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譲渡・差押え競合と債権者不確知じょうとさしおさえきょうごうとさいけんしゃふかくち

供託 第2章 弁済供託 過去問で20肢

債権の二重譲渡や譲渡と差押えの競合で債務者が誰に払えばよいか分からなくなった場面と、債権者不確知の供託や民法466条の2の供託の関係です。同時到達では不確知にならないという判例と、差押えが競合したときは執行供託になるという切り分けが肢で突かれます。

譲渡・差押え競合と債権者不確知は、債権が二重に譲渡されたり、譲渡と差押えが重なったりして、債務者が誰に弁済すればよいか分からなくなった場面で、どの供託を使うかの整理です。確定日付のある通知の先後が分かれば債権者は確定し、同時到達なら各譲受人に全額の請求権があるので、いずれも不確知にはなりません。到達の先後が不明なときに限って、供託実務では不確知の供託が認められています。差押えどうしが競合したときは民事執行法156条の執行供託になり、譲渡制限特約付き債権の譲渡は民法466条の2の供託で処理します。肢で突かれるのは、場面ごとにどの供託が使えるかの当てはめです。

民法 第467条第2項

前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。

同じ証書を掲げて同時に到着した二人と、縄を持って近づくもう一人、困る債務者
二重譲渡の同時到達は不確知にならず、先後不明なら不確知、差押えの競合なら執行供託、譲渡制限特約なら民法466条の2です
同時到達は不可先後不明は可転付命令確定は不可466条の2は譲渡人と譲受人に通知

同時到達は不確知にならず、先後不明は不確知になります

判例は、確定日付のある譲渡通知が同時に到達したときは各譲受人が債務者に全額を請求でき、債務者はいずれかに弁済すれば免責されるとします。債権者が誰か分からない状態ではないので、「指名債権がA及びBに二重に譲渡され,確定日付のある各譲渡通知が同時に債務者に到達した場合には,債務者は,A又はBを被供託者として債権者不確知を原因とする供託をすることができる」という肢は誤りです。他方で、通知の到達の先後が分からないときは、債務者には優劣を判断する手段が無く過失なく債権者を確知できないので、供託実務では不確知を原因とする供託が認められています。同時到達と先後不明は似ていますが、供託の可否は逆になります。譲渡通知と差押命令の到達の先後が不明なときは、供託実務では民法494条と民事執行法156条を根拠にする混合供託として扱われています。

転付命令が確定すれば差押債権者が債権者です

譲渡禁止の特約がある債権でも、差押えと転付命令は特約に妨げられません。転付命令が確定すると差押債権者が債権者になるので、第三債務者が差押債権者の善意・悪意を知らなくても不確知にはなりません。「差押債権者が当該特約の存在について善意無重過失であるかどうかを第三債務者が知ることができないときは,第三債務者は,差押債権者又は執行債務者を被供託者として債権者不確知を原因とする供託をすることができる」という肢は誤りです。差押えが複数重なって競合したときは、不確知ではなく民事執行法156条2項の執行供託の義務が生じます。

譲渡制限特約付き債権の譲渡は民法466条の2の供託です

令和2年4月1日施行の債権法改正により、譲渡制限の意思表示がされた金銭債権が譲渡されたときは、債務者は譲受人の善意・悪意にかかわらず、民法466条の2により債権の全額を供託できます。供託した債務者は譲渡人と譲受人の両方に通知し、「その債権の全額に相当する金銭を供託した債務者は、譲渡人に供託の通知をすることを要しない」という肢は誤りです。還付を請求できるのは譲受人に限られます。改正前は「債権譲受人の善意・悪意を知ることができないときは,債権者不確知を原因とする弁済供託をすることができる」という肢が正しい肢でした。令和2年4月1日以後に締結された譲渡契約には新法が適用されて根拠が民法466条の2に移り、それより前の譲渡契約には旧法が適用されるので不確知の供託が今も残ります。

払渡請求権の譲渡通知は受諾の明示が無くても受諾と扱われます

被供託者が供託物還付請求権を譲渡し、供託所に書面でその旨を通知したときは、供託実務では通知に受諾の明示が無くても供託を受諾したものと扱われ、供託者は取り戻せなくなります。「その通知に供託を受諾する旨が積極的に明示されていない限り,供託者は,供託物の取戻請求をすることができる」という肢は誤りです。還付請求権を譲渡する行為は、被供託者が供託を前提として権利を処分した行為だからです。払渡請求権そのものに差押えが競合したときは、供託官が事情届をして執行裁判所の支払委託で払い渡します。

会社法上の供託は本店所在地の供託所にします

譲渡制限株式の取得者から承認を求められた株式会社が、承認せずに自ら買い取る旨を通知することがあります。通知をする株式会社は会社法141条2項により、一株当たり純資産額に株式数を乗じた額を本店の所在地の供託所に供託します。「株式会社が譲渡を承認せず対象株式を買い取る旨の通知をしようとするときの供託は,その株式会社の本店の所在地の供託所にしなければならない」という肢は正しい肢です。債権の譲渡と差押えの競合とは別の場面ですが、供託の管轄として同じ問題に並ぶ論点です。

民法 第466条の2

(譲渡制限の意思表示がされた債権に係る債務者の供託)
債務者は、譲渡制限の意思表示がされた金銭の給付を目的とする債権が譲渡されたときは、その債権の全額に相当する金銭を債務の履行地(債務の履行地が債権者の現在の住所により定まる場合にあっては、譲渡人の現在の住所を含む。次条において同じ。)の供託所に供託することができる。
前項の規定により供託をした債務者は、遅滞なく、譲渡人及び譲受人に供託の通知をしなければならない。
第一項の規定により供託をした金銭は、譲受人に限り、還付を請求することができる。

試験ではこう問われる

  1. 二重譲渡の通知が同時到達したとき不確知供託できるか(できない。先後不明なら実務上できる)
  2. 転付命令が確定した譲渡禁止特約付き債権を不確知供託できるか(できない。差押債権者が債権者)
  3. 譲渡制限特約付き金銭債権が譲渡されたときの供託の根拠は(民法466条の2。通知は譲渡人と譲受人の両方)
  4. 還付請求権の譲渡通知に受諾の明示が無ければ供託者は取り戻せるか(取り戻せない。受諾と扱われる)
  5. 譲渡制限株式の買取通知のための供託はどこにするか(本店所在地の供託所)

この用語が問われた肢

R7 問9 ア誤り

債権が二重に譲渡され、それぞれ債務者に対する確定日付のある証書による通知がされた場合において、各通知が同時に債務者に到達したときは、債務者は、債権者不確知を原因とする供託をすることができる。

解説と関連先例は肢別演習で読めます。

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