包括遺贈と特定遺贈ほうかついぞうととくていいぞう
遺産の全部または割合を与える包括遺贈と、特定の財産を与える特定遺贈の区別です。農地法の許可の要否、保存登記の可否、遺産分割への参加で扱いが分かれる点が肢で突かれます。
包括遺贈は「遺産の3分の1をBに」のように遺産の全部または割合を与える遺贈で、特定遺贈は「甲土地をBに」のように特定の財産を与える遺贈です。包括受遺者は相続人と同一の権利義務を持つので、債務も承継し、遺産分割に参加し、放棄するには家庭裁判所への申述が要ります。特定受遺者はいつでも放棄できます。どちらも登記原因は「遺贈」で申請の形も同じですが、権利の承継の仕方が違うため、農地法の許可や保存登記の場面で結論が分かれます。
民法 第964条(包括遺贈及び特定遺贈)
遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。

農地の包括遺贈に農地法の許可は要りませんが、特定遺贈には要ります
包括遺贈は相続と同じ包括承継なので、農地を含んでいても農地法の許可は要りません。「Aの遺言に基づくBへの遺贈は包括遺贈に当たるため、農地法所定の許可は不要です」という肢は正しい肢です。特定遺贈は個別の財産の移転なので許可が要りますが、受遺者が相続人であれば不要と扱われています。相続人が農地の権利を取得する場面は相続と同じく許可の対象外だ、という整理です。「Aが、相続人であるBへ甲土地を特定遺贈する旨の遺言をして死亡し、Bがこの遺言書を提供して所有権の移転の登記を申請するときは、農地法所定の許可があったことを証する情報を提供することを要する」という肢は誤りです。
包括遺贈でも登記原因は「遺贈」であって「相続」ではありません
包括受遺者が相続人と同一の権利義務を持つといっても、権利の取得の原因は遺言者の遺贈です。「Eは、単独で相続を登記原因とする甲土地の所有権の移転の登記を申請することができる」という肢は、原因を相続としている点でも、相続人でない受遺者の単独申請を認めている点でも誤りです。相続人でない包括受遺者への登記は、受遺者と相続人全員(遺言執行者があれば執行者)の共同申請で、「BとCが共同して所有権の移転の登記の申請をすることはできない」という肢は誤りです。
包括受遺者は所有権保存登記を申請できません
所有権の登記のない不動産について保存登記を申請できるのは、表題部所有者やその相続人その他の一般承継人などに限られます。登記実務は、包括受遺者はここでいう相続人その他の一般承継人に当たらないと扱っており、遺産分割で取得しても保存登記はできません。「Cは、Cを所有権の登記名義人とする所有権の保存の登記を申請することはできない」という肢は正しい肢です。表題部所有者の相続人が保存登記(表題部所有者名義または相続人名義)をしてから、遺贈や遺産分割による移転登記をします。
包括受遺者は遺産分割に参加し、放棄には申述が要ります
割合的な包括遺贈を受けた人は、相続人と一緒に遺産分割協議の当事者になり、協議書に署名押印して印鑑証明書を添えます。包括遺贈を放棄するには、相続放棄と同じく自己のために遺贈があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません。特定遺贈の放棄は方式も熟慮期間もなく、相続人への意思表示で足りますが、相続人などから相当の期間を定めて催告され、期間内に答えなければ承認したものとみなされ、承認後は撤回できません。放棄された特定遺贈の目的物は、遺言に別段の定めがない限り相続人に帰属します。包括受遺者は相続人と同じ立場なので、遺言者の債務も割合に応じて承継し、限定承認もできます。
民法 第990条(包括受遺者の権利義務)
包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。
試験ではこう問われる
- 農地の包括遺贈の登記に農地法の許可が要るか(要らない)
- 相続人に対する農地の特定遺贈に許可が要るか(要らない)
- 包括遺贈の登記原因は相続か遺贈か(遺贈)
- 包括受遺者は所有権保存登記を申請できるか(できない)
- 包括遺贈の放棄はどうするか(3か月以内に家庭裁判所に申述)
この用語で問われた肢を、解説つきでそのまま解けます。無料プランは月100問まで。