合資会社ごうしがいしゃ
無限責任社員と有限責任社員の両方がいる持分会社です。有限責任社員の出資の価額と既に履行した価額が登記事項であること、責任の別を変える手続、社員の一方がいなくなったときの扱いが肢で突かれます。
合資会社は、社員の一部を無限責任社員とし、その他の社員を有限責任社員とする持分会社です。有限責任社員は出資の価額のうち未履行の部分を限度に会社債務を弁済する責任を負うので、出資の目的と価額、既に履行した出資の価額が登記事項になります。無限責任社員と有限責任社員の両方がいることが成り立ちの条件で、どちらかがいなくなると定款を変更したものとみなされて合名会社か合同会社になります。肢で突かれるのは、有限責任社員に固有の登記事項と添付書面、責任の別を変える定款変更の決め方、持分の譲渡の承諾の範囲です。
会社法 第576条(定款の記載又は記録事項)
持分会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
一 目的
二 商号
三 本店の所在地
四 社員の氏名又は名称及び住所
五 社員が無限責任社員又は有限責任社員のいずれであるかの別
六 社員の出資の目的(有限責任社員にあっては、金銭等に限る。)及びその価額又は評価の標準
設立しようとする持分会社が合名会社である場合には、前項第五号に掲げる事項として、その社員の全部を無限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければならない。
設立しようとする持分会社が合資会社である場合には、第一項第五号に掲げる事項として、その社員の一部を無限責任社員とし、その他の社員を有限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければならない。
設立しようとする持分会社が合同会社である場合には、第一項第五号に掲げる事項として、その社員の全部を有限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければならない。

有限責任社員の出資の目的・価額・既履行額が登記事項です
合資会社の登記事項には、社員が有限責任社員か無限責任社員かの別と、有限責任社員の出資の目的、その価額、既に履行した出資の価額が入ります。設立の登記の申請書には定款のほか、有限責任社員が既に履行した出資の価額を証する書面を添付します。有限責任社員が出資を履行して既履行額が変わったときは、履行があったことを証する書面を添付して変更の登記をします。株式会社から合資会社への組織変更でも同じで、「組織変更による設立の登記の申請書には、有限責任社員が既に履行した出資の価額を証する書面を添付しなければならない」という肢は正しい肢です。
責任の別を変える定款変更は総社員の同意です
無限責任社員を有限責任社員に変えること、またはその逆は、社員の責任の別という定款の記載事項の変更なので、定款に別段の定めがない限り総社員の同意が要ります。「合資会社の業務を執行しない無限責任社員Aの責任を有限責任に変更したことによる変更の登記は,定款に別段の定めがある場合を除き,業務を執行する社員の全員の同意があったことを証する書面を添付して申請することができる」という肢は誤りです。業務執行社員全員の同意で足りるのは、業務を執行しない有限責任社員の持分の譲渡に伴う定款変更だけです。無限責任社員の責任を軽くすることは債権者の引当てを減らすので、社員全員の判断に委ねられています。
業務を執行しない有限責任社員の持分譲渡は業務執行社員の承諾です
持分の譲渡は原則として他の社員全員の承諾が要りますが、業務を執行しない有限責任社員は業務執行社員全員の承諾で譲渡でき、それに伴う定款の変更も業務執行社員全員の同意でできます。「譲渡された持分が業務を執行しない有限責任社員に係るものであることを証する書面及び当該社員の加入につき総社員の同意があったことを証する書面を添付しなければならない」という肢は誤りで、総社員の同意は要りません。業務執行権のある有限責任社員を代表社員にすることもでき、「業務執行権を有する有限責任社員を代表社員に互選したことを証する書面を添付しても,代表社員の選任による変更の登記の申請をすることができない」という肢は誤りです。有限責任社員だから代表になれないという区別はありません。
社員の一方がいなくなると合名会社か合同会社とみなされます
有限責任社員が全員退社して無限責任社員だけになると合名会社となる定款の変更を、無限責任社員が全員退社して有限責任社員だけになると合同会社となる定款の変更をしたものとみなされます。登記は変更後の会社の設立の登記と合資会社の解散の登記で、「当該合資会社については解散の登記を,当該合資会社から種類を変更した合同会社については設立の登記を,それぞれ申請しなければならない」という肢は正しい肢です。退社と同時に同じ責任の社員が加入すれば種類は変わらず、退社と加入の変更の登記で済みます。社員の死亡で解散する定款の定めがある会社で社員が死亡したときも、死亡による退社の登記、解散の登記、清算人の登記を同時に申請する義務はありません。
株式会社への組織変更には計上証明書が要ります
合資会社が株式会社に組織変更するときは、組織変更後の株式会社の設立の登記の申請書に資本金の額の計上に関する証明書を添付します。合資会社の組織変更で計上証明書を添付する「必要はありません」とする回答は誤りです。合資会社にも会計上の資本金はありますが登記事項ではないので、株式会社になるときに組織変更後の資本金の額が規定に従って計上されたことを証明する形になります。相続人が持分を承継する旨の定款の定めがある会社で社員が死亡したときは、相続人全員が相続の時に社員になるので、遺産分割で一人が承継しても「Aのみの相続による加入を原因とする社員の変更の登記を申請することはできない」という肢は正しい肢です。
商業登記法 第110条(設立の登記)
設立の登記の申請書には、有限責任社員が既に履行した出資の価額を証する書面を添付しなければならない。
試験ではこう問われる
- 合資会社の登記事項に有限責任社員の既に履行した出資の価額は入るか(入る)
- 無限責任社員を有限責任社員に変える定款変更は誰の同意か(総社員の同意)
- 業務を執行しない有限責任社員の持分譲渡に総社員の同意は要るか(要らない。業務執行社員全員の承諾)
- 無限責任社員が全員退社したら合資会社はどうなるか(合同会社となる定款変更をしたものとみなされ、解散と設立の登記)
- 合資会社が株式会社に組織変更するとき計上証明書は要るか(要る)
この用語が問われた肢
株式会社が合資会社となる組織変更をした場合は、組織変更による設立の登記の申請書には、有限責任社員が既に履行した出資の価額を証する書面を添付しなければならない。
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