共有者の一人による権利行使(保存行為・不実登記の抹消・損害賠償・共有者間の明渡し)きょうゆうしゃのひとりによるけんりこうし
共有者の一人による権利行使とは、各共有者が単独で共有物を守るためにできる請求の範囲の問題です。保存行為(252条5項)として不法占拠者への明渡しや無権利者の登記の抹消は単独で全部について請求できますが、損害賠償は持分の割合に限られ、共有者間では多数持分権者でも当然には明渡しを求められません。
三人で共有する土地に見知らぬ人が勝手に資材を置いたとき、三人そろわなければ出て行けと言えないのでは困ります。民法は、共有物を守る保存行為は一人でもできるとし、判例は、不法占拠者への明渡請求や無権利者の登記の抹消請求を一人で共有物全部についてできるとしています。他方で、お金の請求は自分の持分の分に限られ、共有者どうしでは、持分が多いというだけで他の共有者を追い出すことはできません。

保存行為は各共有者が単独ででき、不法占拠者に対する明渡請求も共有物全部について一人でできます
各共有者は、保存行為をすることができます(252条5項)。共有物の現状を維持する行為は他の共有者にも利益になるからです。自転車の修理のような保存行為は、持分の価格が過半数に達しない共有者でも、他の共有者の承諾なくできます。判例は、共有物を不法に占有する者に対する妨害排除や返還の請求を、各共有者が単独で、共有物全部についてすることができるとしています。「AとBが各 2 分の 1 の持分の割合で共有する甲土地上にCが権原なく乙建物を新築したときは、Aは、単独で、Cに対し、乙建物の収去及び甲土地の明渡しを請求することができる」という肢(R7 問7 ウ)は正しいです。反対に、他人の土地の上に建物を共有している者たちに建物収去土地明渡しを求める訴えは、共有者全員を被告にしなければならない訴え(固有必要的共同訴訟)ではありません(最判昭和43年3月15日)。
無権利者の登記に対しては一人で全部の抹消を求められますが、共有者の一人がした単独名義の登記には自分の持分についての更正しか求められません
判例は、不動産の共有者の一人が、その持分に基づき、登記簿上の所有名義人に対して登記の抹消を求めることは妨害排除の請求であり保存行為に当たるとしています(最判昭和31年5月10日)。「甲土地につき,無権利のDが自己名義への所有権の移転の登記をした場合には,Aは,単独で,Dに対し,その所有権の移転の登記の抹消登記手続を求めることができる」という肢(R2 問10 ア)は正しいです。判例は、共有不動産について全く実体上の権利を持たないのに持分移転登記を経由している者に対しては、他の共有者の持分についての登記であっても、共有者が単独で抹消を請求できるとしています(最判平成15年7月11日)。これに対して、共有者の一人が自分だけを所有者とする登記をした場合、その共有者にも自分の持分があるので登記は持分の限度で実体に合っており、他の共有者は自己の持分についての一部抹消(更正)登記しか求められません(最判昭和38年2月22日)。組合財産である不動産についても、無権利者の登記の抹消は組合員の一人が単独で求められます。

不法占拠者に対する損害賠償は、各共有者が自分の持分の割合に応じた額しか請求できません
判例は、共有の土地が不法に占有されたことを理由とする損害賠償は、各共有者がそれぞれの共有持分の割合に応じて請求すべきものとしています(最判昭和51年9月7日)。明渡しは共有物全部について一人で求められますが、損害賠償請求権は持分の割合で各共有者に分かれて帰属する金銭債権だからです。
共有物を単独で占有する共有者に対し、多数持分権者でも当然には明渡しを求められませんが、持分に応じた使用料相当額は不当利得として請求できます
判例は、共有者の一部が共有物を現に占有している場合、他の共有者は、その持分の価格が過半数を超えるからといって、当然に明渡しを請求できるものではないとしています(最判昭和41年5月19日)。占有している共有者も自分の持分に基づいて共有物全部を使用する権原を持っているからです。「AがB及びCに無断で甲土地を占有している場合には,Bは,Aに対し,自己に甲土地を明け渡すように求めることができる」という肢(R2 問10 オ)は誤りです。もっとも、判例は、単独で占有する共有者に対し、他の共有者は持分の割合に応じて占有部分の地代相当額や賃料相当額の不当利得金ないし損害賠償金の支払を請求できるとしています(最判平成12年4月7日)。他の共有者が現実に住む意思を持っていなくても同じです。現在は、使用する共有者の対価償還義務(249条2項)と、共有物を使用する共有者がいても管理を持分の過半数で決められること(252条1項後段・3項)が条文に置かれています。

共有地の筆界確定の訴えは共有者全員で起こす必要がありますが、同調しない共有者は被告にして提起できます
判例は、隣接する土地が共有の場合の筆界確定の訴えは共有者全員が当事者となる必要があるとしたうえで、共有者のうち訴えの提起に同調しない者がいるときは、その余の共有者は、隣接する土地の所有者とともに同調しない共有者を被告にして訴えを提起できるとしています(最判平成11年11月9日)。筆界は公的に定まる境界で、一部の共有者が反対するだけで確定できなくなるのは不合理だからです。
- 不法占拠者への明渡し各共有者が単独で全部について請求できる(保存行為)
- 無権利者の登記単独で全部の抹消を請求できる(最判昭和31年5月10日・最判平成15年7月11日)
- 共有者の一人の単独名義の登記自己の持分についての更正のみ(最判昭和38年2月22日)
- 不法占拠者への損害賠償持分の割合に応じた額のみ(最判昭和51年9月7日)
- 単独で占有する共有者多数持分でも当然には明渡し請求不可(最判昭和41年5月19日)。持分に応じた使用料相当額は請求可(最判平成12年4月7日)
民法 第252条第5項各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。
試験ではこう問われる
- 保存行為は、持分の価格が過半数に達しない共有者も単独でできる(252条5項)
- 共有地上に権原なく建物を新築した者に対し、共有者の一人は単独で建物の収去と土地の明渡しを請求できる(R7 問7 ウ ○)
- 無権利者が自己名義にした所有権の移転の登記は、共有者の一人が単独で抹消登記手続を請求できる(最判昭和31年5月10日。R2 問10 ア ○)
- 共有者の一人の単独名義の登記に対しては、自己の持分についての一部抹消(更正)登記手続しか求められない(最判昭和38年2月22日)
- 不法占拠者への損害賠償は、各共有者の持分の割合に応じた額に限られる(最判昭和51年9月7日)
- 共有物を無断で占有する共有者に対し、他の共有者は当然には明渡しを請求できない(最判昭和41年5月19日。R2 問10 オ ×)が、持分に応じた使用料相当額は請求できる(最判平成12年4月7日)
- 第三者に対する共有持分権の確認の訴えは、共有者の一人が単独で提起でき、共有者全員が当事者になる必要はない(R8 午後 問1 ア ×)

