労働組合と組合員(28条・労働組合法)ろうどうくみあいとくみあいいん
労働組合と組合員とは、労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体と、その構成員です。労働組合は憲法28条の団結権保障の効果として組合員に対する統制権をもち、組合員は組合活動への協力義務を負いますが、いずれも組合員個人の基本的自由との調和で限界づけられます。
会社の労働組合が市議会議員の選挙に統一候補を立てていたところ、組合員の一人が方針に反して独自に立候補したとします。組合は団結を守るために組合員を処分する統制権をもちますが、この人を除名することはできません。組合員は一人の市民でもあり、誰が立候補し誰に投票するかは市民として自分で決める事柄だからです。判例は、統制権や協力義務を認めながら、組合員個人の基本的利益との調和という限界を引いてきました。

労働組合は団結権の効果として統制権をもちますが、目的の範囲内ならすべての活動に及ぶわけではありません
労働組合法2条は、労働組合を、労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体と定めています。最大判昭和43年12月4日(三井美唄労組事件)は、憲法28条による労働者の団結権保障の効果として、労働組合はその目的を達成するために必要であり、かつ、合理的な範囲内において、組合員に対する統制権を有するとしました。「労働組合は、労働者の団結権保障の効果として、その目的を達成するために必要であり、かつ、合理的な範囲内において、その組合員に対する統制権を有する」という肢(R8 問1 ウ)は正しいです。統制権は団結権保障に由来する権能で、法律の根拠がなくても認められます。もっとも、その範囲は目的達成に必要かつ合理的な範囲に限られます。目的の範囲内の活動であればすべての活動について統制権が及ぶわけではなく、除名処分は組合員としての地位を失わせて権利義務に直接影響しますから、組合員の一般市民としての権利利益に関わる場面では司法審査も及びます。統制権は組合からの脱退の自由を前提として初めて容認されるものですから、組合員に脱退する権利をおよそ行使しないことを義務づける合意も、脱退の自由という重要な権利を奪うものとして効力を認められません。
- 統制権団結権保障の効果として、目的達成に必要かつ合理的な範囲内で、組合の決定に従わない組合員を処分できる権能
- 協力義務組合が正規の手続で決定した活動に参加し、その経済的基礎をなす組合費を納付する義務
- ユニオン・ショップ協定労働協約で、組合に加入しない者や組合員でなくなった者を解雇する義務を使用者に負わせる定め
- 不当労働行為使用者による不利益取扱い・団体交渉拒否・支配介入などを禁じ、労働委員会が救済する仕組み(労働組合法7条)

統制権は立候補の自由を奪うところまでは及びません
三井美唄労組事件は、統制権の限界を立候補の自由で画しました。組合が組合員の生活利益の向上のために利益代表を議会に送り込もうとし、統一候補を決定して組合を挙げて選挙運動を推進すること自体は、組合の活動として許されます。統一候補以外の組合員で立候補しようとする者に対し、立候補を思いとどまるよう勧告または説得することも、組合として当然にできます。しかし、公職選挙における立候補の自由は、選挙権の自由な行使と表裏の関係にあり、憲法15条1項の趣旨に照らして基本的人権の一つとして保障される重要な権利ですから、これに対する制約は特に慎重でなければならず、統制の必要性と立候補の自由の重要性とを比較衡量して許否を決めることになります。判例は、勧告または説得の域を超えて立候補を取りやめることを要求し、これに従わないことを理由に統制違反者として処分することは、統制権の限界を超えて違法だとしました。除名より軽い権利停止の処分でも許されません。立候補の自由が奪われるかどうかは処分の重さではなく、勧告や説得の域を超えて処分で立候補を断念させようとしたかどうかで決まるからです。
政治的な臨時組合費の納入義務は、組合活動の実効性と組合員個人の基本的利益を比較衡量して限定されます
組合員は、組合の構成員である限り、組合が正規の手続に従って決定した活動に参加し、その経済的基礎をなす組合費を納付する協力義務を負います。最判昭和50年11月28日(国労広島地本事件)は、この協力義務の範囲を比較衡量で決めました。労働組合の活動が政治的活動や社会的活動にまで広がり、組合員が一個の市民として有する自由と衝突する場合が増えている一方で、組合に加入していることが労働者にとって重要な利益であり、脱退の自由も事実上大きな制約を受けていますから、組合の活動として許されるというだけで協力義務を無条件に肯定するのは相当でないというのが理由です。「労働組合の多数決による政治的活動に対してこれと異なる政治的思想、見解、判断等を持つ個々の組合員の協力義務を一般的に認めることは、組合員の個人としての政治的自由を侵害するものではない」という肢(R8 問1 エ)は誤りです。この枠組みから、組合が支援する候補者の所属政党への寄付や、組合出身の立候補者の選挙運動の応援のために徴収する臨時組合費については、組合員は納入義務を負いません。どの政党や候補者を支持するかは、投票の自由と表裏をなすものとして組合員各人が自主的に決めるべき事柄だからです。組合が組織として支持政党や統一候補を決めて選挙運動を推進すること自体は自由ですが、その費用の負担を組合員に強制することはできません。他方、他の組合の争議を支援するための資金や、安保反対闘争で処分を受けた組合員の救援資金のように、組合員の政治的自由を直接に侵さない支出については納入義務が認められます。安保反対闘争のような活動への参加そのものを強制することはできませんが、処分を受けた仲間を救援することは労働者の生活利益の擁護にとどまるからです。もっとも、政治的活動がただちに組合の目的の範囲外になるわけではありません。

