工場財団・工場抵当こうじょうざいだんこうじょうていとう
工場の土地や建物に設定した抵当権の効力を備え付けた機械器具にまで及ぼす工場抵当と、工場の土地・建物・機械などをまとめて一個の不動産とみなす工場財団の制度です。目録の記録の変更を誰がどんな添付情報で申請するか、財団にどんな登記ができるかが肢で突かれます。
工場抵当は、工場抵当法2条により、工場の所有者が工場に属する土地や建物に設定した抵当権の効力が、その土地や建物に備え付けた機械・器具その他の工場の用に供する物にも及ぶ制度です。効力の及ぶ機械器具は、同法3条の目録に記録して公示します。工場財団は、工場に属する土地・建物・機械器具・工業所有権などをまとめて一個の財団とし、同法14条により一個の不動産とみなして抵当権の目的にする制度です。財団は工場財団登記簿に所有権の保存の登記をすることで成立し、財団に属する物は工場財団目録に記録します。肢で突かれるのは、目録の記録の変更の申請人と添付情報、財団にできる登記とできない登記です。
民法 第370条(抵当権の効力の及ぶ範囲)
抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ。ただし、設定行為に別段の定めがある場合及び債務者の行為について第四百二十四条第三項に規定する詐害行為取消請求をすることができる場合は、この限りでない。

工場抵当の効力は目録の機械器具に及び、普通抵当から変更できます
工場の土地や建物に設定した抵当権は、工場抵当法2条により備え付けた機械器具に効力が及び、同法3条の目録に記録した物が公示の対象になります。工場に属しない土地に普通の抵当権の設定の登記がされた後、その土地が工場に属することになる場合があります。登記実務では、その抵当権を工場抵当法2条の抵当権に変える抵当権の変更の登記が認められています。「当該抵当権を工場抵当法第2条による抵当権に変更する旨の抵当権の変更の登記を申請することはできない」という肢は誤りです。目録は抵当権の登記の一部として扱われ、登記官が作成して保管するものです。
目録の変更は所有者が申請し、減少には抵当権者の同意が要ります
新たに機械を備え付けて工場抵当の効力が及んだときは、所有者が目録の記録の変更の登記を申請し、変更後の表示を目録に記録するための情報を提供します。「機械器具目録の記録の変更の登記を申請するときは,変更後の表示を機械器具目録に記録するための情報を提供しなければならない」という肢は正しい肢です。抵当権者と所有者の共同申請ではないため、「当該抵当権の登記名義人及び甲土地の所有権の登記名義人は,当該抵当権の変更の登記を共同して申請しなければならない」という肢は誤りとされます。機械の一部が滅失して目録から減らす場合には抵当権者に不利益が生じるため、「抵当権者の同意を証する情報又はこれに代わるべき裁判があったことを証する情報を提供しなければならない」という肢は正しい肢とされています。
機械器具を全部廃止しても目録の変更の登記は申請しません
目録に記録された機械器具をすべて廃止したときは、工場抵当法2条の抵当権としての実体が無くなるので、目録の記録の変更ではなく抵当権の変更の登記によって普通の抵当権に戻す扱いです。「機械器具目録に記録された機械,器具等を全て廃止したときは,機械器具目録の記録の変更の登記を申請しなければならない」という肢は誤りです。一部の滅失なら目録の変更、全部の廃止なら抵当権そのものの変更という線引きです。
工場財団は保存登記で成立し、六か月以内に抵当権の設定が要ります
工場財団は、工場財団登記簿に所有権の保存の登記をすることで設定され、保存の登記から六か月以内に抵当権の設定の登記をしないと効力を失います。財団について設定された抵当権の登記がすべて抹消された後も同じで、抹消の時から六か月以内に新たな抵当権の設定の登記を申請しなければなりません。「抵当権の設定の登記が全て抹消されたときから6か月以内に申請しなければならない」という肢は正しい肢です。財団目録の記録の変更の登記は所有者が申請し、所有権の登記名義人の登記識別情報は要りません。「当該工場財団の所有権の登記名義人に通知された登記済証又は登記識別情報を提供しなければならない」という肢は誤りで、分筆で土地の地番や形状が変わったときは「変更後の工場図面を提供しなければならない」という肢が正しい肢です。
財団に賃借権の登記はできず、属した土地は同意があればできます
工場財団は抵当権の目的とするための一個の不動産なので、所有権と抵当権以外の権利の目的にはできず、財団そのものに賃借権の設定の登記をすることはできません。「当該工場財団の抵当権者の同意があっても,当該工場財団について賃借権の設定の登記を申請することはできない」という肢は正しい肢です。財団に属した旨の登記がされている個々の土地は別で、工場抵当法13条2項により抵当権者の同意を得れば賃貸でき、賃借権の設定の登記も申請できます。「その工場財団の抵当権者の同意があっても,甲土地について賃借権の設定の登記を申請することはできない」という肢は誤りです。
不動産登記法 第88条第1項抵当権(根抵当権(民法第三百九十八条の二第一項の規定による抵当権をいう。以下同じ。)を除く。)の登記の登記事項は、第五十九条各号及び第八十三条第一項各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。
一 利息に関する定めがあるときは、その定め
二 民法第三百七十五条第二項に規定する損害の賠償額の定めがあるときは、その定め
三 債権に付した条件があるときは、その条件
四 民法第三百七十条ただし書の別段の定めがあるときは、その定め
五 抵当証券発行の定めがあるときは、その定め
六 前号の定めがある場合において元本又は利息の弁済期又は支払場所の定めがあるときは、その定め
試験ではこう問われる
- 普通の抵当権を工場抵当法2条の抵当権に変更する登記はできるか(できる)
- 機械の備付けや滅失による目録の記録の変更は誰が申請し、何を添えるか(所有者。備付けは変更後の表示の情報、滅失は抵当権者の同意情報)
- 機械器具を全部廃止したとき目録の変更の登記を申請するか(しない。抵当権の変更の登記)
- 工場財団の抵当権が全部抹消された後、新たな設定の登記はいつまでに要るか(六か月以内)
- 工場財団や財団に属した土地に賃借権の設定の登記ができるか(財団にはできない。属した土地は抵当権者の同意があればできる)
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