住居・邸宅・建造物と囲繞地じゅうきょていたくけんぞうぶつといにょうち
囲繞地とは、建物に接してその周辺に存在し、管理者が外部との境界に門塀等の囲障を設置することにより、建物の附属地として建物利用のために供されるものであることが明示された土地です。130条の住居・邸宅・建造物には、建物だけでなくこの囲繞地が含まれます。
泥棒が塀を乗り越えて庭に入ってきたら、まだ家の中に入っていなくても、住んでいる人の領域は侵されています。塀や門で囲って「ここから先は入らないでください」と示した敷地は、建物と一体のものとして使われているからです。そこで、住居侵入等の罪では、建物そのものだけでなく、塀などで囲まれた敷地に入った時点で罪が成立します。

130条の客体は、人の住居と、人の看守する邸宅・建造物・艦船です
住居とは、人が起臥寝食に使用している場所をいいます。居住者が法律上正当な権限に基づいて住んでいることは必要ありません。家賃の滞納により賃貸借契約が解除された後も現に住んでいる居室は住居に当たり、のぞき目的で入れば住居侵入罪が成立します。邸宅とは、居住用の建物で住居以外のものをいい、空き家がその例です。扉や窓に施錠して管理していた空き家に窃盗の目的で立ち入れば、邸宅侵入罪が成立します。建造物とは、住居と邸宅以外の建物をいいます。土地に定着し、屋根があって、壁又は柱により支持され、その内部に人の出入りができる構造があれば、建造物に当たります。条文は「人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船」と定めているので、「人の看守する」は邸宅にもかかります。
- 住居人が起臥寝食に使用している場所です。法律上正当な権限に基づく居住であることは要りません
- 邸宅居住用の建物で住居以外のものです。空き家や、集合住宅の共用部分がこれに当たります。人の看守が必要です
- 建造物住居・邸宅以外の建物です。人の看守が必要です
- 看守人が事実上管理支配していることです。施錠して鍵を保管することでも足ります
「看守」は、人が事実上管理支配していれば足ります
「人の看守する」とは、人が事実上管理支配していることをいいます。管理人や監視人を置く方法に限られず、施錠して鍵を保管する方法でも足ります。反対に、施錠などの物的設備がなくても、人が事実上管理支配していれば看守に当たります。
囲繞地に立ち入れば、建物に入る前でも既遂になります
判例は、建造物には建物だけでなくその囲繞地が含まれるとしています(最大判昭和25年9月27日)。囲繞地といえるためには、その土地が建物に接してその周辺に存在し、かつ、管理者が外部との境界に門塀等の囲障を設置することにより、建物の附属地として、建物利用のために供されるものであることが明示されれば足ります(最判昭和51年3月4日)。したがって、囲繞地に立ち入った時点で建造物侵入罪は既遂になります。門塀が設けられ看守者が置かれた工場の敷地内に窃盗の目的で立ち入り、建物に入る前に逮捕された場合も、未遂ではなく建造物侵入罪の既遂が成立します。門扉と金網フェンスで囲まれたビルの敷地に立ち入り、ビルに立ち入る前に取り押さえられた事例でも、建造物侵入罪の既遂が成立します。

塀そのものも建造物の一部で、塀の上に登れば建造物侵入罪が成立します
判例は、警察署の庁舎建物とその敷地を他から明確に画し、外部からの干渉を排除する作用を果たしている塀について、庁舎建物の利用のために供されている工作物であり、建造物の一部を構成するものとして、建造物侵入罪の客体に当たるとしました(最決平成21年7月13日)。中庭に駐車された捜査車両を見るために、高さ約2.4メートルの塀の上部に上がった行為は、建造物侵入罪に当たります。この事案を用いた「Aは、警察署の庁舎建物と高さ約2.4mの塀により囲まれて、部外者の立入りが禁止され、塀の外側から内部をのぞき見ることができない構造となっている警察署の中庭に駐車中の捜査車両のナンバーなどを見るため、当該塀によじ上って塀の上に立った。この場合、Aに建造物侵入罪が成立する」という肢(R8 問24 エ)は正しいです。中庭に立ち入る意思がなくても結論は変わりません。塀が建造物の一部である以上、その上に上がった時点で建造物に侵入したことになります。

集合住宅の共用部分は、各居室と別に邸宅や住居の一部として客体になります
判例は、自衛隊の宿舎の各号棟の1階出入口から各室玄関前までの部分について、居住用の建物である宿舎の各号棟の建物の一部であり、宿舎管理者の管理に係るものであるから、「人の看守する邸宅」に当たるとし、その敷地は邸宅の囲繞地に当たるとしました(最判平成20年4月11日)。ビラを配布する目的であっても、管理権者の意思に反して立ち入れば侵入になります。分譲マンションの共用部分にビラを配布する目的で立ち入った事案でも、管理組合の意思に反する立入りとして住居侵入罪の成立が認められています(最判平成21年11月30日)。「そのようなビラの配布は表現の自由として憲法上保障されるものであるから、そのようにビラを配布するためにマンションに立ち入る行為がマンション管理組合の意思に反するものであり、Aもそれを認識していたとしても、Aに住居侵入罪は成立しない」という肢(R8 問24 ア)は誤りです。1棟の建物の低層階に商業施設、高層階に住居がある場合も、建物全体が住居に当たるわけではありません。それぞれの部分の性格に応じて、住居か建造物かを別々に判断します。
刑法 第130条(住居侵入等)
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金に処する。
刑法 第132条(未遂罪)
第百三十条の罪の未遂は、罰する。
試験ではこう問われる
- 客体は「人の住居」と「人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船」で、邸宅にも看守が必要である
- 住居は法律上正当な権限に基づく居住でなくてもよい。看守は施錠して鍵を保管することでも足りる
- 囲繞地は建造物に含まれ、囲障によって建物利用のために供されることが明示されていれば足りる(最判昭和51年3月4日)。囲繞地に立ち入れば既遂になる
- 研究所の敷地を囲む金網柵を引き倒して敷地内に立ち入れば、建物に入らなくても建造物侵入罪が成立する(H29 問24 オ ×・出題当時)
- 警察署の中庭を囲む高さ約2.4mの塀によじ上って塀の上に立てば、建造物侵入罪が成立する(最決平成21年7月13日。R8 問24 エ ○)
- 集合住宅の共用部分は「人の看守する邸宅」に当たる(最判平成20年4月11日)。ビラ配布のためでも、管理組合の意思に反してマンションの共用部分に立ち入れば住居侵入罪が成立する(最判平成21年11月30日。R8 問24 ア ×)