ユニオン・ショップ協定のうち、他の組合に加入している者の解雇義務を定める部分は無効です
ユニオン・ショップ協定は、労働協約において、組合に加入しない者や組合員でなくなった者を使用者が解雇する義務を負う定めを置くもので、解雇の威嚇のもとに加入を事実上強制して組合の組織を強化する仕組みです。労働組合法7条1号ただし書は、労働組合が特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数を代表する場合に、組合員であることを雇用条件とする労働協約を結ぶことを不当労働行為の例外として認めていますから、協定そのものが無効になるわけではありません。最判平成元年12月14日(三井倉庫港運事件)は、労働者には自らの団結権を行使するため労働組合を選択する自由があり、締結組合の団結権と同様に他の労働組合の団結権も等しく尊重されるべきだとして、協定の効力を一部否定しました。判決は、協定のうち、締結組合以外の他の組合に加入している者や、締結組合から脱退・除名されたが他の組合に加入し又は新たな組合を結成した者について使用者の解雇義務を定める部分は、労働者の組合選択の自由や他の組合の団結権を侵害するもので、民法90条により無効としました。協定そのものが無効になるのではなく、他組合に加入している者や別組合を結成した者について解雇義務を定める部分だけが無効になりますから、その者を協定に基づいて解雇しても解雇は無効です。

労働基本権は私人間にも意味をもち、契約自由の原則を制限します
憲法28条は、経済的に劣位に立つ労働者が団結の力で使用者と実質的に対等な立場で交渉できるようにするための規定ですから、その保障はもともと私人である使用者との関係を念頭に置いています。28条は国家に対する権利であると同時に、使用者との関係でも直接に意味をもち、団結権や争議権を侵害する契約は無効になります。労働組合法8条は、正当な争議行為によって損害を受けたことを理由に使用者が労働組合や組合員に賠償を請求できないと定めていますが、これは28条の争議権保障から当然に導かれる帰結を確認した規定です。したがって、民事免責を当事者の契約で排除することはできません。三井倉庫港運事件の判決は、無効の根拠を民法90条に置いたうえで憲法28条を参照するにとどめていますが、それは28条が私人間に適用される余地がないという意味ではありません。労働基本権には、国家の干渉を排除する自由権の側面と、国が保障を確実にするため積極的な措置を採るべきだとする社会権の側面があります。「労働基本権は、社会権として、国に対して労働者の労働基本権を保障する措置を実施すべき義務を負わせるという意味を有する」という肢(R8 問1 ア)は正しく、労働組合法7条が使用者の不利益取扱い・団体交渉拒否・支配介入などを不当労働行為として禁止し、同法19条以下の労働委員会がその救済を行う仕組みが、社会権の側面の具体化です。
最大判昭和43年12月4日(三井美唄労組事件)立候補の自由は、選挙権の自由な行使と表裏の関係にあり、自由かつ公正な選挙を維持する上で、極めて重要である。このような見地からすると、憲法一五条一項には、被選挙権者、特にその立候補の自由についても、同様に、これを保障していると解すべきである。
試験ではこう問われる
- 労働組合は、団結権保障の効果として、目的達成に必要かつ合理的な範囲内で組合員に対する統制権を有する(最大判昭和43年12月4日・三井美唄労組事件。R8 問1 ウ ○)
- 統一候補以外の組合員に立候補を思いとどまるよう勧告・説得することはできるが、その域を超えて取りやめを要求し、従わないことを理由に処分することは統制権の限界を超えて違法になる(三井美唄労組事件)
- 組合員の協力義務の範囲は、組合活動の実効性と組合員個人の基本的利益の調和の観点から限定され、政治的活動への協力義務を一般的に認めることはできない(最判昭和50年11月28日・国労広島地本事件。R8 問1 エ ×)
- 選挙運動の応援や政党への寄付のための臨時組合費には納入義務が無く、他組合の争議支援資金や被処分者の救援資金には納入義務がある(国労広島地本事件)
- ユニオン・ショップ協定のうち、他組合の加入者や新たな組合を結成した者の解雇義務を定める部分は民法90条により無効になる(最判平成元年12月14日・三井倉庫港運事件)
- 労働組合法が労働委員会による不当労働行為の救済を定めるのは、労働基本権の社会権の側面の具体化である(R8 問1 ア ○)

