本犯と盗品等関与罪の関係・親族等の間の特例(257条)ほんぱんととうひんとうかんよざいのかんけいしんぞくとうのあいだのとくれい
本犯と盗品等関与罪の関係とは、窃盗などの本犯に関わった者に、その盗品についての盗品等関与罪が重ねて成立するかという問題で、本犯の正犯・共同正犯には成立せず、教唆犯・幇助犯には成立します。親族等の間の特例とは、配偶者・直系血族・同居の親族またはこれらの者の配偶者との間で盗品等関与罪を犯した者の刑を免除する刑法257条の規定をいいます。
泥棒が自分で盗んだ物を家まで運んでも、盗みとは別に「盗品を運んだ罪」で処罰されることはありません。盗んだことの責任の中に、その後の持ち運びも含まれているからです。これに対し、盗みをそそのかしただけの人が、後からその盗品を買い取った場合は扱いが変わります。そそのかした責任と、盗品の流れに加わった責任は別のものなので、両方の罪が成立します。また、盗んだのが息子や夫であれば、家族がついかばって盗品を預かってしまうことがあります。刑法は、そのような家族の刑を免除する特例を置いています。

本犯の正犯・共同正犯には、盗品等関与罪は成立しません
窃盗などの本犯を自ら実行した者が、その盗品を運搬したり保管したりしても、盗品等関与罪は成立しません。盗品を自分で処分する行為は、本犯の罪で評価し尽くされているからです。「Aは,B所有の腕時計を窃取したが,その後,犯行の発覚を恐れ,当該腕時計を自宅で保管していた。この場合において,Aには,窃盗罪に加えて盗品等保管罪が成立する」という肢(R3 問26 ア)は誤りです。本犯の共同正犯も同じです。恐喝の共同正犯が喝取した現金の分け前を受け取っても、盗品等無償譲受け罪にはなりません。これに対し、本犯が終わった後に初めて関わった者は、本犯の共同正犯にはなりません。カードを奪い終えた後に運搬を頼まれて承諾しただけの者には、窃盗罪の共同正犯ではなく、盗品等運搬罪が成立します。運搬させることが当初から計画されていたかどうかは、その者が本犯の実行に関わっていない以上、結論を左右しません。
本犯の教唆犯・幇助犯には盗品等関与罪が成立し、両罪は併合罪になります
本犯を教唆または幇助したにとどまる者は、自ら財物を領得したわけではないので、その後に盗品に関与すれば盗品等関与罪が成立します。最判昭和25年11月10日は、窃盗の教唆者が盗品を有償で譲り受けた場合、窃盗教唆と盗品等有償譲受けの二罪が成立するとしました。罪数は併合罪です。有償処分あっせんについても同じで、最判昭和24年7月30日は、窃盗を教唆しかつ盗品の売却を周旋したときは二罪が成立し、後者が前者に吸収されるものではないとしています。窃盗の教唆と盗品への関与は、罪質上通常手段と結果の関係にあるとはいえないので、牽連犯にはなりません。
- 本犯の正犯・共同正犯盗品等関与罪は成立しない。本犯の罪で評価し尽くされている
- 本犯の教唆犯・幇助犯盗品等関与罪が成立する。本犯の教唆・幇助の罪とは併合罪
- 本犯の終了後に初めて関与した者本犯の共同正犯にはならない。盗品等関与罪が成立する
- 窃盗教唆と有償譲受け・保管・有償処分あっせんいずれも併合罪。牽連犯ではない
257条は、親族等の間で盗品等関与罪を犯した者の刑を免除します
257条1項は、配偶者との間、または直系血族、同居の親族もしくはこれらの者の配偶者との間で256条の罪を犯した者について、その刑を免除すると定めています。免除は必要的であり、裁判所の裁量ではありません。犯罪は成立するので、有罪であることに変わりはなく、刑だけが免除されます。窃盗罪などの親族相盗例(244条)が「配偶者、直系血族又は同居の親族」としているのに対し、257条は「これらの者の配偶者」まで含めている点が異なります。たとえば、息子の妻は、同居していなくても対象になります。同条2項は、親族でない共犯にはこの特例を適用しないと定めています。親族相盗例と違い、告訴がなければ公訴を提起できないとする定めはありません。
