逮捕・監禁罪たいほかんきんざい
逮捕・監禁罪とは、不法に人を逮捕し、又は監禁する罪です(220条)。逮捕は人の身体を直接拘束すること、監禁は人を一定の区域場所から脱出できないようにすることで、どちらも身体活動の自由を奪う行為です。
人は、出ようと思えばいつでもその場所から出られるという自由を持っています。部屋に外から鍵を掛けて閉じ込めたり、走る車に乗せて降りられなくしたりすると、この自由が奪われます。本人が閉じ込められたことに気付いていなくても、出ようと思ったときに出られない状態に置かれたこと自体が害だと考えるので、刑法は逮捕と監禁を処罰しています。

監禁罪は、移動しようと思えば移動できる自由を守っています
逮捕・監禁罪の保護法益は身体活動の自由です。この自由の中身について、移動しようと思えば移動できる自由と捉える可能的自由説と、現実に移動しようと思ったときに移動できる自由と捉える現実的自由説が対立しています。可能的自由説からは、被害者が監禁に気付いていなくても、移動の可能性が奪われた以上は監禁罪が成立します。現実的自由説からは、被害者が現実に移動しようと思うことが必要なので、気付いていない間は成立しません。判例は、監禁の方法は「偽計によって被害者の錯誤を利用する場合をも含む」としており(最決昭和33年3月19日)、被害者の認識を要しない立場に立つと理解されています。倉庫の出入口扉に外側から鍵を掛けた場合、中で作業をしていた人がそのことに気付かず作業を続けていても、監禁罪は成立し得ます。客体について、「監禁されている時点で移動する一般的な能力がある者は,その時点で移動できなくても,監禁罪の客体となる」という見解からは、眠っていて施錠に気付かなかった者に対しても監禁罪が成立するという結論になります。これに対し、その時点で現実に移動できることまで求める見解からは、施錠の間ずっと眠っていた者には成立せず、移動する意思まで求める見解からは、目覚めていても施錠に気付かず外に出ようと思わなかった者には成立しないという結論になります。裁判例には、生後1年7か月の幼児について、自然的、事実的意味において任意に行動しうる者である以上は監禁罪の客体になるとしたものがあります(京都地判昭和45年10月12日)。
- 可能的自由説移動しようと思えば移動できる自由が保護法益です。被害者が監禁に気付いていなくても、眠っていても監禁罪が成立します
- 現実的自由説現実に移動しようと思ったときに移動できる自由が保護法益です。被害者が気付いて移動しようと思った時点から監禁罪が成立します
偽って車に乗せた場合は、乗せて走り出した時点から監禁罪が成立します
監禁の方法は、部屋に閉じ込めるような有形的な方法に限られません。判例は、監禁の方法は暴行又は脅迫による場合に限らず、偽計によって被害者の錯誤を利用する場合を含むとしています(最決昭和33年3月19日)。母親が病気で入院したと嘘を言い、これを信じた女性を自動車に乗車させて約12キロメートル走行した場合や、わいせつの目的を隠して家まで送ると偽って自動車に乗せた場合が、その例です。乗車への同意は錯誤に基づくもので、走行する車からは降りられないのですから、乗せて走り出した時点から監禁罪が成立します。また、監禁は脱出を不可能にする場合だけでなく、著しく困難にする場合を含みます。原動機付自転車の後部荷台に乗せた女性が「降ろして。」と叫んだのを無視して約1キロメートル疾走させた場合にも、監禁罪が成立します(最決昭和38年4月18日)。囲われた場所でなくても、疾走する車両から飛び降りることは著しく困難だからです。

逮捕に引き続いて監禁しても、220条の一罪が成立するだけです
逮捕と監禁は同じ220条に並べて規定され、どちらも身体活動の自由を奪う行為です。そのため、人を逮捕し、引き続いて監禁したときは、逮捕罪と監禁罪の二罪が成立するのではなく、包括して220条の一罪が成立します(最大判昭和28年6月17日)。また、監禁罪は、被害者の自由を奪っている間ずっと犯罪が続く継続犯です。監禁が続いている間は公訴時効が進行せず、途中から見張りに加わった者にも加わった後の監禁について共犯が成立します。監禁の手段として加えた暴行や脅迫は、監禁罪に吸収されて別に暴行罪や脅迫罪を成立させません。
恐喝や身の代金要求の手段として監禁しても、監禁罪とは併合罪になります
牽連犯になるのは、罪の性質上、一方が他方の手段又は結果となることが通常である場合に限られます。判例は、恐喝の手段として監禁が行われた場合であっても、両罪は犯罪の通常の形態として手段又は結果の関係にあるものとは認められないとして、牽連犯ではなく併合罪になるとしました(最判平成17年4月14日)。身の代金を得る目的で人を拐取した者が、被拐取者を監禁し、その間に身の代金を要求した場合も同じ考え方です。判例は、身の代金目的拐取罪と拐取者身の代金要求罪は牽連犯となり、これらの各罪と監禁罪は併合罪になるとしています(最決昭和58年9月27日)。7歳の子供を拐取して手足を縛り自室に閉じ込めた場合にも、監禁罪が成立します。拐取罪が成立しても、その後に閉じ込める行為は別に監禁罪を成立させます。

