現物出資と検査役げんぶつしゅっしとけんさやく
金銭以外の財産を出資することと、定款に記載された変態設立事項を調査するために裁判所が選任する検査役の仕組みです。検査役の調査を省略できる3つの場合と、そのとき添付する書面が肢で突かれます。
現物出資は、金銭以外の財産を出資の目的とすることで、出資する者の氏名、財産とその価額、割り当てる設立時発行株式の数を定款に記載しなければ効力を生じません。会社法28条はこれと財産引受け、発起人の報酬、設立費用を並べており、まとめて変態設立事項と呼ばれます。定款にこれらの記載があるときは、発起人は公証人の認証の後遅滞なく裁判所に検査役の選任を申し立て、検査役が調査して裁判所に報告します。ただし会社法33条10項が現物出資と財産引受けについて3つの例外を置き、価額の総額が500万円以下・市場価格のある有価証券・専門家の証明の場合はその財産の検査役の調査が要りません。発起人の報酬や設立費用にはこの例外が無く、肢で突かれるのは例外の範囲と設立の登記の申請書に添付する書面の対応です。
会社法 第28条株式会社を設立する場合には、次に掲げる事項は、第二十六条第一項の定款に記載し、又は記録しなければ、その効力を生じない。
一 金銭以外の財産を出資する者の氏名又は名称、当該財産及びその価額並びにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数(設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合にあっては、設立時発行株式の種類及び種類ごとの数。第三十二条第一項第一号において同じ。)
二 株式会社の成立後に譲り受けることを約した財産及びその価額並びにその譲渡人の氏名又は名称
三 株式会社の成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益及びその発起人の氏名又は名称
四 株式会社の負担する設立に関する費用(定款の認証の手数料その他株式会社に損害を与えるおそれがないものとして法務省令で定めるものを除く。)

500万円以下でも設立時取締役の調査報告書は要ります
現物出資財産等について定款に記載された価額の総額が500万円を超えないときは、検査役の調査は要りません。しかし設立時取締役は定款に記載された価額が相当であることを調査しなければなりません。設立の登記の申請書には設立時取締役(監査役設置会社では設立時監査役も)の調査報告を記載した書面と附属書類を添付します。「現物出資財産について定款に記載された価額の総額が500万円を超えない場合には,設立の登記の申請書に,設立時取締役(設立する株式会社が監査役設置会社である場合にあっては,設立時取締役及び設立時監査役)の調査報告を記載した書面を添付することを要しない」という肢は誤りです。500万円以下の財産が不動産であっても鑑定評価は要らず、「当該現物出資財産の全てが不動産であるときは,設立の登記の申請書に,不動産鑑定士の鑑定評価書を添付しなければならない」という肢は誤りです。
市場価格のある有価証券は認証の日の価格で測ります
市場価格のある有価証券について定款に記載された価額が、法務省令で定める方法で算定される市場価格を超えないときも検査役の調査は要りません。設立の登記の申請書には有価証券の市場価格を証する書面を添付します。基準となるのは定款の認証の日における市場の最終の価格で、その日に取引が無ければその後最初に成立した価格、認証の日に公開買付けなどの対象であればその契約価格と比べて高い方を使います。給付の日の価格ではありません。「設立の登記の申請書に添付すべき有価証券の市場価格を証する書面は,当該現物出資財産の給付の日の最終の市場価格を証するものでなければならない」という肢は誤りです。
専門家の証明は発起人や設立時取締役にはできません
弁護士、公認会計士、監査法人、税理士などが価額の相当性を証明したときも検査役の調査は要らず、不動産については証明に加えて不動産鑑定士の鑑定評価が要ります。証明できないのは発起人、財産引受けの譲渡人、設立時取締役と設立時監査役などで、設立時会計監査人はこの中に入っていません。「当該公認会計士が設立しようとする会社の設立時会計監査人であったとしても,設立の登記の申請書に,当該公認会計士が作成した証明書を添付して,設立の登記の申請をすることができる」という肢は正しい肢です。証明をした者は、会社成立の時の価額が定款の価額に著しく不足するとき、注意を怠らなかったことを証明しない限り発起人らと連帯して不足額を支払う義務を負います。
検査役の報告に関する裁判があればその謄本を添付します
検査役の調査を経た事項を裁判所が不当と認めたときは、変更する決定をします。設立の登記の申請書には、検査役の調査報告を記載した書面と附属書類に加えて、裁判があったときはその謄本を添付します。「検査役の報告を受けた裁判所によって,現物出資財産の価額を変更する決定がされた場合には,設立の登記の申請書に,当該決定書の謄本を添付しなければならない」という肢は正しい肢です。発起人は決定の確定後1週間以内に限り引受けを取り消すことができ、発起人全員の同意で変更された事項の定めを廃止する定款の変更もできます。
変態設立事項が無ければ調査報告書も要りません
設立時取締役の調査報告を記載した書面と附属書類を添付するのは、定款に変態設立事項の記載があるときです。「当該設立が発起設立であり,定款にいわゆる変態設立事項についての定めがない場合には,設立時取締役の調査報告を記載した書面及びその附属書類を添付することなく,設立の登記を申請することができる」という肢は正しい肢です。募集株式の発行にも似た例外があり、会社に対する弁済期の到来した金銭債権を帳簿価額を超えない価額で出資するときは検査役の調査が要らず、「当該金銭債権に係る負債の帳簿価額を超えないときは,募集株式の発行による変更の登記の申請書には,当該金銭債権についての現物出資財産の価額に関する検査役の調査報告を記載した書面及びその附属書類を添付することを要しない」という肢は正しい肢です。
会社法 第33条第10項前各項の規定は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める事項については、適用しない。
一 第二十八条第一号及び第二号の財産(以下この章において「現物出資財産等」という。)について定款に記載され、又は記録された価額の総額が五百万円を超えない場合 同条第一号及び第二号に掲げる事項
二 現物出資財産等のうち、市場価格のある有価証券(金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二条第一項に規定する有価証券をいい、同条第二項の規定により有価証券とみなされる権利を含む。以下同じ。)について定款に記載され、又は記録された価額が当該有価証券の市場価格として法務省令で定める方法により算定されるものを超えない場合 当該有価証券についての第二十八条第一号又は第二号に掲げる事項
三 現物出資財産等について定款に記載され、又は記録された価額が相当であることについて弁護士、弁護士法人、弁護士・外国法事務弁護士共同法人、公認会計士(外国公認会計士(公認会計士法(昭和二十三年法律第百三号)第十六条の二第五項に規定する外国公認会計士をいう。)を含む。以下同じ。)、監査法人、税理士又は税理士法人の証明(現物出資財産等が不動産である場合にあっては、当該証明及び不動産鑑定士の鑑定評価。以下この号において同じ。)を受けた場合 第二十八条第一号又は第二号に掲げる事項(当該証明を受けた現物出資財産等に係るものに限る。)
試験ではこう問われる
- 価額の総額が500万円以下のとき設立時取締役の調査報告書は要るか(要る。検査役の調査が要らないだけ)
- 500万円以下の不動産に鑑定評価書は要るか(要らない)
- 有価証券の市場価格の基準日は認証の日か給付の日か(定款の認証の日)
- 設立時会計監査人である公認会計士は価額の証明ができるか(できる。できないのは発起人・譲渡人・設立時取締役・設立時監査役)
- 裁判所が価額を変更する決定をしたとき何を添付するか(決定書の謄本)
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