根抵当権の全部譲渡・分割譲渡・一部譲渡ねていとうけんのぜんぶじょうと・ぶんかつじょうと・いちぶじょうと
元本の確定前に、根抵当権を債権から切り離してそのまま、二つに分けて、または共有する形で他人に譲り渡すことです。設定者の承諾が要る点、分割譲渡では転抵当権者の承諾と極度額の書き方、一部譲渡の登録免許税が肢の軸です。
根抵当権の譲渡は、元本の確定前に、根抵当権者が根抵当権を被担保債権と切り離して他人に譲り渡すことです。根抵当権全体をそのまま譲る全部譲渡、極度額を分けて二つの根抵当権にしその一方を譲る分割譲渡、根抵当権を分割せずに譲受人と共有する一部譲渡の三つがあります。確定前の根抵当権は債権に付き従わないので、譲渡すると譲受人の債権を担保する根抵当権に変わります。どれも設定者の承諾が効力要件で、確定後は譲渡ができず、債権譲渡に伴って根抵当権が移ります。肢では、承諾の要否、申請情報に書く極度額、登録免許税、共同根抵当での扱いが問われます。
民法 第398条の12(根抵当権の譲渡)
元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権設定者の承諾を得て、その根抵当権を譲り渡すことができる。
根抵当権者は、その根抵当権を二個の根抵当権に分割して、その一方を前項の規定により譲り渡すことができる。この場合において、その根抵当権を目的とする権利は、譲り渡した根抵当権について消滅する。
前項の規定による譲渡をするには、その根抵当権を目的とする権利を有する者の承諾を得なければならない。

三つとも確定前に限られ、設定者の承諾が効力要件です
全部譲渡、分割譲渡、一部譲渡はいずれも元本の確定前にしかできません。根抵当権設定者の承諾を得なければ効力を生じないので、承諾を証する情報は必ず提供します。承諾が譲渡契約の後にされたときは、承諾の日が登記原因の日付です。申請は譲受人を登記権利者、根抵当権者である譲渡人を登記義務者とする共同申請で、譲渡人は根抵当権の登記名義人になったときに通知された登記識別情報を提供します。確定の登記がされた後に、確定前の日付を登記原因の日付とする譲渡の登記を申請することはできません。
分割譲渡は転抵当権者の承諾も要り、極度額を二つに分けて書きます
分割譲渡では、根抵当権を極度額を分けた二つの根抵当権にし(同額でも構いません)、その一方を譲り渡します。譲り渡した根抵当権について転抵当などの権利は消滅するので、根抵当権を目的とする権利を持つ者の承諾も要ります。申請情報には、譲り渡す根抵当権の極度額だけでなく、分割後に譲渡人に残る根抵当権の極度額も書きます。「申請情報の内容として提供する極度額はBを根抵当権の登記名義人とする根抵当権の極度額で足りる」という肢は誤りです。登記は譲渡した根抵当権を原根抵当権と同順位の新しい根抵当権として記録し、原根抵当権の極度額の減額は登記官が職権で記録します。登録免許税は譲り渡した根抵当権の極度額の1000分の2です。
一部譲渡では共有になり、登録免許税は極度額を共有者数で割ります
一部譲渡は、根抵当権を分割せずに譲受人と共有する譲渡です。登記の目的は「根抵当権一部移転」で、譲渡後は譲渡人と譲受人がそれぞれの債権額の割合で弁済を受け、優先の定めをすればそれに従います。登録免許税の課税標準は、極度額を一部譲渡後の共有者の数で割った額です。「根抵当権者をA及びBとする極度額1500万円の元本の確定前の根抵当権について、A及びBが当該根抵当権をCに一部譲渡した場合の根抵当権の一部移転の登記の登録免許税の額は、1万円である」という肢は正しい肢です。一部譲渡では譲り渡した部分に転抵当が残るので、転抵当権者の承諾は要りません。
共同根抵当の譲渡は全部の不動産に登記して効力を生じます
共同根抵当の全部譲渡、分割譲渡、一部譲渡は、根抵当権が設定されているすべての不動産について登記をしなければ効力を生じません。各不動産についての登記は一の申請情報でまとめて申請でき、共同担保なので不動産ごとの登記原因の日付が違っていても構いません。「元本の確定前の根抵当権の一部譲渡を登記原因とする根抵当権の一部移転の登記は、各土地についての登記原因の日付が異なる場合であっても、一の申請情報によって申請することができる」という肢は正しい肢です。
民法 第398条の13(根抵当権の一部譲渡)
元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権設定者の承諾を得て、その根抵当権の一部譲渡(譲渡人が譲受人と根抵当権を共有するため、これを分割しないで譲り渡すことをいう。以下この節において同じ。)をすることができる。
試験ではこう問われる
- 根抵当権の全部譲渡・分割譲渡・一部譲渡はいつまでできるか(元本の確定前)
- 設定者の承諾は効力要件か(効力要件。承諾書が要り、承諾が後なら承諾日が原因日付)
- 分割譲渡の申請情報に書く極度額は譲渡分だけで足りるか(足りない。原根抵当権の変更後の極度額も書く)
- 一部譲渡の登録免許税の課税標準は何か(極度額を譲渡後の共有者数で割った額)
- 共同根抵当の一部譲渡で各不動産の原因日付が違うとき一の申請情報にできるか(できる)
この用語が問われた肢
根抵当権者をA及びBとする極度額 1500 万円の元本の確定前の根抵当権について、A及びBが当該根抵当権をCに一部譲渡した場合の根抵当権の一部移転の登記の登録免許税の額は、1 万円である。
同一の債権を担保するために複数の土地に設定された元本の確定前の根抵当権の一部譲渡を登記原因とする根抵当権の一部移転の登記は、各土地についての登記原因の日付が異なる場合であっても、一の申請情報によって申請することができる。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。
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