司法書士試験AIブートラボ 司法書士試験AIブートラボ

明認方法と立木(立木法の登記がない立木)めいにんほうほうとりゅうぼく

民法 第5章 物権総論と物権変動 過去問で135肢

明認方法とは、立木などについて、木の皮を削って所有者名を書く、立札を立てるなどの方法で、現在の所有者が誰かを第三者に示す慣習上の公示方法をいいます。立木は原則として土地の一部ですが、立木法の登記がない立木も、明認方法を施せば土地と別に所有権の移転や留保を第三者に対抗できます。

山林の木だけを売り買いすることは昔から行われてきました。木は本来土地の一部ですが、木材として価値があるので、土地と別に取引する必要があります。しかし木だけの売買は土地の登記には現れないので、民法は定めていないものの、木の皮を削って持ち主の名前を書いたり、立札を立てたりする方法で持ち主を示すことが慣習として認められてきました。これが明認方法で、登記の代わりに第三者への対抗要件として働きます。ただし、土地と一緒に買った場合は、土地の登記で足ります。

山林の場面。杉の木立の中で、先生(札「立木の買主B」)が一本の杉の幹の皮を削った部分に墨で「所有者 B」と書いている。足元に「この立木はBの所有」と書いた立札が立ててある。先生の吹き出し「前の持ち主の名前は要りません。今の所有者が分かるよう

明認方法は現在の所有者を示せば足り、前所有者や取得原因まで表示する必要はありません

立木は原則として土地の定着物として土地の一部です(86条1項)が、意思表示により土地と分離して別個に所有権の目的とすることができ、その対抗要件として立木法による登記のほか、慣習上の明認方法が認められています。明認方法は法律に規定のない公示方法なので、物権変動の対抗要件は法律に規定された登記や引渡しに限られません。判例は、明認方法は誰が現にその立木の所有者であるかを明らかにすれば足り、前所有者の氏名や権利取得の原因まで明示する必要はないとしています(大判大正9年2月19日)。明認方法は登記のように権利変動の過程を示す制度ではないからです。前所有者の氏名や所有権の取得原因を表示しなくても、明認方法として足ります。

明認方法は、第三者が利害関係を取得した時点で存続していなければ対抗力がありません

判例は、明認方法は登記に代わるものとして第三者が容易に所有権を認識できる手段で、しかも第三者が利害関係を取得する当時にもそれだけの効果をもって存在するものでなければならず、権利変動の際にいったん施されても、問題の生じた当時に消失して公示の働きをしなくなっていれば、その第三者に対抗できないとしました(最判昭和36年5月4日)。登記と違い、明認方法は現地の外形にすぎず公簿に残らないからです。明認方法が消失した後に売主から立木を買い受けた第三者に対しては、立木の所有権の取得を対抗できません。

同じ山林で数年後の場面。風雨で墨の文字が消えかけ、立札も倒れて草に埋もれている。木立の前で、新しく立木を買った男性(札「後の買主E」)が売買契約書を持って立っている。先生(札「前の買主D」)が困った顔で消えた文字を指している。先生の吹き出し

土地と立木をまとめて買った者は土地の登記で立木も対抗でき、立木だけの譲受人との優劣は登記と明認方法の先後で決まります

立木と地盤が同じ所有者に属する間は、立木の所有権は土地所有権に含まれるので、土地と立木を同時に譲り受けた者は、土地の所有権移転登記をすれば立木についても所有権の移転を第三者に対抗できます(最判昭和30年9月23日)。立木だけの譲受人と、立木を含めて土地を取得した者との優劣は、明認方法と土地の登記の先後で決まります。先に土地の登記を備えた者は、後に立木だけを買って明認方法を施した者に優先します。土地を買った者が自ら植栽して明認方法を施した立木は、その後に土地を譲り受けて登記をした者に対抗できます。土地の譲受人に対しては、立木を分離して自分に帰属させるにも対抗要件が要るとされます(最判昭和35年3月1日)。

