第三債務者の義務供託だいさんさいむしゃのぎむきょうたく
差押えが競合するなど民事執行法156条2項・3項の場面で、第三債務者が差押えに係る金銭債権の全額などを供託しなければならない制度です。何が競合すれば義務になるのか、配当要求のときはいくら供託するのかで肢が作られます。
第三債務者の義務供託は、複数の債権者の執行が一つの金銭債権に重なったとき、第三債務者が供託所に金銭を預けなければならない場面です。民事執行法156条2項は、取立訴訟の訴状の送達を受けるまでに差押えの競合や配当要求があったときの供託義務を定め、3項は供託命令を受けたときの義務を定めます。差押債権者が複数いると誰にいくら払うべきかを第三債務者が判断できないので、執行裁判所の配当に委ねるために義務とされています。肢で突かれるのは、どの組合せが競合にあたるか、配当要求のときはいくら供託するか、仮差押えや滞納処分が混ざったときはどうなるかです。
民事執行法 第156条第2項第三債務者は、次条第一項に規定する訴えの訴状の送達を受ける時までに、差押えに係る金銭債権のうち差し押さえられていない部分を超えて発せられた差押命令、差押処分又は仮差押命令の送達を受けたときはその債権の全額に相当する金銭を、配当要求があつた旨を記載した文書の送達を受けたときは差し押さえられた部分に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託しなければならない。

差押えの合計が債権額を超えたら全額を供託しなければなりません
差押えに係る金銭債権のうち差し押さえられていない部分を超えて、別の差押命令や差押処分、仮差押命令の送達を受けると、第三債務者は債権の全額を供託しなければなりません。合計が債権額に収まる間は競合にあたらず、権利供託にとどまります。「AがBに対して有する100万円の金銭債権につき、Cから強制執行による差押え(差押金額60万円)がされた後、Cが提起した取立訴訟の訴状の送達を受ける時までに、Dを仮差押債権者とする仮差押命令(仮差押金額50万円)の送達を受けたときは、Bは、当該金銭債権の全額に相当する100万円を供託しなければならない」という肢は正しい肢です。差押えの後に仮差押命令が重なった場合も、60万円と50万円の合計が100万円を超えるので義務供託になります。供託すべき額は差押えの合計ではなく債権の全額です。
配当要求のときは差し押さえられた部分だけを供託します
差押えの後に配当要求があった旨を記載した文書の送達を受けた第三債務者は、差し押さえられた部分に相当する金銭を供託しなければなりません。配当要求は既にある差押えの範囲で配当に加わる手続なので、差押えを超える部分まで供託する義務はありません。「金銭債権の一部に対する差押命令の送達後、配当要求があった旨を記載した文書の送達を受けた第三債務者は、当該金銭債権の全額に相当する金銭を供託しなければならない」という肢は誤りです。差押命令の競合なら全額、配当要求なら差押部分という額の違いが問われます。
仮差押えが先でも、後から差押えが重なれば義務供託になります
民事保全法50条5項は民事執行法156条を仮差押えの執行に準用します。だから仮差押えの執行を受けた債権に、仮差押えされていない部分を超える差押命令の送達があれば、第三債務者は全額を供託しなければなりません。「金銭債権の全部に対して仮差押えの執行がされた後、当該金銭債権の一部に対して差押えがされたときは、第三債務者は、当該金銭債権の全額に相当する金銭を供託しなければならない」という肢は正しい肢です。全部が仮差押えされていれば、どんな小さな差押えでも仮差押えされていない部分を超えます。仮差押えだけが二本重なった場合は配当手続が始まらないので、供託実務では義務にならず権利供託にとどまる扱いです。
滞納処分は、強制執行が先なら義務供託、後なら権利供託です
滞納処分による差押えと強制執行による差押えが重なったときは、滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律が供託の形を決めます。強制執行の差押えが先にあり、取立訴訟の訴状送達までに滞納処分による差押えが重なったときは、第三債務者は債権の全額を供託しなければなりません。「AがBに対して有する100万円の金銭債権につき、Cから強制執行による差押え(差押金額60万円)がされた後、Cが提起した取立訴訟の訴状の送達を受ける時までに、D税務署長からの滞納処分による差押え(差押金額50万円)がされたときは、Bは、当該金銭債権の全額に相当する100万円を供託しなければならない」という肢は正しい肢です。反対に滞納処分が先に入り、後から強制執行の差押命令が送達された場合は、供託できるにとどまります。「第三債務者は、滞納処分による差押えがされた金銭債権について強制執行による差押命令の送達を受けたときは、当該金銭債権の全額に相当する金銭を供託しなければならない」という肢は誤りです。
供託命令の送達を受けたときも全額を供託しなければなりません
令和4年の民事執行法改正で161条の2の供託命令が加わり、令和5年2月20日の施行以後は156条3項が供託命令の送達を受けた第三債務者の供託義務を定めています。差押債権者の住所や氏名を秘匿する決定がされている場合などに、執行裁判所が差押債権者の申立てにより第三債務者へ供託を命じる仕組みです。供託命令を受けた第三債務者は、差押えに係る金銭債権の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託しなければなりません。供託した後は他の義務供託と同じく執行裁判所に事情届を出します。
民事執行法 第156条第3項第三債務者は、第百六十一条の二第一項に規定する供託命令の送達を受けたときは、差押えに係る金銭債権の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託しなければならない。
試験ではこう問われる
- 差押えの合計が債権額を超えるかどうかで、供託義務の有無をすり替える肢
- 配当要求文書の送達で全額の供託を義務とする肢
- 仮差押えだけの競合や、仮差押えの後の差押えで義務の有無を問う肢
- 滞納処分と強制執行の先後で義務供託か権利供託かをすり替える肢
この用語が問われた肢
AがBに対して有する100万円の金銭債権につき、Cから強制執行による差押え(差押金額60万円)がされた後、Cが提起した取立訴訟の訴状の送達を受ける時までに、Dを仮差押債権者とする仮差押命令(仮差押金額50万円)の送達を受けたときは、Bは、当該金銭債権の全額に相当する100万円を供託しなければならない。
AがBに対して有する100万円の金銭債権につき、Cから強制執行による差押え(差押金額60万円)がされた後、Cが提起した取立訴訟の訴状の送達を受ける時までに、Dを差押債権者とする差押命令(差押金額30万円)の送達を受けたときは、Bは、当該金銭債権の全額に相当する100万円を供託しなければならない。
金銭債権の一部に対する差押命令の送達後、配当要求があった旨を記載した文書の送達を受けた第三債務者は、当該金銭債権の全額に相当する金銭を供託しなければならない。
金銭債権の全部に対して仮差押えの執行がされた後、当該金銭債権の一部に対して差押えがされたときは、第三債務者は、当該金銭債権の全額に相当する金銭を供託しなければならない。
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