死傷の結果は、監禁そのものか監禁の手段から生じたときに監禁致死傷罪になります
逮捕等致死傷罪(221条)は、逮捕・監禁罪を犯し、よって人を死傷させた場合に成立する結果的加重犯です。まず、基本となる監禁罪が成立していることが前提になります。車に連れ込むために顔面を殴打して傷害を負わせたが、被害者が逃げたため車に乗せることができなかった場合には、監禁致傷罪は成立しません。次に、死傷の結果は、監禁の事実そのものか、監禁の手段とした行為から生じたことが必要です。組事務所に連行して監視している間に、指を詰めさせるために包丁で小指を切断した場合も、監禁致傷罪は成立しません。この傷害は監禁の手段から生じたものではなく、別の動機による行為から生じたものなので、監禁罪と傷害罪が成立して併合罪になります(最決昭和43年9月17日)。因果関係については、道路上で停車中の自動車のトランク内に被害者を監禁していたところ、後方から来た自動車が追突して被害者が死亡した事例で、判例は、死亡原因が直接的には追突事故を起こした第三者の甚だしい過失行為にあるとしても、監禁行為と死亡との間の因果関係を肯定できるとしました(最決平成18年3月27日)。この事案を用いた「Aは、深夜、普通乗用自動車(甲車)の後部トランクにBを閉じ込めて監禁し、その状態で市街地の片側 1 車線の道路上に甲車を停車させた。その数分後、普通貨物自動車(乙車)を運転してきたCが脇見運転をしたことにより甲車の存在に至近距離に至るまで気付かず、乙車を甲車の後部に追突させ、それにより、Bは、頸髄挫傷の傷害を負い、その傷害が原因で死亡した。Bの直接の死因は乙車による追突であり、Cの過失は甚だしいものと認められた。この場合、Aによる監禁行為とBの死亡との間には因果関係が認められる」という肢(R4 問24 オ)は正しいです。法定刑は傷害の罪と比較して重い刑によるので、致傷は3月以上15年以下の拘禁刑(拘禁刑は令和7年6月から。それ以前は懲役・禁錮)、致死は3年以上の有期拘禁刑になります。
刑法 第220条(逮捕及び監禁)
不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、三月以上七年以下の拘禁刑に処する。
刑法 第221条(逮捕等致死傷)
前条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
最決昭和33年3月19日刑法二二〇条一項にいう「監禁」とは、人を一定の区域場所から脱出できないようにしてその自由を拘束することをいい、その方法は、必ずしも所論のように暴行又は脅迫による場合のみに限らず、偽計によつて被害者の錯誤を利用する場合をも含むものと解する
試験ではこう問われる
- 保護法益は身体活動の自由で、被害者が監禁に気付いていなくても成立する
- 監禁の方法には偽計によって被害者の錯誤を利用する場合を含む(最決昭和33年3月19日)。偽って車に乗せた場合は乗せて走り出した時点から成立する
- 脱出を著しく困難にすれば監禁に当たる。原動機付自転車の荷台に乗せて疾走する行為も監禁になる(最決昭和38年4月18日)
- 逮捕に引き続く監禁は220条の一罪になる(最大判昭和28年6月17日)。監禁罪と恐喝罪は併合罪になる(最判平成17年4月14日)
- 監禁の手段の暴行・脅迫によって外傷後ストレス障害(PTSD)を負わせれば、監禁致傷罪が成立する(H30 問26 ウ ○・出題当時)
- 監禁中に別の動機で加えた傷害は、監禁致傷罪ではなく、監禁罪と傷害罪の併合罪になる(最決昭和43年9月17日)
- トランクに監禁中の被害者が追突で死亡した場合、第三者の甚だしい過失が介在しても、監禁行為と死亡との因果関係が認められる(最決平成18年3月27日。R4 問24 オ ○)

