司法書士試験AIブートラボ 司法書士試験AIブートラボ

文書の意義(写し・コピー・偽造の程度と変造)ぶんしょのいぎ

刑法 第14章 公共の安全・信用に対する罪 過去問で9肢

文書とは、文字又はこれに代わる符号を用いて、ある程度持続する状態で物体の上に表示された、人の意思又は観念の表示であって、名義人を認識できるものをいいます。写真コピーも、原本と同様の社会的機能と信用性があれば文書に当たります。

就職や借入れの手続では、免許証や保険証そのものではなく、そのコピーを出すことがよくあります。受け取る側は、コピーを見て「原本にもこう書いてあるのだ」と信じます。氏名のところに別の紙を貼ってからコピーを取り、それを本物の写しとして出せば、受け取る側はだまされてしまいます。原本そっくりに見えるコピーは、原本と同じように人を信用させる力を持っています。そこで、どのようなものが偽造罪で守られる「文書」に当たるのかが問題になります。

窓口で係員役の先生が保険証のコピーを受け取り、原本と写しを並べて文書性を説明する
写真コピーも、原本と同様の社会的機能と信用性があれば、文書偽造の罪の文書に当たります
写真コピーも文書原本と同様の機能と信用性貼った跡はコピーで消える

文書とは、文字などの符号で物体の上に表示された、名義人のある意思又は観念の表示をいいます

文書偽造の罪にいう文書とは、文字又はこれに代わる符号を用いて、ある程度持続する状態で物体の上に表示された、人の意思又は観念の表示をいいます。令和7年の改正で、文書等として表示されて行使されることとなる電磁的記録(電磁的記録文書等)も、文書偽造の罪の客体に加わりました(155条1項2号、159条1項2号など)。口頭の発言や、砂の上に書いた文字は、持続性がないので文書ではありません。また、文書といえるには、その意思又は観念の主体である名義人が、文書そのものから認識できることが必要です。だれが作ったのか分からない書面は、信用の対象にならないからです。名義人は、文書に氏名が書かれている場合に限らず、文書の内容や形式、付属物から特定できれば足ります。偽造といえるには、作られたものが、一般人から見て真正に作成された文書であると誤認する程度の形式・外観を備えていることが必要です。一見して作り物と分かるものは、文書に対する公共の信用を害しないので、偽造には当たりません。この判断では、文書の客観的な形状だけでなく、文書の種類・性質や社会における機能、そこから想定される行使の形態も考慮されます。大阪地判平成8年7月8日は、自己の運転免許証の上に他人の運転免許証の写しから切り取った氏名等の記載部分を重ねてテープで固定した書面を、無人店舗の自動契約受付機のイメージスキャナーに読み取らせて係員に呈示した事案で、直接手に取れば改ざんが分かる物であっても、運転免許証はイメージスキャナーなどの電子機器を通じて間接的に呈示されることもあるとして、真正な文書と誤認させるに足りる程度に達していると認め、偽造の成立を認めました。

写真コピーも、原本と同様の社会的機能と信用性があれば文書に当たります

手書きの写しは、写した人の意思や観念が入り込むので、原本の名義人の文書とはいえません。これに対し、最判昭和51年4月30日は、機械的方法で原本を複写した写真コピーについて、原本と同一の意識内容を保有し、証明文書として原本と同様の社会的機能と信用性を有するものと認められる限り、文書に含まれるとしました。写真コピーは、原本がそのとおりの内容・形状で存在することを強く証明する力を持つからです。この場合の名義人は原本の名義人で、原本の印章や署名が写っていれば有印です。この考え方は公文書に限られず、私文書の写しも文書偽造罪の客体になり得ます。他人の国民健康保険被保険者証の氏名欄に自己の氏名を印刷した紙を貼り付けてコピーし、真正なコピーと誤信させる形式・外観を備えたものを作れば、有印公文書偽造罪が成立します。紙を貼り付けた原本そのものは一見して細工が分かるので偽造文書とはいえませんが、コピーにすれば細工の跡が消え、真正な原本の写しという外観になります。ファクシミリで送信した場合も同じで、裁判例は受信側で印字された書面の文書性を認めています。

法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で法壇に座る。弁護人席に男性(札「弁護人」)が立つ。壁の掲示に、コピー機から出てくる紙の絵と、紙に写った公印の絵。弁護人の吹き出し「コピーは写しにすぎず、文書ではありません」。先生の吹き出し「写真コ

