供託の管轄きょうたくのかんかつ
どの供託所に供託すべきかの定めで、弁済供託は債務の履行地、裁判上の担保供託は裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内、営業保証供託は主たる事務所の最寄りの供託所です。供託の種類ごとに違う管轄を取り違えさせる肢が定番です。
供託の管轄は、供託をどの供託所にしなければならないかの定めです。弁済供託は民法495条1項により債務の履行地の供託所にし、金銭債権を差し押さえられた第三債務者の執行供託も民事執行法156条により債務の履行地の供託所にします。民事訴訟法76条の担保供託は担保を立てるべきことを命じた裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所で、営業保証供託は主たる事務所の最寄りの供託所です。選挙供託のように管轄の定めが無い供託は、どこの供託所にもできます。肢で突かれるのは、履行地がどこかの当てはめと、供託の種類ごとの管轄の取り違えです。
民法 第495条第1項前条の規定による供託は、債務の履行地の供託所にしなければならない。

弁済供託の履行地は持参債務なら債権者の住所地です
弁済の場所に別段の意思表示が無ければ、民法484条により債権者の現在の住所で弁済します。持参債務の弁済供託は債権者の住所地の供託所にするのが原則です。賃貸人が死亡して相続人が不明なときの賃料の供託について、「賃借人の現在の住所地の供託所にしなければならない」という肢は誤りです。「当該建物の所在地の最寄りの供託所に供託をすることができる」という肢も誤りで、建物の所在地は履行地ではありません。被供託者をAまたはBとする債権者不確知の供託で両者の住所地の供託所が異なるときは、いずれの供託所にも供託できます。
債権者の住所が不明なら最後の住所地です
持参債務で債権者の所在が分からないときは、供託実務では債権者の最後の住所地が履行地として扱われています。「不法行為に基づく損害賠償債務について,債権者の住所が不明である場合の受領不能を原因とする弁済供託は,不法行為があった地の供託所にすることができる」という肢は誤りです。不法行為に基づく損害賠償債務も持参債務で、不法行為地は履行地ではありません。履行地の属する行政区画内に供託所が無いときは、その地を包括する行政区画内の最寄りの供託所にすれば足ります。
裁判上の担保供託は裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の区域内です
民事訴訟法76条は、担保を立てるべきことを命じた裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所に供託すると定めます。「民事訴訟の訴訟費用の担保のために行う担保供託は,担保を立てるべきことを命じた裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所にしなければならない」という肢は正しい肢です。管轄区域内であればどの供託所でもよく、「いずれの供託所にもすることができる」という肢も正しい肢です。民事保全法の担保供託は発令裁判所または保全執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内でもよく、仮差押解放金も同じ範囲の供託所にします。仮差押解放金について「債務の履行地の供託所にしなければならない」という肢は誤りです。
営業保証供託は主たる事務所の最寄りの供託所です
宅地建物取引業者の営業保証金は、主たる事務所の最寄りの供託所に供託します。「複数の事務所を有している場合には,それぞれの事務所の最寄りの供託所にしなければならない」という肢は誤りです。「事業の開始後新たに事務所を設置したときの営業保証金の供託は,主たる事務所の最寄りの供託所にしなければならない」という肢は正しい肢で、事務所を増やしても供託先は主たる事務所の最寄りのままです。会社法上の供託にも管轄の定めがあり、譲渡制限株式の買取通知のための供託は本店の所在地の供託所にします。
選挙供託に管轄は無く、執行供託は履行地です
選挙供託には管轄の定めが無く、「候補者の選挙区又はその最寄りの供託所にしなければならない」という肢は誤りです。金銭債権を差し押さえられた第三債務者の執行供託は債務の履行地の供託所で、「債務者の住所地の供託所にしなければならない」という肢は誤りです。執行裁判所の所在地を基準にする肢も誤りで、裁判上の担保供託と混同させる作りです。管轄を誤った弁済供託は本来は無効ですが、供託実務では取戻しの前に被供託者が受諾や還付請求をすれば、初めから有効な供託として扱われています。
民事訴訟法 第76条(担保提供の方法)
担保を立てるには、担保を立てるべきことを命じた裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所に金銭又は裁判所が相当と認める有価証券(社債、株式等の振替に関する法律(平成十三年法律第七十五号)第二百七十八条第一項に規定する振替債を含む。次条において同じ。)を供託する方法その他最高裁判所規則で定める方法によらなければならない。ただし、当事者が特別の契約をしたときは、その契約による。
試験ではこう問われる
- 賃貸人死亡後の賃料の債権者不確知供託はどこにするか(賃貸人の住所地。賃借人の住所地や建物所在地ではない)
- 債権者の住所が不明な損害賠償債務の供託はどこにするか(債権者の最後の住所地。不法行為地ではない)
- 裁判上の担保供託の管轄はどこか(担保を命じた裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所)
- 営業保証金は事務所ごとに供託するか(主たる事務所の最寄りの供託所だけ)
- 仮差押解放金と選挙供託の管轄は(仮差押解放金は裁判所の所在地を管轄する地裁の区域内、選挙供託はどこでも)
この用語が問われた肢
建物の賃貸人が死亡した場合において,賃借人が持参債務である賃料につき債権者不確知を原因として弁済供託をしようとするときは,当該建物の所在地の最寄りの供託所に供託をすることができる。
不法行為に基づく損害賠償債務について,債権者の住所が不明である場合の受領不能を原因とする弁済供託は,不法行為があった地の供託所にすることができる。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。
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