滞納処分と供託たいのうしょぶんときょうたく
国税や地方税の滞納処分による差押えと、強制執行や仮差押えの執行が同じ金銭債権に重なったときの第三債務者の供託です。滞納処分だけでは供託できないこと、先後によって権利供託と義務供託が入れ替わることが肢で突かれます。
滞納処分と供託は、税金の滞納処分による差押えが民事執行の差押えや仮差押えと同じ金銭債権に重なったときの、第三債務者の供託の形を指します。滞納処分は徴収職員が自ら取り立てる手続で民事執行法の外にあるので、供託の根拠は滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律に置かれています。先に入った手続が主導権を持ち、後から重なった手続は前の手続に続行するという調整の仕方が供託の形を決めます。肢で突かれるのは、滞納処分だけなら供託できないこと、強制執行との先後で義務供託と権利供託が入れ替わること、事情届の宛先です。
民事執行法 第156条第2項第三債務者は、次条第一項に規定する訴えの訴状の送達を受ける時までに、差押えに係る金銭債権のうち差し押さえられていない部分を超えて発せられた差押命令、差押処分又は仮差押命令の送達を受けたときはその債権の全額に相当する金銭を、配当要求があつた旨を記載した文書の送達を受けたときは差し押さえられた部分に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託しなければならない。

滞納処分による差押えだけなら第三債務者は供託できません
滞納処分による差押えは、徴収職員が第三債務者から直接取り立てて税に充てる仕組みです。配当を実施する裁判所が関与しないので、民事執行法156条の供託は根拠になりません。「金銭債権に対して滞納処分による差押えのみがされた場合には、第三債務者は、差押金額に相当する金銭を供託することができない」という肢は正しい肢です。「第三債務者は,金銭債権に対して滞納処分による差押えのみがされたときは,その債権の全額に相当する金銭を供託することができる」という肢は誤りです。第三債務者は徴収職員の取立てに応じて支払えば債務を免れます。
強制執行が先で滞納処分が後なら、全額の義務供託です
強制執行による差押えがされている金銭債権に、取立訴訟の訴状の送達を受けるまでに滞納処分による差押えが重なる場面です。滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律により、第三債務者は債権の全額を供託しなければなりません。執行裁判所が配当を実施するので、滞納処分と強制執行の双方の債権者を配当で扱うために義務供託とされています。「AがBに対して有する100万円の金銭債権につき、Cから強制執行による差押え(差押金額60万円)がされた後、Cが提起した取立訴訟の訴状の送達を受ける時までに、D税務署長からの滞納処分による差押え(差押金額50万円)がされたときは、Bは、当該金銭債権の全額に相当する100万円を供託しなければならない」という肢は正しい肢です。供託した第三債務者は執行裁判所に事情届を出します。
滞納処分が先で強制執行が後なら、権利供託にとどまります
滞納処分による差押えがされている金銭債権に強制執行による差押命令が送達されたときは、第三債務者は債権の全額を供託することができますが、義務ではありません。先に入った滞納処分が続行し、徴収職員等が取立てと配当を進めるからです。「第三債務者は、滞納処分による差押えがされた金銭債権について強制執行による差押命令の送達を受けたときは、当該金銭債権の全額に相当する金銭を供託しなければならない」という肢は誤りです。供託したときの事情届は執行裁判所ではなく徴収職員等に対してします。
仮差押えと滞納処分の競合は権利供託で、事情届も徴収職員等にします
仮差押えの執行がされた金銭債権に滞納処分による差押えが重なった場合も、第三債務者は全額を供託することができるにとどまります。「金銭債権の一部について仮差押えの執行がされた場合において,その残余の部分を超えて滞納処分による差押えがされたときは,第三債務者は,その金銭債権の全額に相当する金銭を供託しなければならない」という肢は誤りです。供託したときの事情届の宛先は徴収職員等で、執行裁判所ではありません。「金銭債権に対する仮差押えの執行と滞納処分による差押えが競合した場合において,第三債務者が当該金銭債権の全額に相当する金銭を供託したときは,第三債務者は,執行裁判所に事情届をしなければならない」という肢は誤りです。仮差押えは配当手続を始めない手続なので、滞納処分が主導権を持ちます。
民事執行法 第156条第4項第三債務者は、前三項の規定による供託をしたときは、その事情を執行裁判所に届け出なければならない。
試験ではこう問われる
- 滞納処分による差押えだけで第三債務者が供託できるかのように書く肢
- 強制執行と滞納処分の先後をひっくり返して義務供託と権利供託をすり替える肢
- 仮差押えと滞納処分の競合で全額の供託を義務とする肢
- 滞納処分が絡む供託の事情届を執行裁判所宛てにする肢
この用語が問われた肢
金銭債権に対して滞納処分による差押えのみがされた場合には、第三債務者は、差押金額に相当する金銭を供託することができない。
AがBに対して有する100万円の金銭債権につき、Cから強制執行による差押え(差押金額60万円)がされた後、Cが提起した取立訴訟の訴状の送達を受ける時までに、D税務署長からの滞納処分による差押え(差押金額50万円)がされたときは、Bは、当該金銭債権の全額に相当する100万円を供託しなければならない。
第三債務者は、滞納処分による差押えがされた金銭債権について強制執行による差押命令の送達を受けたときは、当該金銭債権の全額に相当する金銭を供託しなければならない。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。
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