名義人が実在しなくても、一般人が真正に作成された文書と誤信するものであれば偽造になります

文書偽造の罪が守っているのは文書に対する公共の信用ですから、名義人が実在するかどうかは決め手になりません。架空の人物の名義であっても、一般人がその名義人は実在し、その人が作成した文書だと誤信するおそれがあれば、偽造に当たります。すでに死亡した人の名義でも同じです。数日前に死亡した人の氏名を冒用して金銭消費貸借契約書の借受人欄に署名押印した場合も、有印私文書偽造罪が成立します。公文書についても、実在しない公務所の名義であっても、一般人が実在する公務所がその権限内で作成した公文書であると誤信するに足りる形式・外観があれば、公文書偽造罪が成立します。「Aは、実在しない公務所名義の文書を作成したが、その文書はその形式外観において、一般人をして、その公務所が実在し、その職務権限内において作成された公文書であると誤信させるに足りるものと認められるものであった。この場合、Aに公文書偽造罪が成立する」という肢(R8 問25 イ)は正しいです。

既存の文書の非本質的部分を改ざんすれば変造であり、本質的部分を改ざんすれば偽造です

変造とは、真正に成立した他人名義の文書の非本質的部分に、権限なく変更を加えることをいいます。本質的部分に変更を加えて、元の文書と同一性のない新たな文書を作り出した場合は、変造ではなく偽造です。どこが本質的部分かは、その文書が何を証明するためのものかで決まります。銀行預金通帳の預金受入年月日を改ざんする行為は、私文書の変造であって、偽造ではありません。預金通帳は預金者と銀行の取引を証明する文書で、受入年月日を変えても別の文書になるわけではないからです。これに対し、国民健康保険被保険者証の被保険者氏名欄を別人の氏名に書き換えた場合は、公文書変造罪ではなく公文書偽造罪になります。被保険者の氏名はだれについての証明かを決める部分ですから、これを変えれば別の文書を作ったことになり、公文書偽造罪が成立します。運転免許証の写真を自分の写真に変えれば、他の部分に変更を加えていなくても、有印公文書偽造罪が成立します。他人名義の真正な運転免許証の顔写真を貼り替え、氏名と住所を書き換えた事例でも、成立するのは有印公文書変造罪ではなく有印公文書偽造罪です。

  • 変造真正に成立した他人名義の文書の非本質的部分を改ざん。例:預金通帳の預金受入年月日
  • 偽造本質的部分を改ざんして新たな文書を作出。例:被保険者証の氏名欄、運転免許証の写真
教室の場面。先生が教師役で黒板の前に立つ。黒板の左に預金通帳の絵があり、日付の欄だけが丸で囲まれて札「預金受入年月日:非本質的部分 → 変造」。黒板の右に運転免許証の絵があり、顔写真の欄が丸で囲まれて札「写真・氏名:本質的部分 → 偽造」。
最判昭和51年4月30日(フォト・コピーの文書性)

たとえ原本の写であつても、原本と同一の意識内容を保有し、証明文書としてこれと同様の社会的機能と信用性を有するものと認められる限り、これに含まれる

試験ではこう問われる

  1. 写真コピーも、原本と同様の社会的機能と信用性があれば文書に当たる(最判昭和51年4月30日)
  2. 改ざんした原稿をファクシミリで送信した場合、受信側で印字された書面も文書偽造罪の客体になる
  3. 名義人が架空人でも死者でも、一般人が真正に作成された文書と誤信するおそれがあれば偽造になる
  4. 実在しない公務所の名義でも、実在する公務所が権限内で作成した公文書と誤信させる形式・外観があれば、公文書偽造罪が成立する(R8 問25 イ ○)
  5. 預金通帳の預金受入年月日の改ざんは、非本質的部分の変更なので変造になる
  6. 被保険者証の氏名欄の書換えや運転免許証の写真の貼替えは、本質的部分の変更なので偽造になる

司法書士試験AIブートラボ

司法書士試験の対策を、
スマホひとつで。

過去問の肢別演習、記述式と雛形ドリル、先例と条文、用語集。司法書士試験の勉強に使う教材をひとつのアプリにまとめました。

関連する用語

公共の安全・信用に対する罪

文書偽造の罪の体系(公文書と私文書・有印と無印・印章偽造)

文書偽造の罪とは、文書に対する公共の信用を保護するために、公文書・私文書の偽造、変造、虚偽作成、行使などを処罰する...
公共の安全・信用に対する罪

有形偽造と無形偽造(名義人と作成者)

有形偽造とは、作成権限のない者が他人の名義を冒用して文書を作成することをいい、判例は、文書の名義人と作成者との間の...
公共の安全・信用に対する罪

名義の冒用(通称・偽名・肩書・代理代表名義)

名義の冒用とは、作成権限がないのに他人の名義を用いて文書を作成することをいいます。通称・偽名、肩書・資格、代理・代...
公共の安全・信用に対する罪

公文書偽造と作成権限(補助公務員)

公文書偽造とは、作成権限がないのに、公務所又は公務員の名義で、公務所又は公務員の作成すべき文書を作ることをいいます...
公共の安全・信用に対する罪

行使の意義(偽造文書・有価証券)

行使とは、偽造文書・偽造有価証券を真正なものとして使用することをいい、偽造文書では、その内容を他人に認識させ、又は...