- 対象となる関係配偶者/直系血族/同居の親族/これらの者(直系血族・同居の親族)の配偶者
- 効果刑の免除(必要的)。犯罪は成立する
- 親族関係が必要な当事者本犯者と盗品等関与罪の犯人との間
- 親族でない共犯(2項)特例は適用されない
親族関係は、本犯者と盗品等関与罪の犯人との間に必要です
最決昭和38年11月8日は、257条1項は、本犯と盗品等に関する罪の犯人との間に同項所定の関係がある場合に、盗品等に関する罪の犯人の刑を免除する旨を定めたものであるとしました。家族が本犯者をかばい、その利益のために盗品に関わることは、そうしないよう期待しにくいという考え方に基づく規定だからです。盗品等関与罪の犯人が本犯者の配偶者である場合や、同居している甥が盗んできた宝石を事情を知って無償で譲り受けた場合には、刑が免除されます。同居している甥は同居の親族に当たります。これに対し、盗品等関与罪の犯人と本犯の被害者との間に親族関係があっても、特例は適用されません。盗品の被害者が実父などの直系血族であっても、本犯者と親族関係がなければ刑は免除されません。実父が所有し管理している自動車を、親族関係にない窃盗犯人に頼まれて運搬した場合も、盗品等運搬罪が成立し、刑は免除されません。盗品等関与罪の犯人どうしの間に親族関係があっても同じです。「Aは,Bが窃取した宝石であることを知りながら,Bからこれを譲り受け,Cは,当該宝石がBが窃取した盗品であることを知りながら,Aから頼まれて,これを自動車で運搬した。この場合において,AとCとの間に婚姻関係があり,BとCとの間には刑法第 257 条第 1 項所定の関係がないときは,Cには,盗品等運搬罪が成立するが,その刑が免除される」という肢(R3 問26 ウ)は誤りです。同決定は、盗品等に関する罪の犯人相互の間に配偶者の関係があっても刑を免除すべきでないとしています。

244条の親族相盗例は、被害者との間の親族関係を見る点で257条と異なります
窃盗罪などに適用される244条は、犯人と被害者との間の親族関係を理由に刑を免除する規定で、親族間の財産の争いには国家が介入を控えるという考え方に基づきます。257条は、犯人と本犯者との間の親族関係を理由とする規定で、趣旨も、必要な親族関係の当事者も異なります。そのため、同じ人について二つの特例の結論が分かれることがあります。父親の時計を友人に盗ませ、その売却をあっせんした事例では、窃盗の教唆については被害者である父との関係で244条により刑が免除されますが、盗品等有償処分あっせん罪については、本犯者である友人との間に親族関係がないので257条は適用されず、刑は免除されません。
刑法 第257条第1項配偶者との間又は直系血族、同居の親族若しくはこれらの者の配偶者との間で前条の罪を犯した者は、その刑を免除する。
刑法 第257条第2項前項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。
試験ではこう問われる
- 本犯の正犯・共同正犯には盗品等関与罪は成立しない。窃盗犯人が盗品を自宅で保管しても、盗品等保管罪は成立しない(R3 問26 ア ×)
- 本犯の終了後に運搬だけを引き受けた者には、本犯の共同正犯ではなく盗品等運搬罪が成立する
- 窃盗を教唆した者が盗品を有償で譲り受ければ、窃盗教唆罪と盗品等有償譲受け罪が成立し、併合罪になる(最判昭和25年11月10日)
- 窃盗教唆罪と盗品等有償処分あっせん罪、窃盗教唆罪と盗品等保管罪も、牽連犯ではなく併合罪になる
- 257条1項の親族関係は、本犯者と盗品等関与罪の犯人との間に必要である(最決昭和38年11月8日)
- 同居の長男の依頼で、長男が本犯者から有償で譲り受けた盗品を運搬しても、本犯者との間に親族関係がなければ刑は免除されない(R5 問26 4 ○)
- 盗品等関与罪の犯人どうしが夫婦であっても、本犯者と親族関係がなければ刑は免除されない(R3 問26 ウ ×)

