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現物出資(募集株式)と検査役調査の省略げんぶつしゅっしとけんさやくちょうさのしょうりゃく

商業登記 第7章 株式と資本金 過去問で10肢

金銭以外の財産を出資の目的とする募集株式の発行では、原則として裁判所の選任した検査役の調査を受けますが、会社法207条9項の5つの場合には省略できます。どの場合に当たり、どの書面を添付するかが肢で突かれます。

現物出資は、金銭以外の財産を出資の目的として募集株式を発行することで、募集事項でその財産の内容と価額を定めます。価額が過大だと資本が水増しされるので、会社は募集事項の決定後遅滞なく裁判所に検査役の選任を申し立て、調査を受けるのが原則です。会社法207条9項は、調査を省略できる5つの場合を定め、商業登記法56条3号がそれぞれに対応する添付書面を定めています。肢は、どの号に当たるかと、その号で何を添付するかを組み合わせて作られます。

会社法 第207条第9項

前各項の規定は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める事項については、適用しない。
一 募集株式の引受人に割り当てる株式の総数が発行済株式の総数の十分の一を超えない場合 当該募集株式の引受人が給付する現物出資財産の価額
二 現物出資財産について定められた第百九十九条第一項第三号の価額の総額が五百万円を超えない場合 当該現物出資財産の価額
三 現物出資財産のうち、市場価格のある有価証券について定められた第百九十九条第一項第三号の価額が当該有価証券の市場価格として法務省令で定める方法により算定されるものを超えない場合 当該有価証券についての現物出資財産の価額
四 現物出資財産について定められた第百九十九条第一項第三号の価額が相当であることについて弁護士、弁護士法人、弁護士・外国法事務弁護士共同法人、公認会計士、監査法人、税理士又は税理士法人の証明(現物出資財産が不動産である場合にあっては、当該証明及び不動産鑑定士の鑑定評価。以下この号において同じ。)を受けた場合 当該証明を受けた現物出資財産の価額
五 現物出資財産が株式会社に対する金銭債権(弁済期が到来しているものに限る。)であって、当該金銭債権について定められた第百九十九条第一項第三号の価額が当該金銭債権に係る負債の帳簿価額を超えない場合 当該金銭債権についての現物出資財産の価額

出資者が機械と不動産の模型を運び込み、検査役が巻尺で測り、横で弁護士が書面に判を押す
現物出資は検査役の調査が原則で、1割以内・500万円以内・市場価格・弁護士等の証明・会社に対する債権の5つで省けます
1割以内・500万円以内は書面なし市場価格は決定日基準役員は証明できない、不動産は鑑定評価会社に対する債権は会計帳簿

1割以内か500万円以内なら調査も証明書も要りません

引受人に割り当てる株式の総数が発行済株式の総数の10分の1を超えない場合と、現物出資財産の価額の総額が500万円を超えない場合は、検査役の調査が要りません。「製造機械を出資の目的とし,かつ,募集事項の決定の際に当該機械の価額を 500 万円と定めていた場合において,募集株式の引受人に対し新たにその発行する普通株式 200 株及び自己株式 50 株を割り当てるときは,検査役の調査報告を記載した書面及びその附属書類を添付しないで,募集株式の発行による変更の登記を申請することができる」という肢は正しい肢です。割当てが1割以内の場合に添付書面はなく、「当該募集株式の引受人が会社に対する600万円の金銭債権を出資したときは、募集株式の発行による変更の登記の申請書には、当該金銭債権について記載された会計帳簿を添付しなければならない」という肢は誤りです。発行済株式2000株の会社が社債を800万円と定めて200株を割り当てる場合も1割を超えないので、検査役の報告書を要するとする肢は誤りです。

有価証券は決定時の市場価格以内なら調査が要りません

市場価格のある有価証券について定めた価額が、法務省令で定める方法により算定した市場価格を超えないときは、検査役の調査が要らず、申請書には有価証券の市場価格を証する書面を添付します。比べる市場価格は募集事項の決定の日を基準にしたもので、給付の日の価格ではありません。「当該有価証券を当該会社に給付した日におけるその市場価格が 1000 万円であるときは,当該市場価格を証する書面を添付して,募集株式の発行による変更の登記を申請することができる」という肢は誤りです。

弁護士等の証明は役員にはできず、不動産には鑑定評価も要ります

価額が相当であることについて弁護士、弁護士法人、公認会計士、監査法人、税理士または税理士法人の証明を受けた場合は、証明を記載した書面とその附属書類を添付します。現物出資財産が不動産なら、証明に加えて不動産鑑定士の鑑定評価が要り、「税理士の証明及び不動産鑑定士の鑑定評価を記載した書面並びにその附属書類を添付して,募集株式の発行による変更の登記を申請することができる」という肢は正しい肢です。会社の取締役・会計参与・監査役・執行役・使用人や引受人は証明できないので、「当該会社の監査役である弁護士の証明を記載した書面及びその附属書類を添付して,募集株式の発行による変更の登記を申請することができる」という肢は誤りです。証明者の資格を証する書面は求められず、税理士の登録を証する書面を添付させる肢も誤りです。

会社に対する金銭債権は帳簿価額以内なら会計帳簿で足ります

現物出資財産が会社に対する金銭債権で、弁済期が到来しており、定めた価額がその債権に係る負債の帳簿価額を超えないときは、検査役の調査が要りません。申請書にはその金銭債権について記載された会計帳簿を添付し、価額が500万円を超えていても同じです。「当該金銭債権に係る負債の帳簿価額を超えないときは,募集株式の発行による変更の登記の申請書には,当該金銭債権についての現物出資財産の価額に関する検査役の調査報告を記載した書面及びその附属書類を添付することを要しない」という肢は正しい肢です。公認会計士の証明に置き換えた肢は誤りで、第三者に対する金銭債権はこの号の対象外なので別の号に当たらなければ調査が要ります。

商業登記法 第56条第1項第3号

金銭以外の財産を出資の目的とするときは、次に掲げる書面

試験ではこう問われる

  1. 発行済株式の1割以内の割当てで会社に対する金銭債権を出資するとき会計帳簿は要るか(要らない)
  2. 市場価格のある有価証券はいつの市場価格と比べるか(募集事項の決定の日を基準にした価格。給付日ではない)
  3. 監査役である弁護士は価額の相当性を証明できるか(できない)
  4. 不動産を現物出資するとき税理士の証明だけで足りるか(足りない。不動産鑑定士の鑑定評価も要る)
  5. 弁済期の到来した会社に対する金銭債権を帳簿価額以内で出資するとき何を添付するか(会計帳簿)

この用語が問われた肢

R8 問32 イ誤り

発行済株式の総数が1000株であり、募集株式の引受人に割り当てる株式の総数が100株である場合において、当該募集株式の引受人が会社に対する600万円の金銭債権を出資したときは、募集株式の発行による変更の登記の申請書には、当該金銭債権について記載された会計帳簿を添付しなければならない。

解説と関連先例は肢別演習で読めます。

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