする肢は誤りで、議事録でも足りるからです。同意書を添付するときは、監査役設置会社では監査役が異議を述べなかったことも読み取れるようにするのが通例です。監査役が異議を述べなかったことを証する書面を別に添付する定めはありません。
みなし決議で代表取締役を選定しても印鑑証明書は要ります
商業登記規則61条6項3号は、取締役会の決議で代表取締役を選定したときに出席した取締役と監査役が議事録に押した印鑑の印鑑証明書を求めます。みなし決議で選定したときも、取締役の同意書または議事録に押した印鑑について印鑑証明書を添付する扱いで、変更前の代表取締役が届出印を押していれば省けます。代表取締役の就任承諾書と、取締役会設置会社なら承諾書の印鑑証明書(再任を除く)も通常どおり要ります。取締役会への報告は会社法372条により取締役と監査役の全員に通知すれば省略できますが、会社法363条2項の職務執行状況の報告は省略できません。代表取締役の選定のような決議事項も報告の省略では済みません。
商業登記法 第46条第3項登記すべき事項につき会社法第三百十九条第一項(同法第三百二十五条において準用する場合を含む。)又は第三百七十条(同法第四百九十条第五項において準用する場合を含む。)の規定により株主総会若しくは種類株主総会、取締役会又は清算人会の決議があつたものとみなされる場合には、申請書に、前項の議事録に代えて、当該場合に該当することを証する書面を添付しなければならない。
試験ではこう問われる
- 取締役会の決議の省略に定款の定めが要るか、登記に定款を添付するかを問う肢
- 同意が要る取締役の範囲(特別利害関係人を除くか)と監査役の異議の扱いを問う肢
- 添付書面として同意書が必須か、みなし決議を記載した議事録で申請できるかを問う肢
- みなし決議で代表取締役を選定したときの印鑑証明書の要否を問う肢
この用語が問われた肢
定款に「取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合において,当該提案につき取締役の全員が書面により同意の意思表示をしたときは,当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす。」旨の定めがある取締役会設置会社において,当該定款の定めにより代表取締役を選定する取締役会の決議があったものとみなされたときは,当該代表取締役の就任による変更の登記の申請書には,当該提案についての取締役全員の同意書を添付しなければならない。
取締役が株主総会の目的である事項として取締役の選任について提案し、当該提案につき株主の全員が同意したことによって、株主総会の決議があったとみなされた場合には、取締役の就任による変更の登記の申請書には、定款を添付しなければならない。
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