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信用毀損罪しんようきそんざい

刑法 第11章 名誉・信用・業務に対する罪

信用毀損罪とは、虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損する罪です(233条前段)。信用とは、経済的な側面における人の社会的な評価をいいます。

「あの店はもうすぐ倒産する」「あの店の弁当で食中毒が出た」といううそが広まると、客も取引先も離れ、店は商売を続けられなくなります。刑法は、代金をきちんと支払えるか、売っている商品が確かなものかという経済面での評価を「信用」として守っています。名誉毀損罪と違い、うそを広めた場合と、人を欺くなどの手段を使った場合だけが処罰されます。

商店の前の場面。弁当屋の店先で、店主の男性(札「V」)が客のいない店内を見て困っている。通りの向こうで男性(札「甲」)が数人の通行人にビラを配っている。ビラには「あの店の弁当で食中毒が出た」と書かれている。先生が裁判官役(札「裁判所」)で手

信用は経済的な側面における人の社会的な評価で、販売される商品の品質に対する社会的な信頼も含まれます

かつて、信用は人の支払能力又は支払意思に対する社会的な信頼に限られると解されていました。判例は、コンビニエンスストアで買ったオレンジジュースに異物が混入していたという虚偽の風説を流布した事案で、信用毀損罪は経済的な側面における人の社会的な評価を保護するものであり、信用は支払能力又は支払意思に対する社会的な信頼に限定されるべきものではなく、販売される商品の品質に対する社会的な信頼も含むとしました(最判平成15年3月11日)。スーパーマーケットVに嫌がらせをする目的で、誰でも閲覧できるインターネット上の掲示板に「Vで買ったオレンジジュースに異物が混入していた。」旨のうその書き込みをした場合には、信用毀損罪が成立します。もっとも、保護されるのは経済的な側面における評価に限られます。経済的な側面と関係のない評価を害する行為は、名誉毀損罪や侮辱罪の問題になります。

教室の場面。先生が教師役(札「先生」)で黒板の前に立ち、板書を指している。黒板には大きな円が描かれ、円の上に「信用=経済的な側面における人の社会的な評価」と書かれている。円の中に二つの札「支払能力・支払意思に対する社会的な信頼」「販売される

手段は虚偽の風説の流布と偽計に限られ、真実の事実を広めても成立しません

虚偽の風説の流布とは、客観的な真実に反するうわさや情報を、不特定又は多数の人に伝播させることをいいます。判例は、直接には少数の者に伝えた場合でも、その者を介して多数の者に伝播するおそれがあれば流布に当たるとしています(大判昭和12年3月17日)。偽計とは、人を欺き、又は人の錯誤や不知を利用することをいいます。手段がこの二つに限られているので、真実の事実を広めても信用毀損罪は成立しません。かつて自分をいじめたVが破産したことを知り、「Vは破産者である。」と書かれたビラを多数人に配布しても、信用毀損罪は成立しません。Vが破産したことは真実で、虚偽の風説に当たらないからです。この事例では、公然と事実を摘示して人の社会的評価を害しているので、名誉毀損罪の成否が別に問題になります。

信用が現実に低下したことは要らず、親告罪でもありません

233条は信用を「毀損し」と定めていますが、信用を害するおそれのある状態を生じさせれば足り、信用が現実に低下したことは要らないと解されています。業務妨害罪についても、判例は、現に業務妨害の結果が発生したことを必要とせず、業務を妨害するに足りる行為があれば足りるとしています(最判昭和28年1月30日)。また、名誉毀損罪と侮辱罪は232条で親告罪とされていますが、信用毀損罪と業務妨害罪には、告訴がなければ公訴を提起することができないとする規定がありません。

名誉毀損罪とは、守られる評価の範囲と手段が違います

名誉毀損罪は人の社会的評価の全体を守り、信用毀損罪はそのうち経済的な側面における評価を守ります。名誉毀損罪は公然と事実を摘示すれば、その事実が真実でも成立しますが、信用毀損罪は虚偽の風説の流布か偽計によらなければ成立しません。「あの会社は倒産寸前だ」といううそは信用毀損罪の問題になり、「あの社長は愛人がいる」という話は名誉毀損罪の問題になります。法定刑は、どちらも3年以下の拘禁刑(拘禁刑は令和7年6月から。それ以前は懲役・禁錮)又は50万円以下の罰金です。

  • 守られる評価信用毀損罪は経済的な側面における人の社会的な評価です。名誉毀損罪は人の社会的評価の全体です
  • 手段信用毀損罪は虚偽の風説の流布又は偽計です。名誉毀損罪は公然と事実を摘示することです
  • 真実の事実を広めた場合信用毀損罪は成立しません。名誉毀損罪は成立し、230条の2の要件を満たせば罰せられません
  • 告訴信用毀損罪は親告罪ではありません。名誉毀損罪は親告罪です(232条1項)
警察署の受付の場面。カウンターの中に警察官の男性(札「警察官」)が座っている。カウンターの前に先生が教師役(札「先生」)で立ち、壁の掲示板を指している。掲示板は左右二つの欄に分かれ、左の欄に「名誉毀損罪・侮辱罪:告訴がなければ公訴を提起でき
刑法 第233条

(信用毀損及び業務妨害)
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。

試験ではこう問われる

  1. 信用は経済的な側面における人の社会的な評価をいい、支払能力・支払意思に限らず、販売される商品の品質に対する社会的な信頼も含む(最判平成15年3月11日)
  2. 経済的側面と関係のない社会的な信頼を害しても、信用毀損罪は成立しない
  3. 流布は、特定かつ少数の者を通じて順次不特定又は多数の人に伝播させる場合も含む(大判昭和12年3月17日)
  4. 真実の事実を広めても成立しない。破産した人について「破産者である」というビラを配っても信用毀損罪は成立しない
  5. 信用が現実に低下したことは要らない。業務妨害罪も、業務を妨害するに足りる行為があれば足りる
  6. 信用毀損罪は親告罪ではない

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