仮差押えの執行と供託かりさしおさえのしっこうときょうたく
金銭債権に仮差押えの執行を受けた第三債務者の供託と、債務者が仮差押えの執行を免れるためにする仮差押解放金の供託をまとめた語です。第三債務者の供託と解放金の供託を混同させる肢、解放金の供託者と管轄をすり替える肢が作られます。
仮差押えの執行と供託には、第三債務者がする供託と債務者がする仮差押解放金の供託の二つがあります。民事保全法50条5項が民事執行法156条を準用するので、仮差押えの執行を受けた第三債務者は差押えのときと同じく供託することができます。一方で債務者は、民事保全法22条により仮差押命令で定められた仮差押解放金を供託して執行の取消しを得ることができます。肢で突かれるのは、二つの供託の供託者と管轄の違い、そして第三債務者の供託が解放金の供託とみなされる仕組みです。
民事保全法 第50条第3項第三債務者が仮差押えの執行がされた金銭の支払を目的とする債権の額に相当する金銭を供託した場合には、債務者が第二十二条第一項の規定により定められた金銭の額に相当する金銭を供託したものとみなす。ただし、その金銭の額を超える部分については、この限りでない。

仮差押えでも供託でき、仮差押えだけの競合では義務になりません
仮差押えの執行を受けた第三債務者は、民事保全法50条5項の準用により、仮差押えに係る金銭債権の全額を債務の履行地の供託所に供託することができます。仮差押えの後に差押命令が重なり、仮差押えされていない部分を超えれば全額の義務供託になります。ただし仮差押えが二本重なっただけでは配当手続が始まらないので、供託実務では義務供託にならず権利供託にとどまります。「第三債務者は,金銭債権の一部に対して仮差押えの執行がされた後,当該金銭債権のうち仮差押えの執行がされていない部分を超えて発せられた仮差押命令の送達を受けたときは,その債権の全額に相当する金銭を供託しなければならない」という肢は誤りです。仮差押えの執行と滞納処分による差押えが重なった場合も、全額を供託することができるにとどまります。
第三債務者が供託すると解放金を供託したものとみなされます
民事保全法50条3項は、第三債務者が仮差押えの執行を受けた債権額に相当する金銭を供託したときは、債務者が仮差押解放金を供託したものとみなすと定めます。仮差押えは将来の強制執行に備えて財産を保全する手続なので、供託金が解放金の役割を果たせば足りるからです。みなされるのは解放金の額までで、超える部分は対象になりません。供託した第三債務者は保全執行裁判所に事情届を出します。仮差押えが取り下げられたり執行が取り消されたりしたときは債務者が裁判所の証明書を添えて直接還付請求でき、本執行に移ったときは執行裁判所の支払委託によります。
仮差押解放金を供託できるのは債務者だけです
仮差押解放金は、債務者が仮差押えの執行の停止や取消しを得るために供託する金銭で、民事保全法22条1項により仮差押命令で額が定められます。供託実務では供託者は債務者に限られ、第三者が代わって供託することは認められていません。「仮差押債務者以外の第三者は,仮差押債権者の同意がある場合には,仮差押解放金の供託をすることができる」という肢は誤りです。債務者が解放金の供託を証明すると、民事保全法51条1項により保全執行裁判所は仮差押えの執行を取り消さなければなりません。裁判上の保証供託で第三者の供託が認められるのと対比して覚えます。
解放金の管轄は債務の履行地ではなく裁判所の所在地です
仮差押解放金の供託所は、民事保全法22条2項により、仮差押命令を発した裁判所または保全執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所です。弁済供託や第三債務者の執行供託が債務の履行地で決まるのと違い、裁判所を基準にします。「仮差押えの執行を取り消すために債務者がする仮差押解放金の供託は,債務の履行地の供託所にしなければならない」という肢は誤りです。解放金は金銭に限られ、有価証券で代えることはできません。
還付請求権の仮差押債権者は供託を受諾できません
弁済供託の還付請求権に仮差押えをした債権者は、供託所に対して供託を受諾する旨の意思表示をすることができません。仮差押えは処分を禁止する暫定的な手続で、取立権を伴わないからです。「供託物還付請求権の仮差押債権者は、供託所に対し、供託を受諾する旨の意思表示をすることができない」という肢は正しい肢です。「供託物払渡請求権の仮差押債権者は、当該供託物払渡請求権に係る供託を受諾することができる」という肢は誤りです。還付請求権を差し押さえて取立権を得た差押債権者や転付債権者は受諾できるので、仮差押えと差押えで結論が分かれます。
民事保全法 第22条第2項前項の金銭の供託は、仮差押命令を発した裁判所又は保全執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所にしなければならない。
試験ではこう問われる
- 仮差押えだけの競合で第三債務者に全額の供託義務があるとする肢
- 第三債務者の供託が仮差押解放金の供託とみなされる仕組みを問う肢
- 仮差押解放金を第三者が供託できるかのように書く肢
- 仮差押解放金の管轄を債務の履行地に置き換える肢
- 還付請求権の仮差押債権者が供託を受諾できるかを問う肢
この用語が問われた肢
AがBに対して有する100万円の金銭債権につき、Cから仮差押え(仮差押金額60万円)の執行がされた後、Dを仮差押債権者とする仮差押命令(仮差押金額50万円)の送達を受けたときは、Bは、当該金銭債権の全額に相当する100万円を供託しなければならない。
金銭債権の全部に対して仮差押えの執行がされた後、当該金銭債権の一部に対して差押えがされたときは、第三債務者は、当該金銭債権の全額に相当する金銭を供託しなければならない。
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