司法書士試験AIブートラボ 司法書士試験AIブートラボ

恐喝罪(強盗との区別・処分行為)きょうかつざい

刑法 第13章 財産犯(詐欺・横領・背任ほか)

恐喝罪とは、相手方の反抗を抑圧するに至らない程度の暴行または脅迫を加えて畏怖させ、その畏怖に基づいて財物を交付させ、または財産上不法の利益を得る罪です。暴行・脅迫が反抗を抑圧するに足りる程度に達していれば、恐喝罪ではなく強盗罪になります。

路上で「金を出さないと殴るぞ」とすごまれ、怖くなって財布を渡した場面を考えます。被害者は、逆らえないほど押さえ込まれたわけではなく、渡さなければ痛い目にあうと考えて、仕方なく自分で渡しています。このように、怖がらせて相手に差し出させるのが恐喝です。ナイフを突き付けて抵抗できなくして奪うのは強盗であり、被害者に「渡すかどうか」を決める余地が残っているかどうかで、二つの罪が分かれます。

夜の路上の場面を左右に並べる。左は男性(札「甲」)が拳を握って通行人の男性をにらみ、通行人が震えながら自分で財布を差し出している。左の札「反抗を抑圧するに至らない程度の脅迫→畏怖して交付:恐喝罪」。右は別の男性が刃物を持った手を背後に隠して

恐喝は、反抗を抑圧するに至らない程度の暴行・脅迫で畏怖させ、財物を交付させる罪です

恐喝とは、財物や利益を交付させる手段として、相手方を畏怖させるような暴行または脅迫を加えることをいい、その程度は相手方の反抗を抑圧するに至らないものです。暴行・脅迫が、社会通念上一般に被害者の反抗を抑圧するに足りる程度であれば、強盗罪になります。恐喝罪の脅迫で告知する害悪は、それ自体が違法なものである必要はありません。他人の犯罪事実を警察に申告すること自体は適法ですが、これを種にして相手を畏怖させ、口止め料を提供させれば恐喝罪になります(最判昭和29年4月6日)。恐喝罪は、脅迫を加えた時点で実行の着手が認められ、未遂も処罰されます(250条)。恐喝の内容の手紙が配達されたが、読んだ家族が冗談と思って本人に伝えなかった場合は、恐喝未遂罪が成立します。

畏怖した相手方が奪取を黙認した場合も、交付に当たり恐喝罪は既遂になります

恐喝罪は、詐欺罪と同じく、被害者の瑕疵ある意思に基づく処分行為を通じて財産を得る罪です。もっとも、被害者が自分の手で渡すことまでは必要ありません。最判昭和24年1月11日は、恐喝罪の本質は被恐喝者の畏怖による瑕疵ある同意を利用する財物の領得行為であるとして、畏怖して黙認しているのに乗じて恐喝者が財物を奪取した場合にも恐喝罪が成立するとしました。畏怖した被害者が上着の内ポケットから財布を抜き取られるのを黙認した場合も、交付行為がないとして未遂にとどまるのではなく、恐喝既遂罪が成立します。財産上の利益についても、最決昭和43年12月11日(黙示の処分行為と恐喝罪)は、飲食代金の請求を脅迫によって断念させた事案で、被害者側の黙示的な少なくとも支払猶予の処分行為が存在するとして、2項恐喝罪の成立を認めています。

夜の路上の場面。男性(札「甲」)が通行人の男性(札「乙:畏怖して黙認」)の上着の内ポケットに手を入れて財布を抜き取っている。乙は顔をこわばらせて立ちすくみ、抵抗していない。手前に先生が解説役(札「解説」)で立ち、吹き出し「乙は自分の手で渡し

うそを交えていても、相手方が畏怖の結果として交付したのであれば、恐喝罪だけが成立します

欺く行為と脅迫の両方が用いられた場合、どちらの罪になるかは、相手方が錯誤と畏怖のどちらによって交付したかで決まります。最判昭和24年2月8日は、警察官と称した虚偽の部分があっても、その部分も相手方に畏怖の念を生じさせる一材料となり、その畏怖の結果として財物を交付したときは、詐欺罪ではなく恐喝罪になるとしました。警察官を装って逮捕されるかもしれないと畏怖させ、盗品を交付させた場合も、恐喝既遂罪が成立します。交付させた物が盗品であっても、窃盗犯人の占有は保護されるので、恐喝罪の成立は妨げられません。食中毒になったとうそを言ってビラをまくと脅した事例でも、被害者がうそと気付きつつ畏怖して現金を渡したのであれば、恐喝既遂罪が成立します。

財物と利益を併せて得れば1個の恐喝罪となり、監禁罪とは併合罪になります

恐喝罪の罪数は、次のように整理されます。1項と2項は同じ罪質なので、1個の行為で財物と利益を得た場合は包括して1個の恐喝罪です(大判明治45年4月15日)。3名をその面前で同時に恐喝してそれぞれ財物を出させた場合は、1個の行為で3名を恐喝しているので、3個の恐喝罪は観念的競合になります(大判明治43年9月27日)。恐喝の手段である暴行で傷害を負わせた場合、恐喝罪と傷害罪は観念的競合です(最判昭和23年7月29日)。大判昭和6年3月18日は、盗品と知りながらこれを所持する者を恐喝して交付を受けた場合に、恐喝罪と盗品等無償譲受け罪が成立するとしており、1個の行為によるものなので観念的競合になります。学説には、本犯者との合意に基づく譲受けとはいえないので恐喝罪だけが成立するとする見解もありますが、いずれにしても併合罪にはなりません。これに対し、恐喝の手段として監禁した場合は、監禁罪と恐喝罪の併合罪になります。最判平成17年4月14日(監禁罪と恐喝罪の罪数)は、恐喝の手段として監禁が行われた場合であっても、両罪は犯罪の通常の形態として手段または結果の関係にあるものとは認められず、牽連犯の関係にはないとしました。

