債権者不確知さいけんしゃふかくち
弁済者が過失なく債権者が誰かを知ることができないことで、民法494条2項の供託原因です。どの事情なら不確知と認められ、どの事情なら認められないかが判例を軸に肢で突かれます。
債権者不確知は、弁済者が債権者を確知することができないことで、民法494条2項が定める弁済供託の原因です。債権者が死亡して相続人が分からない、債権の帰属を複数の者が争っているといった場面で使います。弁済者に過失があるときは供託できないので、どこまで調べれば過失が無いと言えるかが問題になります。供託書の被供託者の欄には、候補者が特定できれば「A又はB」のように並べ、相続人が不明なら「亡Aの相続人」のように記載します。肢で突かれるのは、判例が不確知にあたるとした場面とあたらないとした場面の区別です。
民法 第494条第2項弁済者が債権者を確知することができないときも、前項と同様とする。ただし、弁済者に過失があるときは、この限りでない。

賃貸人の相続人が不明なら戸籍を調べずに供託できます
建物の賃貸人が死亡し、相続人の有無が賃借人に分からないときは、債権者不確知で賃料を供託できます。「賃借人は,戸籍により賃貸人の相続人の有無を調査しなくても,債権者不確知を原因とする賃料の供託をすることができる」という肢は正しい肢です。賃借人は他人の戸籍を自由に調べられる立場にないので、調査しないことが過失にはなりません。「賃借人は,当該賃貸人の相続人の有無について戸籍を調査した後でなければ,債権者不確知を原因とする弁済供託をすることはできない」という肢は誤りです。
二重譲渡の通知が同時に到達したときは不確知になりません
債権が二重に譲渡され、確定日付のある通知が同時に債務者に到達したときは、判例により各譲受人は債務者に全額を請求でき、債務者はいずれかに弁済すれば免責されます。債権者が分からない状態ではないので、不確知を原因とする供託はできません。「各通知が債務者に同時に到達したときは,債務者は,被供託者をA又はBとして債権者不確知を原因とする弁済供託をすることができる」という肢は誤りです。他方で供託実務では、通知の到達の先後が不明なときは不確知を原因とする供託が認められています。
転付命令が確定した債権は差押債権者が債権者です
譲渡禁止の特約がある債権でも転付命令は妨げられず、転付命令が確定すれば差押債権者が債権者になります。「第三債務者が差押債権者の善意・悪意を知ることができないときは,被供託者を差押債権者又は執行債務者として債権者不確知を原因とする弁済供託をすることができる」という肢は誤りです。差押債権者の善意・悪意は転付命令の効力に関わらないからです。他方で預金者が誰かを元夫婦が争って係争中の事案では、「銀行は,債権者不確知を原因として供託をすることができる」という肢が正しい肢になります。
譲渡制限特約付きの債権は民法466条の2で供託できます
令和2年4月1日施行の債権法改正で、譲渡制限の意思表示がされた金銭債権が譲渡されたときの供託が民法466条の2に置かれました。債務者は譲受人の善意・悪意を問わず債権の全額を供託できます。「債務者は、譲渡制限の意思表示がされた金銭債権が譲渡されたときは、その債権の全額に相当する金銭を供託することができる」という肢は正しい肢です。改正前は譲受人の善意・悪意が分からないことを理由に不確知で供託していましたが、今は根拠法令が民法466条の2に変わります。還付を請求できるのは譲受人に限られる点も、不確知の供託とは異なります。
不確知の供託の還付には他の被供託者の承諾か判決が要ります
被供託者の一人が還付を受けるには、自分が債権者であることを証する書面として、他の被供託者の承諾書や被供託者間の確定判決を添付します。供託者の承諾書では足りず、「供託者の承諾書及び当該承諾書に押された印鑑に係る印鑑証明書をもって,還付を受ける権利を有することを証する書面とすることができる」という肢は誤りです。供託官が他の被供託者に異議を催告する仕組みも無く、「当該期間が経過したときは,Aは,還付を受ける権利を有することを証する書面を添付することなく,供託物の払渡しを受けることができる」という肢は誤りです。被供託者以外の第三者は、被供託者全員を相手に勝訴しても還付を受けられません。
民法 第466条の2(譲渡制限の意思表示がされた債権に係る債務者の供託)
債務者は、譲渡制限の意思表示がされた金銭の給付を目的とする債権が譲渡されたときは、その債権の全額に相当する金銭を債務の履行地(債務の履行地が債権者の現在の住所により定まる場合にあっては、譲渡人の現在の住所を含む。次条において同じ。)の供託所に供託することができる。
前項の規定により供託をした債務者は、遅滞なく、譲渡人及び譲受人に供託の通知をしなければならない。
第一項の規定により供託をした金銭は、譲受人に限り、還付を請求することができる。
試験ではこう問われる
- 賃貸人の相続人が不明なとき戸籍を調べずに不確知供託できるか(できる)
- 二重譲渡の通知が同時到達したとき不確知供託できるか(できない。先後不明なら実務上できる)
- 転付命令が確定した債権を不確知供託できるか(できない。差押債権者が債権者)
- 譲渡制限特約付き金銭債権が譲渡されたとき供託できるか(できる。民法466条の2)
- 不確知供託の還付に供託者の承諾書で足りるか(足りない。他の被供託者の承諾書か確定判決)
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