証明と疎明・証明度(高度の蓋然性)しょうめいとそめいしょうめいど
証明とは、事実の存否について裁判官が確信を得た状態、またはその状態に至らせるための当事者の立証活動をいい、疎明とは、証明の程度には至らないものの一応確からしいという心証で足りる状態をいいます。訴訟上の証明に求められる程度(証明度)は、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得る高度の蓋然性です。
お金を貸したと言っても、裁判官が本当だと確信しなければ、その事実は判決の基礎になりません。判決は権利の存否を最終的に決めるので、一応確からしいというだけでは足りないからです。他方で、手続の途中で生じる付随的な問題や、急いで仮の救済を与える場面まで確信を求めると、手続が進みません。そこで法律が明文で定めた場面に限って、一応確からしいという疎明で足りるとしています。

判決の基礎となる事実は証明するのが原則で、疎明で足りるのは法律が明文で定めた場面に限られます
証明とは、事実の存否について裁判官が確信を得た状態、またはその状態に至らせる当事者の立証活動をいいます。疎明とは、一応確からしいという程度の心証で足りる状態、またはその状態に至らせる立証活動をいいます。裁判の前提となる事実は証明によるのが原則で、疎明で足りるのは、手続上の派生的な事項や迅速な判断が求められる事項について、法律が「疎明しなければならない」と定めた場合に限られます。主要事実はもちろん、主要事実を推認させる間接事実も証明の対象であり、間接事実を疎明で足りるとする規定はありません。民事保全は本案判決を待てない場合の仮の救済なので、被保全権利と保全の必要性は疎明で足ります(民事保全法13条2項)。「保全命令の申立ては、保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性を証明して、これをしなければならない」という肢(R7 午後 問6 ア)は誤りです。疎明で足りるのはこの二つであり、「保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性のほか、管轄や当事者能力についても疎明することで足りる」という肢(R4 午後 問6 ア)も誤りです。仲裁合意があることは訴えを却下させる抗弁ですが、疎明で足りるとする規定がないので証明が必要です。
- 特別代理人の選任の申立て遅滞のため損害を受けるおそれがあることを疎明します(35条1項)
- 補助参加に異議が出たとき補助参加人は参加の理由を疎明します(44条1項)
- 訴訟記録の謄写の請求第三者は利害関係を疎明します(91条3項)
- 証言拒絶・宣誓拒絶拒絶の理由を疎明します(198条・201条5項)
- 保全命令の申立て保全すべき権利と保全の必要性を疎明します(民事保全法13条2項)
疎明は即時に取り調べることができる証拠によりますが、在廷している証人のような人証も使えます
疎明は、即時に取り調べることができる証拠によってしなければなりません(188条)。迅速な判断のために認められた制度なので、期日を改めて証人を呼び出すような証拠調べはできず、使えるのは法廷に連れてきた証人(在廷証人)や当事者が手元に持っている文書などに限られます。即時性が求められるだけで、証拠の種類は制限されていないので、人証も疎明に使えます。また、疎明も証拠調べであることに変わりはなく、在廷証人を調べるなら証人尋問の方式により、文書を調べるなら書証の方式によります。疎明では求められる心証の程度が低く、188条の即時性の制限が加わるだけで、証拠調べの手続を外れてよいわけではありません。
厳格な証明と自由な証明は手続による区別であり、どちらも証明なので求められる確信の程度は同じです
厳格な証明とは、180条以下の法定の証拠調べ手続による証明をいい、自由な証明とは、その手続によらない証明をいいます。訴訟要件や外国法、経験則については自由な証明で足りるとする考え方がありますが、自由な証明も証明であって疎明ではありません。二つの区別は、どの手続で心証を得るかの違いであり、どの程度の心証が要るかの違いではないので、自由な証明でも裁判官は確信に達していなければならず、厳格な証明より低い証明度で足りるわけではありません。
訴訟上の因果関係の証明は、自然科学的な証明ではなく、通常人が疑いを差し挟まない程度の高度の蓋然性の証明で足ります
最判昭和50年10月24日(ルンバール事件)は、化膿性髄膜炎で入院していた3歳の子が、腰椎穿刺による髄液採取と薬液注入(ルンバール)を受けた直後に発作を起こし、重い後遺症が残った事案で、発作がルンバールによるものかが争われたものです。最高裁は、訴訟上の因果関係の立証は一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りるとして、因果関係を否定した原判決を破棄しました。多数の原告が医薬品の被害を訴える事件でも、因果関係は原告ごとに立証し、その立証は高度の蓋然性の証明で足ります。なお、証明責任を負う側は裁判官の心証を確信まで引き上げなければなりませんが(本証)、相手方は確信に至るのを妨げれば足ります(反証)。どちらが証明責任を負うかは、証明責任の分配の語で扱います。

民事訴訟法 第188条(疎明)
疎明は、即時に取り調べることができる証拠によってしなければならない。
民事保全法13条2項保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性は、疎明しなければならない。
最判昭和50年10月24日(ルンバール事件)訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りる。
試験ではこう問われる
- 保全命令の申立てでは、被保全権利と保全の必要性は疎明で足り、証明は要らない(民事保全法13条2項。R7 午後 問6 ア ×)
- 疎明で足りるのは被保全権利と保全の必要性であり、管轄や当事者能力まで疎明で足りるわけではない(R4 午後 問6 ア ×)
- 公開を禁止した口頭弁論に係る訴訟記録の閲覧は、当事者と利害関係を疎明した第三者に限られる(R4 午後 問2 イ ○)
- 疎明は即時に取り調べることができる証拠によるが、在廷証人のような人証も使える(188条)
- 疎明で足りるのは明文がある場合に限られ、間接事実や仲裁合意の立証には証明が要る
- 厳格な証明と自由な証明は手続の違いで、自由な証明でも証明度は下がらない
- 訴訟上の因果関係の証明は高度の蓋然性の証明で足りる(最判昭和50年10月24日)