  • 財物の交付を受け、利益も得た包括して1個の恐喝罪
  • 1個の行為で3名を同時に恐喝した3個の恐喝罪の観念的競合
  • 恐喝の手段の暴行で傷害を負わせた恐喝罪と傷害罪の観念的競合
  • 恐喝の手段として監禁した監禁罪と恐喝罪の併合罪(最判平成17年4月14日)
  • 盗品と知って恐喝で交付させた判例は恐喝罪と盗品等無償譲受け罪の観念的競合。併合罪ではない

監禁罪と恐喝罪を併合罪とする見解は、両罪を別個の行為とみて、類型的な手段・結果の関係を否定します

監禁中に脅迫して現金を喝取した場合に監禁罪と恐喝罪が併合罪になるとする見解を考えます。この見解は、監禁行為と恐喝行為を社会的に見て1個の行為とは考えていません。1個の行為と考えるなら、観念的競合になるからです。この見解は、監禁が恐喝の手段として用いられることが類型的に予定されることを根拠とするものでもありません。それを根拠にすれば牽連犯になるからです。この見解は、監禁罪と恐喝罪の関係を、判例における監禁罪と殺人罪の関係と同じように考えています。判例は、別個の殺害行為を予定して逮捕監禁に及んだ場合の監禁罪と殺人罪を併合罪としています(最判昭和63年1月29日)。逮捕罪と監禁罪は、判例上、包括して1個の罪とされているので、この見解の考え方とは異なります。

恐喝罪にも親族相盗例が準用され、直系血族との間では同居していなくても刑が免除されます

251条は、親族間の犯罪に関する特例(244条)を恐喝の罪に準用しています。配偶者、直系血族または同居の親族との間で恐喝罪を犯した者は、刑が免除されます。直系血族については、同居していることは要件ではありません。別居している祖父から現金を脅し取った場合も、恐喝罪が成立し、その刑は免除されます。祖父は直系血族ですから、別居していても刑は免除されます。これに対し、強盗罪には親族相盗例は準用されません。

刑法 第249条第1項

人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。

刑法 第249条第2項

前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

試験ではこう問われる

  1. 恐喝罪の暴行・脅迫は相手方の反抗を抑圧するに至らない程度のもので、反抗を抑圧するに足りる程度であれば強盗罪になる
  2. 告知する害悪の内容は違法なものでなくてもよい。犯罪事実を警察に申告すると告げて口止め料を出させれば恐喝罪が成立する(最判昭和29年4月6日)
  3. 畏怖した被害者が財布を抜き取られるのを黙認した場合も、恐喝既遂罪が成立する(最判昭和24年1月11日)
  4. 警察官を装うなど虚偽の部分があっても、畏怖の結果として交付させれば、詐欺罪ではなく恐喝罪が成立する(最判昭和24年2月8日)
  5. 財物と利益の両方を得れば包括して1個の恐喝罪になり、3名を同時に恐喝すれば観念的競合になる
  6. 恐喝の手段として監禁した場合、監禁罪と恐喝罪は牽連犯ではなく併合罪になる(最判平成17年4月14日)
  7. 別居している祖父を恐喝した場合も、恐喝罪は成立するが刑は免除される(251条・244条1項)

司法書士試験AIブートラボ

司法書士試験の対策を、
スマホひとつで。

過去問の肢別演習、記述式と雛形ドリル、先例と条文、用語集。司法書士試験の勉強に使う教材をひとつのアプリにまとめました。

関連する用語

自由・私生活の平穏に対する罪

脅迫罪・強要罪

脅迫罪とは、本人又は親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫する罪です(222条)...
財産犯(詐欺・横領・背任ほか)

処分行為と処分意思(無銭飲食・キセル乗車・三角詐欺)

処分行為とは、欺かれた者が錯誤に基づいて、財物の占有や財産上の利益を自分の意思で相手方に移す行為です。処分意思とは...
罪数・刑罰の適用

牽連犯とかすがい現象

牽連犯とは、犯罪の手段又は結果である行為が他の罪名に触れる場合です。数個の罪が成立しますが、その最も重い刑により処...
財産犯(窃盗・強盗)

親族相盗例

親族相盗例とは、配偶者、直系血族又は同居の親族との間で窃盗罪・不動産侵奪罪を犯した者の刑を免除し、その他の親族との...
財産犯(窃盗・強盗)

強盗罪の暴行・脅迫(反抗を抑圧するに足りる程度)

強盗罪の暴行・脅迫とは、財物を奪う手段として加えられる、相手方の反抗を抑圧するに足りる程度の暴行又は脅迫をいいます...
財産犯(詐欺・横領・背任ほか)

権利行使と恐喝

権利行使と恐喝とは、債権者が債務者を脅して弁済を受けた場合のように、正当な権利を持つ者が恐喝の手段を用いてその権利...