立木の所有権を留保して土地を売った場合や、立木の売買を解除した場合も、明認方法がなければ第三者に対抗できません

判例は、土地の所有権を移転するに当たり当事者間の合意で立木の所有権を留保した場合、立木は土地と独立した所有権の目的となるが、留保もまた物権変動の一場合と解すべきであるから、立木法による登記又は留保を公示するに足る明認方法を講じない限り、立木所有権の留保をもってその地盤である土地の権利を取得した第三者に対抗できないとしています(最判昭和34年8月7日)。外形上は立木ごと土地が買主に移ったように見えるからです。「Aが甲土地上の立木の所有権を留保して甲土地をBに売却し,その後,BがCに甲土地及びその上の立木を売却した場合には,Aは,Cに対し,立木の所有権の留保につき登記や明認方法を備えない限り,立木の所有権を主張することができない」という肢(R3 問8 イ)は正しいです。立木だけの売買を解除した売主も、復帰した所有権を明認方法で公示できます。なお、立木を土地と別に抵当権の目的とするには立木法による登記が要り、明認方法では足りません。

民法 第86条第1項

土地及びその定着物は、不動産とする。

最判昭和34年8月7日

立木の所有権を留保した場合は、立木は土地と独立して所有権の目的となるものであるが、留保もまた物権変動の一場合と解すべきであるから、この場合には立木につき立木法による登記をするかまたは該留保を公示するに足る明認方法を講じない以上、第三者は全然立木についての所有権留保の事実を知るに由ないものであるから、右登記または明認方法を施さない限り、立木所有権の留保をもつてその地盤である土地の権利を取得した第三者に対抗し得ない

試験ではこう問われる

  1. 立木の所有権を留保して土地を売った者は、登記や明認方法を備えない限り、土地と立木を転得した者に立木の所有権を主張できない(最判昭和34年8月7日。R3 問8 イ ○)
  2. 明認方法は法律に規定のない慣習上の公示方法で、立木法の登記がない立木の対抗要件になる
  3. 明認方法は現在の所有者を示せば足り、前所有者や取得原因の表示は要らない(大判大正9年2月19日)
  4. 明認方法は、第三者が利害関係を取得した時に存続していなければ対抗できない(最判昭和36年5月4日)
  5. 土地と立木をまとめて買った者は土地の登記で立木も対抗でき、立木だけの譲受人との優劣は明認方法と土地の登記の先後で決まる(最判昭和30年9月23日)

司法書士試験AIブートラボ

司法書士試験の対策を、
スマホひとつで。

過去問の肢別演習、記述式と雛形ドリル、先例と条文、用語集。司法書士試験の勉強に使う教材をひとつのアプリにまとめました。

関連する用語

物権総論と物権変動

物権の意義と客体(物権法定主義・一物一権主義・一筆の土地の一部・集合物・金銭)

物権とは、特定の物を直接に支配し、他人を排除できる権利です(175条)。物権は民法その他の法律に定めるもののほかは...
物権総論と物権変動

177条の「第三者」の範囲(制限説・不法占拠者・前主・賃借人・差押債権者)

177条の「第三者」とは、当事者及びその包括承継人以外の者で、不動産に関する物権の得喪及び変更の登記の欠缺を主張す...
物権総論と物権変動

解除と登記(解除前の第三者・解除後の第三者)

解除と登記とは、不動産の売買契約が解除された場合に、解除者が所有権の復帰を第三者に主張するのに登記が要るかという問...
占有権・所有権

不動産の付合(242条・権原・建前・増築)

不動産の付合とは、不動産に従として結合して分離できなくなった物の所有権を、不動産の所有者が取得することです(242...
物権総論と物権変動

即時取得の要件(取引行為・占有の取得方法・善意無過失の推定・対象外の場面)

即時取得とは、取引行為によって平穏かつ公然と動産の占有を始めた者が、前主に処分の権利がないことについて善意無過失で...