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防衛行為と第三者ぼうえいこういとだいさんしゃ

刑法 第4章 違法性阻却 過去問で14肢

防衛行為と第三者とは、急迫不正の侵害に対する防衛行為が、侵害者以外の第三者の法益に関わる場合の処理をいいます。侵害者が第三者の物を用いた場合、防衛する者が第三者の物を用いた場合、反撃の結果が第三者に生じた場合の三つがあります。

襲ってきた相手を押し返すのは正当防衛です。では、身を守るために、そばにあった他人の傘をつかんで振り回し、その傘を壊してしまったらどうでしょう。傘の持ち主は何も悪いことをしていません。悪くない人に対して「正当防衛だ」とは言えないので、別の理屈が必要になります。危険を避けるために他に方法がなく、やむを得なかったといえるなら、緊急避難として許されます。誰の利益を害したのかによって、使う制度が変わります。

商店街の路上の場面。先生が通行人役(札「防衛する者」)で、店先の傘立てから他人の傘を取って体の前に構えている。傘は途中で折れている。正面に男性(札「侵害者」)が拳を振り上げて迫っている。店先には傘の持ち主の男性(札「第三者:傘の持ち主」)が

第三者が関わる場面は、誰の物を誰が使ったか、結果が誰に生じたかで三つに分かれます

正当防衛は、不正の侵害をした者に対する反撃を正当化する制度であり、不正対正の関係を前提にしています。侵害と無関係の第三者は不正の侵害をしていませんから、第三者との関係は正対正であり、正当防衛の考え方をそのまま当てはめることができません。場面は三つに分けられます。第一は、侵害者が第三者の物を使って攻撃してきたので、その物を壊して身を守った場合です。第二は、防衛する者が第三者の物を使って反撃し、その物を壊した場合です。第三は、侵害者に向けた反撃が逸れるなどして、第三者に結果が生じた場合です。

  • 侵害者が第三者の物を用いた場合その物を壊す行為は、侵害に対する反撃として正当防衛になる
  • 防衛する者が第三者の物を用いた場合その物を壊した行為は、緊急避難の問題になる
  • 反撃の結果が第三者に生じた場合緊急避難とする見解、誤想防衛の一種とする見解などが対立する。最高裁判例は無い

侵害者が第三者の物を用いて攻撃してきた場合、その物を壊す行為は正当防衛になります

侵害者が他人の所有するバットを持って殴りかかってきたので、そのバットを叩き落として壊したという場合、バットは不正の侵害の一部になっています。バットを壊す行為は、侵害そのものに対する反撃ですから、器物損壊罪の構成要件に該当しても、正当防衛として違法性が阻却されると考えるのが一般的です。バットの所有者は不正の侵害をしていないことを重視して、所有者との関係では緊急避難になるとする見解もあります。もっとも、どちらの見解からも、要件を充たす限り処罰されないという結論は変わりません。

防衛する者が第三者の物を用いて反撃し、その物を壊した場合は、緊急避難の問題になります

襲われた者が、そばにあった第三者の物を使って反撃し、その物を壊した場合、相手方への反撃自体は正当防衛になり得ます。しかし、物の所有者である第三者は不正の侵害をしておらず、防衛する者と第三者は正対正の関係にあります。そこで、物を壊した行為については、現在の危難を避けるためにやむを得ずにした行為として、緊急避難の成否を検討します。第三者の所有物を用いて相手方に反撃し、その物を損壊した行為が器物損壊罪の構成要件に該当するときも、その行為に緊急避難が成立する余地はあります。他に方法がなく、生じた害が避けようとした害の程度を超えなければ、緊急避難が成立します。

侵害から逃げるために無関係の第三者を害した場合も、正当防衛ではなく緊急避難の問題です

侵害者に反撃するのではなく、侵害から逃れるために第三者を害した場合も、同じ考え方をとります。仲の悪い相手から大型犬をけしかけられ、逃げようとして偶然通り掛かった人を突き飛ばして傷害を負わせた場合、その人に対する行為に正当防衛は成立しません。突き飛ばされた人は不正の侵害をしておらず、その人に対する行為を正当防衛で正当化することはできません。この事例では、犬に襲われるという現在の危難を避けるための行為として、緊急避難の成否が問題になります。

反撃の結果が第三者に生じた場合は、緊急避難とする見解と誤想防衛の一種とする見解が対立します

拳銃で撃たれそうになったので防衛のために撃ち返したところ、弾丸が侵害者を貫通して、たまたま通り掛かった第三者にも当たったという事例を考えます。第一に、防衛行為として行われた以上、第三者に生じた結果も含めて正当防衛が成立するという見解があります。この見解に対しては、第三者との関係は正対不正の関係とはいえないという批判が向けられます。第二に、第三者との関係では緊急避難が成立するという見解があります。この見解に対しては、緊急避難が成立するには、第三者の法益を侵害したことによって初めて現在の危難を避けることができたという関係が必要であり、逸れた弾が当たっただけではこの関係がないという批判が向けられます。第三に、行為者は主観的には正当防衛と認識して行為しているので、誤想防衛であり、故意が阻却されるという見解があります。この点についての最高裁判例はありません。裁判例には、襲撃者に向けて車を急後退させたところ、助けようとした兄を轢いて死亡させた事案で、正当防衛にも緊急避難にも当たらないが、誤想防衛の一種として故意責任を肯定することはできないとしたものがあります(大阪高判平成14年9月4日)。

大学の教室の場面。先生が教師役(札「刑法総論」)で黒板の前に立つ。黒板に図解があり、左に「甲(防衛する者)」、中央に「乙(侵害者)」、右に「丙(通り掛かった第三者)」の三つの丸が横に並ぶ。甲から乙へ矢印「反撃:正当防衛」、その矢印が乙を越え
刑法 第37条第1項

自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。

試験ではこう問われる

  1. 侵害者が第三者の物を用いて攻撃してきた場合、その物を壊す行為は正当防衛になり得る
  2. 防衛する者が第三者の物を用いて反撃し、その物を壊した場合は、物を壊した行為について緊急避難の成否を検討する
  3. 侵害から逃げるために無関係の第三者を突き飛ばして傷害を負わせた場合、その第三者に対しては正当防衛ではなく緊急避難の問題になる
  4. 反撃の結果が第三者に生じた場合について、正当防衛説・緊急避難説・誤想防衛説が対立し、最高裁判例はない

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